リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

中期中絶にはミフェプリストンとミソプロストール(サイトテック)を使うべき

日本で使われているプレグランディンの価格は代替薬の65倍!

11月22日のブログの後日談です。中期中絶薬も日本は超高額! - リプロな日記で取り上げた2種類の中絶薬の日本での価格が分かりました。

「今日の臨床レポート」というサイトの情報によれば、小野薬品の一般名ゲメプロスト(商品名プレグランディン)1mgは1個:4047円。ファイザーの一般名ミソプロストール(商品名サイトテック)は200μg1錠が31.2円、100μg1錠が18円です。

1回の中絶でゲメプロストもミソプロストールも複数回投与することが多いのですが、とりあえず中期中絶の1回分の投与でいくらかかるかを比較すると、ゲメプロスト1mgで4047円、ミソプロストールは400μg必要なので62.4円となり、前者が後者の約65倍でした。ちなみに、どちらの薬も効果をみながら3時間おきに投与をくり返すことになっています。

WHOの『安全な中絶第2版』(2012, 44)では、ミソプロストールとゲメプロストは効能にはあまり差はないが、前者は後者より「はるかに安く、(ゲメプロストと違って)冷蔵を必要としない」ため、「こちらを選ぶべき」だとしています。

サイトテック(ミソプロストール)はすでに日本で潰瘍治療薬として承認されている薬であり、人体への安全性は確認済みです。しかもミソプロストールは、WHOの「必須医薬品リスト」に潰瘍治療薬のみならず不全流産の治療のための陣痛誘発・促進剤としても掲載されている薬です。

ミソプロストールは、ミフェプリストンと組み合わせるとさらに効果は高まる(妊娠9週目までなら98%の成功率)とされているものの、ミフェプリストンが承認されていない国ではミソプロストールを中絶に単独使用することは次善の策(単独使用で75-95%の成功率)として推奨されているのです。しかも妊娠初期の中絶だけではなく、中期中絶にも使えます。

コストや管理の手間も考えれば「より優れた」薬がすでに国内にあるのに、なぜそちらに移行していかないのでしょう? 理解できません。

もしかしたら、ミソプロストール単独使用で中絶に失敗した後のD&Eを行える医師が日本では少ないためなのかもしれませんが………。(2020/12/12更新)