リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

子どもは3人以上産み育て〜びっくり仰天! 健康手帳の「実行目標」

2013年9月25日発行の「ふぇみん」に鈴木京子さんが「びっくり仰天!」と書いている記事に,私もびっくり。

市町村が交付する「健康手帳」を知っていますか? そこに「子どもは3人以上産み育て」「家族は3世代4世代同居」して「80歳以上すこやかに生きよう」…,そんな「実行目標」が掲げられていたら? 山形県遊佐町からの報告。

この記事によれば,「「健康手帳」とは、2002年に成立した「健康増進法」に基づき、40歳以上に市町村が交付しているもの」であり,「内容は、健康診断やがん検診などの結果を書き込む欄や、生活習慣病に関する知識の読み物など」で,法で定められているため,「どこの自治でも大差はない」のが通常らしい。ところが,その健康手帳に遊佐町が刷り込んでしまった上記の「実行目標」は,「なんと35年も前に立てられたものだった」という。

 記事では「現在はあくまで個人の覚え書きとして健康情報を書き込むための健康手帳だが、将来、国などにデータベース管理される懸念も残る。なぜなら、健康増進法はがんや生活習慣病の発生状況を国や自治体が把握することを求め、生活習慣との相関関係を調べるとしているから」だという。筆者は「「わたしのからだ」への介入の足音、みなさんのまわりでは聞こえてきませんか?」と投げかけて,二人の識者の談話を載せている。

●首都圏のある女性市議の話
「産むか産まないか、また産むなら、いつ、何人産むかは、女性自身が自由に決める権利を持つと、国連の国際人口開発会議(カイロ会議)で採択されたのは1994年。それなのに、まだ、こんなことがまかり通るとは…。≪中略≫少子化問題が大きく取り上げられる中で『産めよ、増やせよ』的発想が女性の人権を危うくすることに注意が必要」

●『現代思想』9月号で結婚と少子化について執筆している大橋由香子さんの話
「『子どもは3人以上』『3世代4世代同居』の項目は、たちが悪い。今年5月に女性手帳の配布を発表して強い反発を受けた少子化危機突破タスクフォースでさえ、『当然ながら結婚や出産は個人の決定に基づくものであり、国が介入するようなことがあってはならない』(6月7日発表の緊急対策)と言っています。≪中略≫こういう啓発は"介入"になりかねないという認識をなぜ持てないのか悲しい」

35年前の実行目標だとしても,1978年のことだから……少なくとも1975年の世界婦人年は経ているし,メキシコの世界行動計画も発表された後の話。いくら田舎だからといって,「子ども3人産み育て」よと謳っていたことの差別性に,誰も今まで気づかなかったとは情けない……。

この記事,当の町役場には送られたのでしょうか? 今後の改善を期待します。