リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

中絶の権利が書き込まれた社会権規約一般的意見22と自由権規約一般的意見36

国際連合経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約 ICESCR) 一般的意見22 第12条:性と生殖に関する健康に対する権利

https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/activity/international/library/human_rights/22.pdf
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/kokusai/humanrights_library/treaty/data/22E.pdf

社会権規約第12条:性と生殖に関する健康に対する権利」に関する勧告です。
冒頭から【「性と生殖に関する健康への権利」は、社会権規約の「健康を享受する権利」の一部であり、他の国際人権文書にも反映されている。】と説明されています。


「男女間の平等、及びジェンダーの視点」が重要だとされ、

25. 女性は生殖能力を持つことから、「性と生殖に関する健康への権利」を実現することは、女性の様々な人権を全面的に実現するために極めて重要である。女性の自律ならびに自身の人生や健康について有意義な決定をする権利のために、「性と生殖に関する健康への権利」は不可欠である。男女平等のためには、(男性のニーズとは異なる)女性の健康上のニーズが考慮されなければならないし、また、女性のライフサイクルに合わせて適切なサービスが提供されなければならない。

28. 法律上及び事実上、女性の権利と男女平等を実現するには、「性と生殖に関する健康」の分野における差別的な法律、政策及び慣行を廃止または改正する必要がある。「性と生殖に関する健康」のための広範なサービス、物品、教育及び情報への女性のアクセスを妨げる障壁はすべて取り除かなければならない。妊産婦の死亡率及び罹病率を下げるには、(農村部及び僻地を含み)産科救急ケアと熟練助産者が必要で、危険な中絶も防止しなければならない。望まない妊娠と危険な中絶を防止するためには、手頃な価格の安全かつ効果的な避妊手段と、包括的性教育へのアクセスを青少年を含むすべての個人に保障すること、中絶を制限する法律を緩和すること、女性と少女が(訓練を受けた医療従事者が提供するものを含む)安全な中絶サービスと良質な中絶後のケアにアクセスできるように保障することが必要である。また、女性が自分の「性と生殖に関する健康」について自律的決定を行う権利を保障する法的・政策的措置を国家が講じなければならない[25]。


自由権規約の一般的意見36:
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2021/HRC_GC_36j.pdf
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2021/HRC_GC_36e.pdf

8. 締約国は、自主的な中絶を規制する措置を採ることは可能だが、そのような措置は、妊娠中の女性又は少女の生きる権利、もしくは自由権規約で保障されているその他の諸権利を侵害する結果となってはならない。
 したがって、女性又は少女に中絶を制限することによって、とりわけ、 彼女たちの生命を危険にさらし、あるいは彼女たちに第7条に違反する肉体的又は精神的な痛みや苦しみを与え、差別し、そのプライバシーを恣意的に干渉してはならない。
 締約国は、妊娠中の女性または少女の生命及び健康が危険に曝される場合、あるいは妊娠を予定日まで継続することが女性または少女に相当の痛みや苦しみを引き起こすような場合、なかでもレイプや近親姦による妊娠や胎児が生存できない場合には、女性又は少女に対して、安全かつ合法的、効果的な中絶へのアクセスを提供しなければならない。
 加えて、締約国は、女性または少女が危険な中絶に頼る必要がないように配慮する義務があり、この義務にそむくような形で妊娠や中絶を規制することは許されず、この義務を果たすために中絶に関する法律を改正しなければならない。
 たとえば、締約国は未婚女性の妊娠を刑事罰の対象とすること、あるいは中絶を経験した女性および少女に対して刑事罰を適用すること[注9]、それを手助けした医療提供者に対して刑事罰を適用することなどの措置は、女性および少女が危険な中絶に頼らざるをえなくなるので、採用すべきではない。
 締約国は、医療提供者個人の良心的拒否の結果としてもたらされるものも含み、女性又は少女が安全かつ合法的な中絶に効果的なアクセスに対する既存の障壁を取り除くべきであり、なおかつ新たな障壁も導入すべきではない。
 さらに締結国は、危険な中絶に伴う精神的・肉体的な健康リスクから女性及び少女の生命を適切に保護しなければならない。
 特に、締約国は、全ての人――とりわけ少女及び少年――に対して、性と生殖の健康に関する質が高く科学的根拠に基づいた情報や教育、 並びに様々な手頃な価格の避妊方法へのアクセスを確保すべきであり、 さらに中絶を求める女性又は少女へのスティグマを防止すべきである。
 締約国は、いかなる状況においても、秘密厳守で、女性および少女に対して、出産前および中絶後の適切な健康管理が利用でき、有効にアクセスできるよう確保しなければならない。

すべての人間は、生まれながらにして「人権」を付与されている存在です。国法は人権推進のために作られることもありますが、多くの場合、人権を制限するために作られています。刑法堕胎罪と母体保護法は明らかに後者に当たり、女性差別撤廃条約や人権規約を重視するなら中絶は非犯罪化すべきです。


リプロダクティブライツは、反対派の妨害のため長いこと中絶の権利を書き込めなかったのですが、2010年代半ばに国連で徹底した調査と議論が行われた結果、人は生まれた瞬間に人権を保有するとの結論を出しました。以来、人権文書の中に「女性の中絶の権利」を明記するようになったのです。