リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

つい最近,アメリカでPlan-Bと呼ばれる緊急避妊薬(EC,通称「モーニング・アフター・ピル」)が解禁されたばかりだが,イギリスの医学雑誌で同薬の解禁後も中絶率が上がっていることを示すデータが発表され,話題を呼んでいる。

データの出典は次のとおり:
Emergency contraception
Anna Glasier
British Medical Journal 2006;333:560-561
http://bmj.bmjjournals.com/
アブストラクトは無料で読めます。)

関連記事は以下にあります:
Morning-after pill: no impact yet
Health 24--Last updated: Monday, September 18, 2006
http://www.health24.com/news/Pregnancy/1-940,37583.asp

ただし「解禁=普及」というわけではないので即断は禁物。イギリスの「性の低年齢化」は加速化しており,それが望まない妊娠率を引き上げる一因になっている。性教育の遅れも指摘されており,「12歳の子どもにコンドームを無料配布」することも提案されている。

Free condoms for 12-year-olds urged
By Sarah Womack, Social Affairs Correspondent
Telegraph.co.UK (Filed: 08/09/2006)
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2006/09/08/ncondom08.xml

なおECは認知度の割には使用されていないとの報告もある(Mathew S, Urquhart R., 2005) 。ECが店頭販売されるとunprotected sexが増えるなどとも言われてきたが,ティーンズの無防備さはそれどころではなさそうだ。せめて中絶を少しでも減らすために,ECをリプロダクティブ・チョイスの選択肢に加えて悪いわけはない。

蛇足だけど,日本の10代の妊娠減少の陰にはECがあるとも言われている。日本の中絶費用が他国に比べて割高であることが原因のひとつかもしれない。避妊や中絶のコストと出産抑制手法の選択に関する各国比較研究が望まれる。