忘備録
岩本美佐子 アジア女性研究第16号(2007年3月)
1948年(昭和23年)の最初の優生保護法の条文
法律第百五十六号(昭二三・七・一三)
優生保護委員会の審査制度などが記されています。
第三章 母性保護
(任意の人工妊娠中絶)
第十二条 都道府県の区域を単位として設立せられた社団法人たる医師会の指定する医師(以下指定医師という。)は、第三条第一項第一号から第四号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、任意に、人工妊娠中絶を行うことができる。
2 前項の同意には、第三条第二項の規定を準用する。
(人工妊娠中絶の審査の申請)
第十三条 指定医師は、左の各号の一に該当する者に対して、人工妊娠中絶を行うことが母性保護上必要であると認めるときは、本人及び配偶者の同意を得て、地区優生保護委員会に対し、人工妊娠中絶を行うことの適否に関する審査を、申請することができる。
一 別表中第一号又は第二号に掲げる疾患に罹つているもの
二 分娩後一年以内の期間に更に妊娠し、且つ、分娩によつて母体の健康を著しく害する虞れのあるもの
三 現に数人の子を有している者が更に妊娠し、且つ、分娩によつて母体の健康を著しく害する虞れのあるもの
四 暴行若しくは脅迫によつて、又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて、妊娠したもの
2 前項の申請には、同項第一号から第三号の場合にあつては他の医師の意見書を、同条第四号の場合にあつては民生委員の意見書を添えることを要する。
3 第一項の同意は、配偶者が知れないとき又はその意思を表示することができないときは本人の同意だけで足り、本人が心神喪失の状況にあるときは後見人又は保佐人の同意をもつてこれに代えることができる。
(人工妊娠中絶の審査)
第十四条 地区優生保護委員会は、前条第一項の規定による申請を受けたときは、命令の定める期間内に、同条第一項に規定する要件を具えているかどうか及び未成年者についてはその同意が他から強制されたものでないかどうかを審査の上、人工妊娠中絶を行うことの適否を決定して、その結果を、申請者に通知する。
(人工妊娠中絶の実施)
第十五条 指定医師は、前条の決定に従い、人工妊娠中絶を行うことができる。
第四章 優生保護委員会
(優生保護委員会)
第十六条 優生手術及び人工妊娠中絶に関する適否の審査その他この法律で定める優生保護上必要な事項を処理するため、優生保護委員会を置く。
(種類と権限)
第十七条 優生保護委員会は、中央優生保護委員会、都道府県優生保護委員会及び地区優生保護委員会とする。
2 中央優生保護委員会は、厚生大臣の監督に属し、主として優生手術に関する適否の再審査を行う外、この法律で定める優生保護上必要な事項を処理する。
3 都道府県優生保護委員会は、都道府県ごとにこれを置き、都道府県知事の監督に属し、優生手術に関する適否の審査を行う。
4 地区優生保護委員会は、保健所の区域ごとにこれを置き、都道府県知事の監督に属し、人工妊娠中絶に関する適否の審査を行う。
(構成)
第十八条 中央構生保護委員会は委員三十人以内で、都道府県優生保護委員会は委員十人以内で、地区優生保護委員会は委員五人以内で、これを組織する。
2 各優生保護委員会において、特に必要があるときは、臨時委員を置くことができる。
3 委員及び臨時委員は、医師、民生委員、裁判官、検察官、関係行政庁の官吏又は吏員その他学識経験ある者の中から、中央優生保護委員会にあつては厚生大臣が、都道府県優生保護委員会及び地区優生保護委員会にあつては都道府県知事が、それぞれ、これを命ずる。
4 各優生保護委員会に、委員の互選による委員長一人を置く。
(委任事項)
第十九条 この法律で定めるものの外、委員の任期、委員長の職務その他優生保護委員会の運営に関して必要な事項は、命令でこれを定める。
1952年(昭和27年)の改定優生保護法
法律第百四十一号(昭二七・五・一七)
優生保護委員会が削除され医師一人の認定で中絶を可能にするとともに、受胎調節実地指導員制度を追加。
◎優生保護法の一部を改正する法律
優生保護法(昭和二十三年法律第百五十六号)の一部を次のように改正する。
(中略)
第十三条及び第十四条を削り、第十二条を次のように改める。(医師の認定による人工妊娠中絶)
第十四条 都道府県の区域を単位として設立された社団法人たる医師会の指定する医師(以下指定医師という。)は、左の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。
一 本人又は配偶者が精神病、精神薄弱、精神病質、遺伝性身体疾患又は遺伝性奇型を有しているもの
二 本人又は配偶者の四親等以内の血族関係にある者が遺伝性精神病、遺伝性精神薄弱、遺伝性精神病質、遺伝性身体疾患又は遺伝性奇型を有しているもの
三 本人又は配偶者が癩疾患に罹つているもの
四 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
五 暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの
2 前項の同意は、配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなつたときには本人の同意だけで足りる。
3 人工妊娠中絶の手術を受ける本人が精神病者又は精神薄弱者であるときは、精神衛生法第二十条(後見人、配偶者、親権を行う者又は扶養義務者が保護義務者となる場合)又は同法第二十一条(市町村長が保護義務者となる場合)に規定する保護義務者の同意をもつて本人の同意とみなすことができる。
(中略)
第十五条を次のように改める。
(受胎調節の実地指導)
第十五条 女子に対して厚生大臣が指定する避妊用の器具を使用する受胎調節の実地指導は、医師の外は、都道府県知事の指定を受けた者でなければ業として行つてはならない。但し、子宮腔内に避妊用の器具をそう入する行為は、医師でなければ業として行つてはならない。
2 前項の都道府県知事の指定を受けることができる者は、厚生大臣の定める基準に従つて都道府県知事の認定する講習を終了した助産婦、保健婦又は看護婦とする。
第十六条中「及び人工妊娠中絶」を削る。