リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

危険な中絶の予防と中絶後ケアアプローチ

JICAの報告書「リプロダクティブヘルス分野の効果的アプローチに関する調査研究(詳細分析)◆妊産婦ケア◆」のなかに、上記タイトルの章を紹介。

[報告書] リプロダクティブヘルス分野の効果的アプローチに関する調査研究(詳細分析)
◆妊産婦ケア◆

第8章 危険な中絶の予防と中絶後ケアアプローチ

発展途上国におけるケアアプローチの話ですが、日本の状況と対比してみると、果たして日本の状況に問題がないと言い切れるのかと疑問が湧いてくる。そもそも日本の妊産婦ケアには、中絶ケアがきちんと組み込まれていない。単一の手術としては最多の年間30万件以上もの中絶が行われているのに、専用の設備をもつところはほとんどなく、看護マニュアルもない。上記の報告書では、危険な妊娠中絶の防止策として、次の4点を上げている。

(1)家族計画や避妊サービスの強化
(2)中絶術に関する適切な技術の徹底や機材の整備
(3)中絶後の女性のケア
(4)政治家、宗教的指導者、医療関係者などに対する適正な中絶の容認を求めるアドボカシー

たしかに今の日本で中絶手術で死亡する女性はごく稀になっており、その点では他の発展途上国とは抱えている問題が異なるようにも見える。しかし、JICAのアプローチを日本に当てはめると、家族計画の不足という点では明らかに問題がある(日本の避妊率は世界平均よりも低い)。さらに、他の医療におけるケアの質と水準とのバランス等を考慮に入れるなら、医療における公正という観点から、(2)〜(4)についても大いに問題があるように思われる。