リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

子宮内膜搔爬術と子宮内容物除去術の違い

この正月、WHOの中絶ガイドライン"Safe Abortion"第2版の翻訳チェックをボランティアで手伝っている。日本の中絶情報を調べていくと、英語で得た情報と食い違うことがしばしばあるのだが、今回もひとつ行き当たった。

WHOの"Safe Abortion"には、"dilatation & curettage(D&C)"と"dilatation & evacuation(D&E)"が出てくる。ところが、方法的には非常に似ているこの2つについて、WHOは全く異なる扱いをしている。妊娠12週までの外科的中絶でD&Cを使うことは推奨されておらず、吸引か中絶薬に置き換えるべきだと明示している一方で、妊娠12週を超える外科的中絶ではD&Eが推奨されているのだ。私の理解では、この2つの主な違いは、妊娠週数と胎盤鉗子(forcep)を使うかどうか、そして吸引を併用するかどうか(D&Cは併用しない)だ。

一方、日本産婦人科学会は、子宮内容除去術の英訳にDilation and Curretage(ママ)を当てている。こちらを参照。

しかも、上記の産婦人科学会の説明では、胎盤鉗子(forcep)を使うことになっているので、D&CというよりD&Eに相当するようにも読める。(かといって、吸引法と併用するともどこにも書いていない。D&Eは鉗子を用い、吸引法と搔爬法を組み合わせたような方法だ・・・と、私は理解しているのだけれど。)そしてまた、dilatationがdilationに、curettageがcurretageにと、微妙に言葉が違っているのだ。なぜに?(ただし、英語でもdilationとすることはある。curretageのほうはおそらく単なる誤記なのだが、某事典にそう載っていて混乱させられた記憶がある。今度確かめておこう。)

もうひとつ。WHOガイドラインの訳者たちは、D&Cを「子宮内膜搔爬術」、D&Eを「子宮内容除去術」と訳しており、これはこれで妥当だろうと私は思う。だけど、上記の混乱(?)からして、もしかしたら日本のお医者さんのあいだでこの二つは明確に区別されてはいないのかな?(中期中絶の方法としてはD&Eを使うという説明を日本語で読んだ覚えはない。いつも陣痛を誘発する方法ばかりだ。)

しかし正月早々こういう仕事をしているとは、因果なものですね。

追記:「診療報酬点数」と、「健康保険がきくかどうか」を混同していた部分については削除しました。