リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

女性差別撤廃条約(政府訳:女子差別撤廃条約)第10条、第12条、第16条;一般勧告第21号、24号、36号

CEDAWの立て付け

女性差別撤廃条約(Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women: CEDAW, 1979年)は以下の6部から成る。

第Ⅰ部(1条~6条)は、非差別、性の固定観念、性的人身売買に焦点をあてている。
第Ⅱ部(7~9条)では、政治生活、代表、国籍に関する権利に重点を置き、公的領域における女性の権利について概説している。
第Ⅲ部(10条~14条)は、特に教育、雇用、健康に重点を置いた女性の経済的・社会的権利について述べています。農村部の女性に対する特別な保護と、彼女たちが直面する問題も含まれている。
第Ⅳ部(第15条、第16条)は、婚姻と家庭生活における女性の平等の権利と、法の下での平等の権利について概説している。
第Ⅴ部(17条~22条)は、女性差別撤廃委員会と締約国の報告手続きを定めている。
第Ⅵ部(第23条~第30条)は、この条約が他の条約に及ぼす影響、締約国の約束、条約の運営について述べている。

CEDAW第10条
 締約国は,教育の分野において,女子に対して男子と平等の権利を確保することを目的として,特に,男女の平等を基礎として次のことを確保することを目的として,女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとる。
(h) 家族の健康及び福祉の確保に役立つ特定の教育的情報(家族計画に関する情報及び助言を含む。)を享受する機会


第12条 
1.締約国は,男女の平等を基礎として保健サービス(家族計画に関連するものを含む。)を享受する機会を確保することを目的として,保健の分野における女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとる。


第16条 
1.締約国は,婚姻及び家族関係に係るすべての事項について女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし,特に,男女の平等を基礎として次のことを確保する。
(e) 子の数及び出産の間隔を自由にかつ責任をもって決定する同一の権利並びにこれらの権利の行使を可能にする情報,教育及び手段を享受する同一の権利

一般勧告第 21 号 婚姻及び家族関係における平等(第 13 回会期、1994 年)
第 16 条1(e)
21. 子を産み育てるという女性の責任は、教育、雇用及びその他の個人的発展に関する活動を享受する機会に対する女性の権利に影響を与える。かかる責任はまた、労働に関する不平等な負担を女性に課す。子の数及び出産の間隔も女性の生活に同様の影響を与え、また子の身体的及び精神的健康とともに、女性の身体的及び精神的健康に影響する。このような理由により、女性は子の数及び出産の間隔に関して決定する権利を有する。
22. いくつかの報告により、強いられた妊娠、中絶もしくは不妊手術などの強制的な慣行が、女性に対して重大な結果を及ぼすことが明らかにされている。子を持つか持たないかという決定は、配偶者もしくはパートナーと相談の上なされる方が好ましいけれども、配偶者、親、パートナーもしくは国家により制限されるべきではない。安全で信頼できる避妊措置について十分に情報を得た上で決定するために、女性は、条約第 10 条(h)に規定されるように、避妊措置とその利用に関する情報を得、性教育及び家族計画サービスを享受する機会を保障されなければならない。
23. 生殖に関する任意の規制のための適切な措置が自由に利用できることにより、家族の構成員すべての健康、発展及び福祉が向上するという一般的な合意が存在する。さらに、かかるサービスは、国民の生活及び健康の質全般を改善し、また人口増大の任意の規制は、環境を保全し、持続可能な経済的及び社会的開発を達成することに役立つ。

一般勧告第 24 号 (第 20 回会期、1999 年)(第 12 条: 女性と保健)
序論
1. 女子差別撤廃委員会は、リプロダクティブ・ヘルスを含む保健サービスを享受する機会は女子差別撤廃条約に基づく基本的権利であることを確認し、条約第 21 条に基づき、同委員会第 20 回会期において、条約第 12 条に関する一般勧告を練り上げることを決定した。


背景
2. 女性の健康と福祉にとって、締約国が条約第 12 条を遵守していることが重要である。このためには、締約国は、ライフサイクルを通じて、とりわけ家族計画、妊娠、分べんの分野及び産後の期間中において、保健サービスを享受する機会における女性に対する差別を撤廃することが求められる。条約第 18 条に従い締約国によって提出された報告を検討すると、女性の健康は女性の健康と福祉を促進する上で重要な問題として認識されている課題であることが明らかである。締約国並びに女性の健康を巡る諸問題に特に関心を持ち、また懸念する人々のために、本一般勧告は、委員会の第 12 条の解釈を詳しく述べ、達成可能な最高水準の健康に対する女性の権利を実現するために差別を撤廃するための措置に取り組むよう努めるものである。
3. 最近の国連のさまざまな世界会議においても、これらの目標が検討された。本一般勧告の作成に当たり、委員会は、国連の世界会議において採択された関連のある行動計画、とりわけ 1993 年の世界人権会議、1994 年の国際人口開発会議及び 1995 年の第4回世界女性会議の行動計画を考慮した。委員会はまた、世界保健機関 (WHO)、国連人口基金 (UNFPA)、その他国連機関の活動にも留意した。また、委員会は、本一般勧告の作成に当たり、女性の健康に関して特別な専門知識を有する数多くの非政府機関とも協力した。
4. 委員会は、他の国連文書が健康に対する権利並びに健康を達成することができる状況に対する権利を重視していることに注目するものである。かかる文書は、世界人権宣言、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、市民的及び政治的権利に関する国際規約、児童の権利に関する条約及びあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約を含む。
5. 委員会は、また、女性性器の切除、ヒト免疫不全ウイルス/後天性免疫不全症候群(HIV/AIDS)、障害のある女性、女性に対する暴力、及び家族関係における平等に関する先の一般勧告にも言及する。これらはいずれも、条約第 12 条の完全なる遵守に不可欠な問題に関係するものである。


一般勧告第36号 女児及び女性の教育を受ける権利
68. 女児への性的虐待は、特に思春期には望まない妊娠につながる可能性があり、それゆえに問題とその結果について警告する必要がある。したがって、家庭、学校及び地域社会でのこの問題の深刻さに対する重要な対策として、条約第10条(h)及び第12条、女性と保健に関する一般勧告第24号、及び女性に対するジェンダーに基づく暴力に関する一般勧告第35号に従った、性と生殖に関する健康及び権利、責任ある性行為、早すぎる妊娠の防止、性感染症予防を始めとする包括的な性教育に関しての、年齢に応じた必須教科課程をあらゆるレベルの教育において設けることが必要になる。教員は様々なレベルでの年齢に応じた教育のための訓練を特に受けるべきである。中等レベルのように男性の教職員が圧倒的に多い状況では、生徒の手本となり、教室を女児や若い女性にとって安全で、様々なことを可能にしてくれる場所にすることができる女性教員を募集し、訓練し、採用するための取組を行うべきである。