リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

世界で子宮ゾンデの代わりに使われているもの

WHOの"Clinical practice handbook for Safe abortion"(2014)によれば,子宮底までの距離や子宮の位置を確認するためにはbiomanual examination(指による内診)を行うことになっています。

Pamela Charney,MDによる‘The Gynecologic Examination’には,さらに細かくbiomanual examinationの説明があります。(“Practical Gynecology: A Guide for the Primary Care Physician, 2nd" 所収。American College of Physicians, 2009)これによっても,やはり指による内診を指していることが確認できました。

さらにWHO(2014)の文書には,頸管拡張を始める際に,最小サイズの拡張器(またはa plastic os finder)を用いるとあったので,なんだろうと思って"plastic os finder"を探してみたら,MedGyn Product社の製品が出てきました。そこには"Ideal for cervical dilation, uterine sounding or other intrauterine procedures.(頸管拡張,子宮測深[=サウンディング]などの子宮内処置に最適)"と説明されており,さらに追加情報として"Made of malleable plastic and packaged individually sterile.(可鍛性のあるプラスチック製で,個別滅菌包装)"とありました。

つまり,手技による内診もしくはプラスチック製のos finder(子宮口を探す道具といった意味)が用いられているようです。

ただしMedGyn Product社のカタログには,金属製の子宮ゾンデも載っています。説明には"MedGyn carries a complete line of high quality Uterine Sounds: reusable, graduated metal sounds made of highly malleable metal.(MedGyn社では,高品質の子宮ゾンデを各種取り揃えております:再使用可能,メモリ付きで,高い可鍛性を備えた金属製ゾンデです。)"との説明があります。好みで使い分けられているのでしょうか?

ちなみに,子宮内膜吸引は中絶だけでなく検査のために生体組織を採取するためにも行われます。これについては,金属製とプラスチック製の検体採取器具の違いを説明しているIntegra社の文章が見つかりました。

Historically, endometrial biopsy and sampling was commonly performed using stainless steel instrumentation such as the Novak or Randall endometrial suction biopsy curettes. However, researchers have found that the use of softer and more flexible plastic sampling devices minimizes cramping and pain to the patient and yield equivalently sufficient tissue samples for histology.

かつてはNovak型やRandall型などステンレススチール製のキュレットで子宮内膜生検が行われていたが,より柔らかく柔軟性の高いプラスチックの生検器具の方が腹部の痙攣や痛みが少ないことが判明したというのです。

これについては,PubMedでいくつもの論文が出てきました。一例をあげると,1991年のSilver, Miles and Rosaの論文では,金属製のNovak型とプラスチック製のPipelle型の子宮内膜検体採取器具を比べて,プラスチック製でも十分な検体を採取できるし,プラスチック製の方が「はるかに痛みが少ない」と結論しています。