リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

中絶に至る手順も透明化すべき

3月1日付けの讀賣新聞に、次の記事が載っていたようです。

受精卵取り違え防止、担当医研修義務化へ…学会が対策発表

 香川県立中央病院(高松市)の体外受精卵取り違え問題で、日本産科婦人科学会は28日、再発防止策を発表した。

 学会が認定する体外受精の実施施設について、新規の認定や、5年ごとの認定更新の条件として、担当医らが安全管理研修に参加することを義務づけることが柱。厚生労働省と協力し、全国に600余りある認定施設で、安全管理マニュアルや事故報告制度の有無を調査することも決めた。取り違えをしたとされる川田清弥医師(61)は、再発防止に努めているとして、処分しないことにした。
(2009年3月1日 読売新聞)

日本産婦人科学会のサイトを検索したら、次の声明文が見つかりました。

声明文

このたび香川県立中央病院において、ある女性に対し体外受精胚移植を行った際に、他の夫婦に由来する受精卵を誤って移植した可能性があることから、妊娠中絶を行うに至った、という事案が発生しました。妊娠成立の喜びの中、妊娠中絶を受けることを余儀なくされたご夫婦、および使用された受精卵の本来の両親であるご夫婦には、その無念を察するに余りあり、日本産科婦人科学会(以下、本学会)としては遺憾の念を禁じ得ません。本件は、あってはならない事案であり、国民に対して安全で安心な産婦人科医療を提供する上で重要な責務を負っている本学会は、病院の所轄官庁である厚生労働省とも協力して早急に調査を行い、再発防止に努めたいと考えております。

また本学会は、全国の生殖補助医療実施施設を登録し各施設からの年次実施報告を受ける制度を布いております。この制度は、各施設より登録への申請を受け付け、施設の技術水準と施設基準、インフォームドコンセントやカウンセリングなどクライエントへの対応の整備を、厳正に審査した後に、当該施設を生殖補助医療実施施設として認定するものであります。この制度を通じて、国内における生殖補助医療の現況・成績を正確に把握することは、国内における生殖補助医療の健全な発展に欠くべからざるものといえます。

生殖補助医療は、体外における配偶子および受精卵・胚の操作をともなう先進的な医療技術であり、実施にあたっては、取り扱う対象が人格を有するヒトという個体を形成する基であることを常に認識することがきわめて重要であります。その観点から、受精卵・胚の取り違えは許されるものではありません。

本学会は、今後生殖補助医療の登録報告制度を一層厳格に運用するとともに、生殖補助医療実施の各施設に対し、実施にあたっての安全面に格別の注意を払うよう要請いたします。

平成21年2月28日

社団法人 日本産科婦人科学会
理事長  吉 村 泰 典

結局、今回の事件は「中絶処置の妥当性」については、今のところ、全く問われないままにあります。法的にも、インフォームド・コンセントの原則からしても、大いに問題が残ると思われますが、そのことは果たして今後、法廷で明らかにされていくのでしょうか……。