リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

2005年12月閣議決定の第2次男女共同参画基本計画は,1996年12月の男女共同参画2000年プランや2000年12月の男女共同参画基本計画から一転して「リプロダクティヴ・ライツ」および「リプロダクティヴ・ヘルス」を消極的に解釈している。

 2000年の第1次計画までは,「リプロダクティブ・ヘルス/ライツの中心課題には、いつ何人子どもを産むか産まないかを選ぶ自由」が含まれると,国連の定義を明記していたはず。(ただし,「リプロダクティヴ・ヘルス/ライツ」という表現は,前に書いたとおり日本語独自の表現だけど。)ところが第2次基本計画には,以下のとおり,上記定義を撤回するかのような表現が見られるのだ。

なお,妊娠中絶に関しては,「妊娠中絶に関わる施策の決定またはその変更は,国の法的手順に従い,国または地方レベルでのみ行うことができる」ことが明記されているところであり,わが国では,人工妊娠中絶については刑法及び母体保護法において規定されていることから,それらに反し中絶の自由を認めるものではない。

各国の法規しだいで異なるというこの一文は,イスラム圏やカトリック国など「女性の生殖の自由をほとんど認めていない国々」からの猛反発により,妥協案として入れられたものだったはずだ。

たぶん「法に反して(まで)自由を認めるものではない」というのは,法的解釈としては正しいのだろう。そうだとしても,「女性差別撤廃条約」を批准している日本が,この条約を批准していないであろう女性差別的な国々に追随するようなことを言っているのはおかしいんじゃないか。条約違反にはならないの?

さらに気になるのは,上記の記述は「法を厳密に運用しますよ」という前哨戦のようにも読めてしまうからだ。日本の母体保護法の規定を厳密に適用したら,今の日本で行われている中絶の9割以上は「刑法堕胎罪」に引っかかる。

そして,もっと気になるのは,昨年末にこの計画が発表されて以来,誰かがすっぱ抜いてくれないかなぁと思ってきたけど,今のところ,この「問題」を誰かが指摘しているところをわたしは見たことも聞いたこともないということだ。だから,きちんと裏を取ってから物言おうと思っていたのだけれど,博論で忙しくって,あと半年は何もできそうにないので,ここに書いておきます。

気になった人,ぜひ調べて教えてください!!

追記:昨日の日記http://d.hatena.ne.jp/okumi/20060425へのyamtomさんのコメントを見て,ちょっと当惑しています。条約批准の時に動いた日本の女性運動の動きって,恥ずかしながらわたしにはピンと来ないんです。どこが母体になっていたの? 何が決定的な要素として働いたの? 批准したのは確か1985年で,わたしがまだ女性学やフェミニズムを知らなかった時期ではあるけど,それにしたって……ええい,聞くは一時の恥! いいチャンスですし,わたしだけが知らないわけでもないでしょうから,批准の頃の女性運動の動きについてご存じの方(discourさん,yamtomさんはもちろん,他の方も),もう少し教えていただけたら嬉しいです。