リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

国連人権規約(自由権規約)抜き書き

忘備録

自由権規約
6条 生命権、7条 拷問禁止、9条 身体の自由・安全、17条 私生活に干渉・名誉依存されない自由、18条 思想・宗教の自由、19条 表現の自由、26条 法の前の平等

自由権規約本文 
第6条
 1 すべての人間は、生命に対する固有の権利を有する。この権利は、法律によって保護される。何人も、恣意的にその生命を奪われない。

2 死刑を廃止していない国においては、死刑は、犯罪が行われた時に効力を有しており、かつ、この規約の規定及び集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する条約の規定に抵触しない法律により、最も重大な犯罪についてのみ科することができる。この刑罰は、権限のある裁判所が言い渡した確定判決によってのみ執行することができる。

3 生命の剥奪が集団殺害犯罪を構成する場合には、この条のいかなる想定も、この規約の締約国が集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する条約の規定に基づいて負う義務を方法のいかんを問わず免れることを許すものではないと了解する。

4 死刑を言い渡されたいかなる者も、特赦又は減刑を求める権利を有する。死刑に対する大赦、特赦又は減刑はすべての場合に与えることができる。

5 死刑は、十八歳未満の者が行った犯罪について科してはならず、また、妊娠中の女子に対して執行してはならない。

6 この条のいかなる規定も、この規約の締約国により死刑の廃止を遅らせ又は妨げるために援用されてはならない。

第7条
 何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。特に、何人も、その自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けない。

第9条
1 すべての者は、身体の自由及び安全についての権利を有する。何人も、恣意的に逮捕され又は抑留されない。何人も、法律で定める理由及び手続によらない限り、その自由を奪われない。

2 逮捕される者は、逮捕の時にその理由を告げられるものとし、自己に対する被疑事実を速やかに告げられる。

3  刑事上の罪に問われて逮捕され又は抑留された者は、裁判官又は司法権を行使することが法律によって認められている他の官憲の面前に速やかに連れて行かれるものとし、妥当な期間内に裁判を受ける権利又は釈放される権利を有する。裁判に付される者を抑留することが原則であってはならず、釈放に当たっては、裁判その他の司法上の手続のすべての段階における出頭及び必要な場合における判決の執行のための出頭が保証されることを条件とすることができる。

4 逮捕又は抑留によって自由を奪われた者は、裁判所がその抑留が合法的であるかどうかを遅滞なく決定すること及びその抑留が合法的でない場合にはその釈放を命ずることができるように、裁判所において手続をとる権利を有する。

5 違法に逮捕され又は抑留された者は、賠償を受ける権利を有する。

第17条
1 何人も、その私生活、家族、住居若しくは通信に対して恣意的に若しくは不法に干渉され又は名誉及び信用を不法に攻撃されない。

2 すべての者は、1の干渉又は攻撃に対する法律の保護を受ける権利を有する。

第18条
1 すべての者は、思想、良心及び宗教の自由についての権利を有する。この権利には、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由並びに、単独で又は他の者と共同して及び公に又は私的に、礼拝、儀式、行事及び教導によってその宗教又は信念を表明する自由を含む。

2 何人も、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由を侵害するおそれのある強制を受けない。

3 宗教又は信念を表明する自由については、法律で定める制限であって公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要なもののみを課することができる。

4 この規約の締約国は父母及び場合により法定保護者が、自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する。

第19条
1 すべての者は、干渉されることなく意見を持つ権利を有する。

2 すべての者は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。

3 2の権利の行使には、特別の義務及び責任を伴う。したがって、この権利の行使については、一定の制限を課すことができる。ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のために必要とされるものに限る。

(a) 他の者の権利又は信用の尊重
(b) 国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護

第26条
すべての者は、法律の前に平等であり、いかなる差別もなしに法律による平等の保護を受ける権利を有する。このため、法律は、あらゆる差別を禁止し及び人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位等のいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護をすべての者に保障する。

以下は自由権に関する一般勧告(一般的意見)

一般的意見36
第6条: 生命に対する権利
Ⅰ.総論
1. 本一般的意見は,第16会期(1982年)に採択された一般的意見6号(第16会期)及び第23会期(1984年)に採択された一般的意見14号(第23会期)に置換されるものである。

2. 自由権規約第6条は,全ての人間の生命に対する権利を認め,保障する。生命に対する権利は,武力紛争やその他の国民の生存を脅かす公の緊急事態においてでさえも,効力停止(derogation)することは認められない不可侵の権利である。[注1]生命に対する権利は,各個人及び社会全体双方にとって極めて重要である。生命に対する権利は,それ自体あらゆる人間に備わっている権利として最も重要であり,基本的権利(fundamental right)[注2]の一つに該当し,その効果的保護が他の全ての人権を享受するための前提条件となっており,さらに,その他の人権によりその内容がもたらされうるものである。

3. 生命に対する権利は狭義に解釈されるべきではない。生命に対する権利は,尊厳のある生を享受することに加え,個人の自然に反した死又は早すぎる死をもたらすことを意図した又は予期されるべき作為及び不作為から免れる権利に関わる。第6条は,最も重大な犯罪に対する被疑者及び同犯罪に対する有罪判決を受けた者も含め,いかなる差別もなしに,全ての人間にこの権利を保障している。

4. 第6条1項は,何人も恣意的にその生命を奪われず,この権利は法律によって保護されることと規定している。これは,生命に対する権利を尊重し,確保する締約国の義務,立法及び他の手段を通じて生命に対する権利の保障を実施する締約国の義務,並びに生命に対する権利を侵害された全ての被害者に対して効果的な救済及び補償を提供する締約国の義務を基礎とするものである。

5. 第6条2,4,5,6項は,死刑をいまだ廃止していない諸国において,死刑が最も重大な犯罪に対し,最も例外的な事件において,厳しい制約(下記の第Ⅳ部参照)の下でのみ適用されることを確保するための具体的な安全確保装置(セーフガード)を定めている。第6条1項に含まれる恣意的な生命はく奪の禁止は,締約国が死刑を適用する権限をさらに制限している。第6条3項の規定は,第6条と「集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約(ジェノサイド禁止条約)」(the Convention on the Prevention and Punishment of the Crime of Genocide: the Genocide Convention)との関連を具体的に規定している。

6. 生命のはく奪は,作為又は無作為の結果生ずる,意図的な[注3]又は他の予見できる,そして回避可能な危害あるいは傷害による生命停止を含む。それは,身体的又は精神的完全性(integrity)に対する傷害さらには脅威以上のものである[注4]。

7. 締約国は,生命に対する権利を尊重し,生命の恣意的はく奪に結びつく行為に関与することを回避する義務を負う。また締約国は,生命に対する権利を保障し,その行為が締約国に起因しない人物あるいは団体による(生命の)はく奪に対して,個人の生命を保護するためのデュー・ディリジェンスを実施しなければならない[注5]。締約国の,生命に対する権利を尊重し確保する義務は,生命の損失をもたらし得る合理的に予見可能な脅威及び生命を脅かす状況に対して及ぶものである。締約国は,たとえそのような脅威及び状況が実際には生命の喪失をもたらさない場合でも,第6条に違反する可能性がある[注6]。

8. 締約国は,自主的な妊娠中絶を規制するための措置を採用することは可能であるが,そのような措置は,妊娠中の女性又は少女の生命に対する権利,若しくは自由権規約の下において保障されているその他の諸権利を侵害する結果となってはならない。したがって,妊娠中絶を求める女性又は少女の能力に対する制限は,とりわけ,彼女たちの生命を危険にさらし,あるいは彼女たちに第7条*1に違反する肉体的又は精神的な苦痛や苦しみを与え,彼女達を差別し,彼女らのプライバシーに対する恣意的な干渉となるようなものであってはならない。

締約国は,妊娠中の女性又は少女の生命及び健康が危険に曝される状況,又は妊娠を予定日まで継続することが妊娠中の女性又は少女に相当の苦痛や苦しみを引き起こすような状況,なかでも妊娠がレイプや近親姦*2の結果の場合,あるいは胎児が致命的な損傷を負っている場合などの状況下における妊娠中の女性又は少女に対して,安全かつ合法的,効果的な妊娠中絶へのアクセスを提供しなければならない[注7]。

加えて,締約国は,女性又は少女が安全でない妊娠中絶に頼る必要がないように配慮しなければならない義務を負うのであり,この義務に違背するような形で妊娠や妊娠中絶を規制することは許されず,これに沿うように締約国はその中絶に関する法律を改正しなければならない[注8]。

例えば,締約国は未婚女性の妊娠を刑事罰の対象とすること,あるいは中絶を経験した女性及び少女に対して刑事罰を適用すること[注9],それを手助けした医師に対して刑事処罰を適用することなどの措置は,その措置により女性及び少女が安全でない中絶を強制されるので,採用するべきではない。

締約国は,安全かつ合法的な中絶[注10]に対して女性又は少女が効果的にアクセスすることを否定する新たな障害を導入するべきではなく,又はそのような既存の障害[注11]を取り除くべきであり,そのような障害には医療提供者個人の良心的拒否の結果としてもたらされるものも含む[注12]。

さらに締結国は,安全でない妊娠中絶に伴う精神的・肉体的な健康リスクから女性及び子どもの生命を効果的に保護しなければならない。

特に,締結国は,全ての人,特に,少女及び少年[注13]に対して,性と生殖にかかる健康[注14]に関する質が高く,科学的根拠に基づいた情報及び教育,並びに様々な手頃な価格の避妊方法[注15]へのアクセスを確保するべきであり,更に妊娠中絶を求める女性又は少女へのスティグマを防止するべきである[注16]。

締約国は,いかなる状況においても,秘密厳守で[注18],女性及び少女に対して[注17],出産前及び妊娠中絶後の適切な健康管理が利用でき,効果的なアクセスができるよう確保しなければならない。

9. 締結国は,個人の自律という人間の尊厳の核心的重要性を承認すると同時に,他の規約上の義務に違反しない限り,自由をはく奪された人々を含む特に脆弱な立場[注19]にある人々が自殺することを防止するための十分な措置を採用するべきである。同時に,締約国は,肉体的・精神的に激しい痛み及び苦しみを経験していて,尊厳のある死を望んでいる[注20],瀕死の重傷を負った,あるいは末期症状にあって,ひどく苦しんでいる(afflicted)成人の生命の終結を手助けするために医療専門家が治療や医学的手段を行うことを妨げるべきではない。そのようなケースでは,締約国は 医療専門家が,自由な意思による,十分な情報提供に基づいた,はっきりと述べられた明確な患者の決定に従い,強制や濫用から患者を守ること[注21]を確保するための確固とした法的・制度的なセーフガードを保障しなければならない。

一般的意見28 両性の平等(第3条)

1 委員会はここ20年以上に及ぶ活動のなかで蓄積された経験にかんがみて、一般的意見4(1981 年第13会期)に替えて第3条に関する一般的意見を更新することを決定した。この見直しは、規約の下で保護された人権を女性が享有することに関して、この規定が重大な効果を持つことを考慮するよう求めるものである。

2 第3条は全ての人間は規約に規定された権利を平等且つ完全に享有すべきであることを認めている。 何人も完全且つ平等な権利の享有を否定される場合には、いかなる場合でも、この規定の趣旨が全く損なわれてしまうことになる。従って、締約国は規約に規定された全ての権利を男性と女性が平等に享有することを確保すべきである。

11 委員会は、子どもに特別な保護を与える規約第24条と同様に第7条に従っているかを評価するために、女性に対する強姦を含む、夫婦間及びその他の形態の暴力に関して国内の法律及び慣行について情報を得る必要がある。委員会は又、締約国が強姦された結果妊娠した女性に安全な中絶をする手段があるかどうかを知る必要がある。締約国は又、委員会に対して強制的な中絶及び不妊を避けるための措置に関して情報を提供すべきである。性器切除の慣行が存在する締約国においては、その広がり及び撤廃のための措置についての情報を提供しなければならない。

15 第 7 条及び第10条に関して、締約国は、自由を奪われた人の権利が女性と男性と同じ条件で保護されることを確保することに関連した全ての情報を提供すべきである。特に、締約国は、監獄において女性と男性が別々に収監されているかどうか、女性は女性の看守によってのみ警護されているどうかについて報告すべきである。締約国は罪を問われた少女が大人と別になっている規則に従っていることについて、また自由を奪われた女性と男性間で、例えば社会復帰や教育プログラム及び夫婦や家族の訪問手段などについて処遇上の相違を報告すべきである。自由を奪われた妊娠中の女性は子どもの誕生を取り巻く状況において、又新生児の養育期間中は何時でも人道的な取扱いを受け、固有の尊厳を尊重されるべきである。 即ち、締約国はこの様な取扱及び尊厳を尊重することを確保するための施設及び女性とその子どものための医療と健康に関して報告すべきである。

20 締約国は、女性が男性と平等の立場で第17条に保護された女性のプライバシーやその他の権利を享有する女性の権利を妨害するかもしれない法律や慣行の影響を委員会が評価することを可能にする情報を提供しなければならない。
  そのような妨害の一例は強姦からの保護を含めて、女性の性生活が女性の法律的な権利や保護の範囲を決定する際考慮されるところに発生する。 締約国が女性の生殖機能に関連するプライバシーを尊重することに欠けるかもしれない他の領域は、例えば不妊に関する決定権限が夫にあるところや、一定の子ども数や年齢制限のある一般的な要件が女性の不妊に課せられるところ、又は締約国が中絶をした女性の医師や保健関係の職員に法的義務を課して事例報告をさせるところである。このような場合には、規約上の他の権利、例えば第6条や7条のような権利が危険に瀕してしまうかもしれない。 女性のプライバシーは女性を採用する前に妊娠テストを要求するような雇主のごとき私人によって侵害されるかもしれない。 締約国は第17条の下で認められた権利を女性が平等に享有することを妨げる法律や、公的又は私的な行動について報告すべきである。 そしてそのような妨害をなくし、妨害から女性を守ることができる措置について報告すべきである。

21 締約国は、思想、良心及び宗教ならびに個人が宗教や信念を選択する自由が、それは宗教や信念を変更する自由や宗教及び信念を表現する自由を含むものであるが…女性と男性の両方に、対等な立場で差別なしに法律や慣行によって保障され、保護されることを確保する措置を取らなければならない。 第18条により保護されたこれらの自由は規約によって認められる以上の制限にからしめてはならない。そして、これらの自由は、なかでも、第三者からの許可を要求する規則によったり、父親、夫、兄弟その他の者による干渉によって制限されてはならない。 第18条により、思想、良心及び宗教の自由を引用して女性に対する差別を正当化する根拠としてはならない。 締約国はそれ故、女性の思想、良心及び宗教の自由に関連する女性の地位に関する情報を提供しなければならない。 女性に関してこれらの自由の侵害を撤廃し、回避するために、また如何なる差別からも女性の権利を保護するためにどのような施策が取られたか、あるいは取ろうとしているのか、その両方を指摘しなければならない。

一般的意見 35 号 第 9 条(身体の自由及び安全)

I. 総論
1. 本一般的意見は,1982 年に採択された一般的意見 8 号(第 16 会期)に代わるものである。
2. 第 9 条は,身体の自由及び身体の安全の両方を認め,保護している。世界人権宣言では,第 3 条が,すべて人は,生命,自由及び身体の安全に対する権利を有すると宣言している。これは,世界人権宣言により保護される最初の実体的権利であり,規約第 9 条が個人及び社会全体の両方にとって極めて重要であることを示している。身体の自由及び安全は,それ自体としても,また,身体の自由及び安全の剥奪が歴史的に他の権利の享有を害するための主要な手段となってきたことからも,非常に重要である。

3. 身体の自由とは,身体の監禁からの自由に関するものであり,行為の一般的自由に関するものではない1。 身体の安全とは,身体及び心に対する傷害,あるいは身体的又は精神的完全性(integrity)に対する傷害からの自由に関するものであり,この点については下記パラグラフ 9 でさらに論じる。第 9 条は,すべての者にこれらの権利を保障している。「すべての者」には,とりわけ,少年少女, 兵士,障がい者レズビアン,ゲイ,バイセクシャル及びトランスジェンダー, 外国人,難民及び庇護希望者,無国籍者,移住労働者,有罪判決を受けた者並びにテロ活動に携わった者も含まれる。


以下は自由権規約第7条 拷問に関する一般的意見7⇒20に移行

一般的意見20 (44) (7条・拷問、品位を傷つける取扱い) 1992.4.3採択
1 この一般的意見は、 一般的意見7 (16) にかわるもので, これを見直し, 更に発展させるものである。

2 市民的及び政治的権利に関する国際規約第7条の目的は、 個人の尊厳と、 身体的、精神的完全性 (integrity) の双方を保護することにある。 すべての人々に対し, 第7条で禁止されている行為につき、 その行為が公的権限に基づくか、公的権限を超えているか、 又は私的な資格で行動する人々によってなされたか否かを問わず、必要と認められる立法又は他の方法を通じて保護を与えることは、締約国の義務である。  第7条における禁止の内容は、 本規約第10条第1項の積極的要件によって補完される。即ち、 同条項は、 「自由を奪われたすべての者は、人道的に、 かつ人間の固有の尊厳を尊重して取り扱われる」と規定している。

3 第7条の正文はいかなる制限も認めていない。  委員会は、 本規約第4条に引用されている公の緊急事態の状況においてすら第7条の規定の停止は認められず、その規約の効力を持続することを再確認する。委員会は同様に、 上司又は公的権力からの命令に基づくことなどのいかなる理由についても、第7条違反を免れる正当化根拠,又は酌量すべき情状にならないと考える。

4 規約には第7条の諸概念の定義は含まれておらず, 委員会も同条で禁止されている行為のリストを作成し、同条定める異なる種類の処罰、 又は取扱いの間の厳密な区別を定立することはしていない。それらの区別は、適用される取扱いの性質・目的・程度に依存する。

5 第7条における禁止は身体的苦痛をもたらす行為だけでなく、 被害者に対し精神的苦痛をもたらす行為にも及ぶ。委員会の見解では、 更にその禁止は、体罰、 即ち犯罪に対する処罰としての、 又は教育的、懲戒的措置としてのいきすぎた処分を含む体罰にも及ぶ。  この点に関しては、 第7条は、特に、 教育、 医療施設における子供、 生徒、 患者を保護するものであることを強調することが相当である。

6 委員会は、 長期間の被拘禁者又は受刑者の独居拘禁も、 第7条によって禁止される行為にあたる場合があることを指摘する。委員会が一般的意見6(16) で述べた通り, 本規約第6条は廃止が望ましいと強く示唆する言葉で死刑廃止に言及している。更に、 最も重大な犯罪につき、 締約国によって死刑が適用されるときは、第6条に従って厳格に制限されるだけでなく、生じ得る身体的・精神的苦痛が最も少ない方法で執行されなければならない。

7 第7条は、 当該関係者の自由意思による同意のない医学的又は科学的実験を明示的に禁止している。委員会は、 締約国の定期報告書には、 一般的にこの点に関する情報が全くないことを指摘したい。この条項の遵守を確保する必要性と方法につき、もっと注意が向けられるべきである。委員会は又は、 このような実験に関し、 正当な同意を与えることができない人々につき、特にあらゆる形態の拘禁、又は受刑中の人々につき、 特別な保護が必要であると考える。このような人々は、 自らの健康に有害となり得るいかなる医学的又は科学的実験にも服すべきではない。

8 委員会は、 このような取扱い又は刑罰を禁止し、 あるいは、 これを犯罪とするだけでは、第7条の実施として充分ではないと指摘したい。 締約国は委員会に対し、その管轄下の領域における拷問又は残虐な非人道的な若しくは品位を傷つける取扱いに該当する行為を防止し、処罰するためにとった立法・行政・司法、及びそれ以外の措置を報告しなければならない。

9 委員会の見解によれば、 締結国は個人を、 犯罪人引渡、 追放、 又は送還によって、他国に対する帰還の際における拷問又は残虐な非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い、又は処罰の危険にさらしてはいけない。締約国は報告書において、 そのためにどんな措置がとられたかを示すべきである。

10 委員会に対しては,拷問禁止と第7条によって禁じられている取扱いに関する関連情報が大衆にまでいかに広く広報されているかにつき、報告がなされるべきである。 法の執行に当る職員、 医療機関職員、 警察官、 及びあらゆる形態の逮捕、 拘禁、刑に服する人々の拘禁、 又は取扱いに関わる人々は、 適切な指示と訓練を受けなければならない。締約国は委員会に対し、与えられた指示と訓練、 及び第7条の禁止がどのようにかかる人々が服すべき規則及び道徳基準の不可欠な要素を構成しているかにつき報告しなければならない。

11 第7条により禁じられた行為に対して、 いかなる人々も保障されるべき一般的な保護を与える措置を叙述することに加え、締約国は、 著しい弱者に対する特別な保護に関する措置につき、詳細な情報を提供すべきである。  拘禁中の人々の実効保護を保障するために、 被拘禁者が拘禁の場所として公的に認められた場所で拘禁されること、拘禁の責任者の名前だけではなく、拘禁される者の名前と場所が記録され、 親戚や友人を含む関係者に利用可能な登録簿に記載され、面会できる規定がつくられるべきである。  同様に、すべての尋問時間と場所は、 居合わせたすべての人々の名前と共に記録されるべきであり、この情報は、 司法的・行政的手続のために利用されるべきである。他との接触を絶つ拘禁を禁止する規定が置かれるべきである。この関係で締結国は、 いかなる拘禁場所にも、 拷問又は不当な取扱いのために使われるようないかなる装置もないことを確保しなければならない。被拘禁者の保護のために、医師、 弁護士、 及び操作の必要がある時は適当な監視の下に家族との速やか且つ定期的な面会を必要とする。

12 拷問又は他の禁じられた取扱いを通じて得られた供述書、 又は自白を司法手続において証拠能力があるとして使用することを法律により禁止しなければならないことは、第7条の下での違反行為を抑制するために重要である。

13 締結国は、 報告書の提出の際に、 拷問又は残虐な非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い、又は刑罰を処罰する刑法の規定につき、 公務員又は国のために行動する他の人々によるか、又は私人達によつて犯されたか否かを問わず、このような行為に適用される刑を具体的に報告しなければならない。第7条を犯す人々は、 禁止行為を助長するか、 命令するか、 容認するか、 実効するかを問わず、責任を負わねばならない。その結果、 その命令に服することを拒否した者は、 処罰又は他の不利益な取扱いに服することがあってはならない。

14 第7条は本規約第2条第3項と共に読まれるべきである。 報告書において締約国は、その法体系が第7条で禁じられたあらゆる行為を直ちにやめさせることならびに適正な補償につき、いかに効果的な保障をしているかを示すべきである。 第7条によって禁じられる虐待を告発する権利は、 国内法で認められなければならない。告発については、 効果的な救済がなされるように、 権限ある当局によって速やかにかつ公平に捜査されなければならない。締約国の報告書は、虐待の被害者が利用可能な救済方法、 告発後の手続、 告発数に関する統計、その処理結果につき具体的な情報を提供すべきである。

15 委員会は、 いくつかの締約国が拷問に関し恩赦を認めていることに注目してきた。一般的に、 恩赦は締約国がこのような行為を捜査すべきこと、その管轄下においてかかる行為が起こらないことを保障すべきこと、将来も発生しないことを確保すること、 等の義務に抵触する締約国は、 個人から補償及び可能な限りの完全な原状回復を含む効果的な救済を受ける権利を奪ってはならない。

*1:拷問禁止

*2:日弁連訳では近親相姦