リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

「女の気持ち」コラム

11月11日付毎日新聞のサイトで、中絶体験者のメッセージとそれに対するコメントを読むことができます。「経験者として 名古屋市・匿名希望」というコラムです。

コメントを書きたかったけど、言葉を失ってしまいました。そんなに自分を責めないで!……と、肩を抱いてあげたい。

こういう研究をやってるためか、ブログやホームページのためか、時々、中絶の相談を受けることがあります。でもいつも、自分の無力さを感じさせられます。上記のコラムに書いている女性も、ちゃんとしたカウンセリングやインフォームド・コンセント、良質のケアを受けられれば、産めない現実を作っているのが自分ではないということに目が開かれれば、これほど苦しまずにすんだのかもしれません。

女が一人で責任と痛みと悲しみを抱えさせられる現実のほうがおかしいのです。彼女たちを罪悪視することで、罪悪感を内面化させ、沈黙させる世の中のほうが酷いのです。

二人が“失敗”して妊娠した時でさえ、「もう一つの命の責任」を女性が一人で背負わされる宿命だというのなら、女に生まれた人間は生まれつきリスクを抱えていることになります。万が一のとき、女は常に「もう一つの命」のために我が身と我が人生を犠牲にすべきだというのでは、女は生殖の奴隷になってしまいます。

それはおかしいということを、多くの女たちが直感してきたけれど、トラウマのために言葉に出せずにいる人が少なくありません。日本の中絶事情の問題を明るみに出すために、もっともっと言葉を尽くしていかなければ……としみじみ思います。