リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

男女共同参画基本計画第1次~第5次における「中絶」「リプロ」言及の変遷

男女共同参画局のサイトより

第2次のみ「コピペ不可」のページになっているので、このブログで以前入力したものを使いました。(第2次)男女共同参画基本計画 「8.生涯を通じた女性の健康支援」 - リプロな日記


以下、まずは2000年の第一次男女共同参画基本計画の内容です。「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」に関する記述がとても充実していた。

2000年(第1次)

男女共同参画基本計画
第2部 施策の基本的方向と具体的施策
8 生涯を通じた女性の健康支援
施策の基本的方向
具体的施策
(1)リプロダクティブ・ヘルス/ライツに関する意識の浸透
 リプロダクティブ・ヘルス/ライツに関する意識を広く社会に浸透させ、女性の生涯を通じた健康を支援するための取組の重要性についての認識を高めるという観点から、これらの問題について男女が共に高い関心を持ち、正しい知識・情報を得、認識を深めるための施策を推進する。


女性の健康問題への取組についての気運の醸成
 女性は、妊娠や出産をする可能性があることもあり、ライフサイクルを通じて男性とは異なる健康上の問題に直面する。こうした問題の重要性について男性を含め、広く社会全体の認識が高まり、積極的な取組が行われるよう気運の醸成を図る。

 また、女性の生涯を通じた健康支援の総合的な推進を図る視点から、保健所、市町村保健センターにおいて母子保健医療に携わる医師、保健婦助産婦、看護婦等に対するリプロダクティブ・ヘルス/ライツに関する研修等の充実を図る。

 なお、飲酒、摂食障害及び薬物乱用などについては、リプロダクティブ・ヘルス/ライツの観点から、健康被害に関する国民への正確な情報提供に努める。喫煙については、健康被害についての十分な情報提供や、公共の場や職場での分煙の徹底及び効果の高い分煙についての知識の普及に努める。


学校における性教育の充実
 学校においては、児童生徒の発達段階に応じた性に関する科学的知識や、生命尊重・人間尊重・男女平等の精神に基づく異性観、自ら考え判断する意思決定の能力を身に付け、望ましい行動を取れるようにするため、学校教育活動全体を通じて性教育の充実に努める。また、そのため、教職員に対し研修会を実施するとともに、学校外の関係機関・地域社会や産婦人科医・助産婦・保健婦等との連携を図る。


性に関する学習機会の充実
 社会教育においては、親及び青年等を対象とした学習機会の充実を図る中で、リプロダクティブ・ヘルス/ライツなどの性に関する学習内容を取り上げるよう努める。

 また、青少年の性行動が低年齢化・活発化している状況や性情報が氾濫している状況を踏まえ、思春期の男女が性に関する正しい知識を容易に入手できるようにするための施策を推進する。
(担当府省 文部科学省厚生労働省

(2)生涯を通じた女性の健康の保持増進対策の推進
 リプロダクティブ・ヘルス/ライツの視点等を重視しつつ、女性がその健康状態に応じて的確に自己管理を行うことができるようにするための健康教育、相談体制を確立するとともに、思春期、妊娠・出産期、更年期、高齢期等各ステージに応じた課題に対応するための適切な体制を構築することにより、生涯を通じた女性の健康の保持増進を図る。

ア 生涯を通じた健康の管理・保持増進のための健康教育・相談支援等の充実
女性の健康保持のための事業等の充実
 避妊、妊娠、不妊性感染症、婦人科的疾患、更年期障害その他女性の健康をめぐる様々な問題について、心の悩みも含め気軽に相談できる体制を整備する等、思春期、妊娠・出産期、更年期、高齢期など女性の生涯を通じた健康保持に関する事業を推進する。

 女性に特有な健康状態あるいは女性に多く見られる疾病について、調査・研究を進める。

 さらに、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ等の視点から、各種施策の実施状況及び社会情勢の変化等に応じて施策の充実のための総合的な検討を行う。


健康教育の推進
 生涯を通じ、自己の健康を適切に管理・改善するための教育・学習を推進する。学校においては、児童生徒が健康の大切さを認識できるようにするとともに、自己の健康を管理する資質や能力の基礎を培い、実践力を育成するため、健康教育の推進を図る。

 地域においても、リプロダクティブ・ヘルス/ライツの視点に立った健康に関する情報提供を行う。

イ 妊娠・出産期における女性の健康支援
妊娠から出産までの一貫した母子保健サービスの提供
 日常生活圏において、妊娠から出産まで一貫して、健康診査、保健指導・相談、医療援護等の医療サービスの提供等が受けられるよう施策の一層の推進を図る。


不妊専門相談サービス等の充実
 子どもを持ちたいにもかかわらず不妊で悩む人々が、正しく適切な基礎情報をもとにその対応について自己決定ができるよう、不妊に関する多面的な相談・情報提供の充実を図る。また、不妊治療に関する調査研究を推進する。


周産期医療の充実
 母子の生命や身体への影響の大きい周産期において、妊娠・出産の安全性や快適さを確保するため、総合的な周産期医療サービスの充実、調査研究を推進する。


女性の主体的な避妊のための知識等の普及
 人工妊娠中絶が女性の心身に及ぼす影響や安全な避妊についての知識の普及を図る。また、女性が主体的に避妊を行うことができるようにするための避妊の知識の普及等の支援を行う。
(担当府省 文部科学省厚生労働省農林水産省

2005年

男女共同参画基本計画(第2次)
第2部 施策の基本的方向と具体的施策
8 生涯を通じた女性の健康支援
<目標>
 女性も男性も、各人が互いの身体的特性を十分に理解し合い、人権を尊重しつつ、相手に対するおもいやりをもって生きていくことは、男女共同参画社会の形成に当たっての前提と言える。そのためには、心身及びその健康について正確な知識・情報を入手し、主体的に行動し、健康を享受できるようにしていく必要がある。特に、女性は、妊娠や出産をする可能性もあり、ライフサイクルを通じて男性と異なる健康上の問題に直面することに男女とも留意する必要がある。
 平成6年(1994年)にカイロで開催された国際人口/開発会議においても、性と生殖の健康・権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)(*)に関し、すべての人々が身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを求められたところである。このことについては、1995年の第4回世界女性会議で我が国を含め採択した行動綱領においても、女性の人権として確認されたところである。
 国連特別総会「女性2000年会議」においては、「北京宣言及び行動綱領実施のための更なる行動とイニシアティブ」を我が国を含め採択し、その中で、男女の力関係が平等でないことや、女性の健康を守るニーズに関する男女間のコミュニケーションや理解が欠如していることが障害となって、女性の健康が脅かされていると指摘している。
 こうしたことに配慮しつつ、男女の、特に女性の生涯を通じた健康を支援するための総合的な対策の推進を図ることが必要である。

*性と生殖の健康・権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)
 性と生殖の健康(リプロダクティブ・ヘルス)とは、平成6年(1994年)の国際人口/開発会議の「行動計画」及び1995年の第4回世界女性会議の「北京宣言及び行動綱領」において、「人間の生殖システム、その機能と(活動)過程のすべての側面において、単に疾病、障害がないというばかりでなく、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態にあることを指す」とされている。
 性と生殖の権利(リプロダクティブ・ライツ)とは、「性と生殖の健康(リプロダクティブ・ヘルス)を得る権利」とされている。
 なお、妊娠中絶に関しては、「妊娠中絶に関わる施策の決定またはその変更は、国の法的手順に従い、国または地方レベルのみ行うことができる」ことが明記されているところであり、我が国では、人工妊娠中絶については刑法及び母体保護法において規定されていることから、それらに反し中絶の自由を認めるものではない。

2010年

第3次男女共同参画基本計画
第10分野 生涯を通じた女性の健康支援

カ 性に関する指導の実施と科学的な知識の普及
①学校における適切な性に関する指導の実施
・学習指導要領においては、学校における性に関する指導は、児童生徒が性に関して心身の発育・発達と健康、性感染症等の予防などに関する知識を確実に身に付け、生命の尊重や自己及び他者の個性を尊重し、相手を思いやり、望ましい人間関係を構築するなど、適切な行動を取れることを目的として実施されており、体育科、保健体育科、特別活動、道徳などを中心に学校教育活動全体を通じて指導することとしている。なお、指導に当たっては、児童生徒の発達の段階を踏まえること、学校全体で共通理解を図ること、保護者の理解を得ることなどに配慮すること、集団指導と個別指導の連携を密にして効果的に行うことなどに配慮することが大切である。(文部科学省
②保健所における健康相談等
・思春期の人工妊娠中絶やHIV感染症を含む性感染症問題に対応するため、保健所において健康相談、電話相談等を行うことにより、人間としてそれぞれの性を尊重すること等正しい理解の推進と性に関する科学的な知識の普及を図る。(厚生労働省

キ 人工妊娠中絶・生殖補助医療について
少子化の進展や科学技術の進歩等の中で、人工妊娠中絶・生殖補助医療に関する法制度等の在り方について、多様な国民の意見を踏まえ、検討が行われる必要があり、その議論に資するよう、必要に応じ実態の把握等を行う。 2 妊娠・出産等に関する健康支援具体的施策
イ 周産期医療や救急医療体制、小児医療体制の充実①妊娠から出産までの一貫した母子保健サービスの提供
・日常生活圏において、妊娠から出産まで一貫して、健康診査、保健指導・相談、医療援護等の医療サービスの提供等が受けられるよう施策の一層の推進を図る。
・妊娠・出産や人工妊娠中絶等の悩みを抱える者に対して、訪問指導等の母子保健事業を活用した相談支援のほか、「女性健康支援センター」等での相談援助体制の整備を図る。
ーー中略ーー
オ 人工妊娠中絶の心身への影響についての知識等の普及
・人工妊娠中絶が女性の心身に及ぼす影響や安全な避妊についての知識の普及を図る。
文部科学省厚生労働省

2010年

第3次男女共同参画基本計画
第10分野 生涯を通じた女性の健康支援
2 妊娠・出産等に関する健康支援
施策の基本的方向
 妊娠・出産期は、女性の健康支援にとっての大きな節目であり、地域において安心して安全に子どもを産み育てることができるよう支援体制を充実するとともに、仕事と生活の調和の確立など支援を受けやすい環境整備を進める。特に、周産期医療体制の確保、不妊に悩む男女への対策を推進する。また、性に関する商業的、不正確な情報が氾濫する中にあっては、望まない妊娠を防ぐという観点を含めて、性に関する健康問題について、正しく理解し適切に行動を取れることが必要である。このため、家庭・地域と連携し、学校において、発達段階に応じた適切な性教育を実施する。さらに、性と生殖に関して健康であることの重要性について、国民への正確な情報提供等に努める。
ア 妊娠・出産期における女性の健康管理の充実と経済的負担の軽減
・市町村による妊婦等に対する早期の妊娠届出の勧奨などにより、妊娠・出産期の健康管理の充実を図るとともに、妊婦健診の公費負担や出産育児一時金などにより、経済的負担の軽減を図る。

イ 周産期医療や救急医療体制、小児医療体制の充実
①妊娠から出産までの一貫した母子保健サービスの提供
・日常生活圏において、妊娠から出産まで一貫して、健康診査、保健指導・相談、医療援護等の医療サービスの提供等が受けられるよう施策の一層の推進を図る。
・妊娠・出産や人工妊娠中絶等の悩みを抱える者に対して、訪問指導等の母子保健事業を活用した相談支援のほか、「女性健康支援センター」等での相談援助体制の整備を図る。 (厚生労働省

2015年

第4次男女共同参画基本計画
Ⅱ 安全・安心な暮らしの実現
第6分野 生涯を通じた女性の健康支援
イ ライフステージ別の取組の推進
(ア) 幼少期・思春期
② 10 歳代の女性の性感染症罹患率、人工妊娠中絶の実施率等の動向を踏まえつつ、性感染症の予防方法や避妊方法等を含めた性に関する正しい知識に基づいた教育を推進する。
 望まない妊娠や性感染症に関する適切な予防行動については、現状を踏まえた具体的かつ実践的な啓発を行うとともに、避妊や性感染症予防について的確な判断ができるよう、相談指導の充実を図る。

2020年

第5次男女共同参画基本計画
II 安全・安心な暮らしの実現
第7分野 生涯を通じた健康支援

ウ 年代ごとにおける取組の推進
(ア)学童・思春期
② 10代の性感染症罹患率、人工妊娠中絶の実施率及び出産数等の動向を踏まえつつ、性感染症の予防方法や避妊方法等を含めた性に関する教育を推進する。
 また、予期せぬ妊娠や性感染症の予防や必要な保健・医療サービスが適切に受けられるよう、養護教諭と学校医との連携を図る等、相談指導の充実を図る。【文部科学省厚生労働省