リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

産婦人科医の91%が緊急避妊薬の薬局販売に反対? 日本産婦人科医会のアンケートに「作為的」と批判

BuzzFeedNews 2021年10月4日への返信

遅きに逸しましたが、返信しないよりはマシですよね?
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 2003年から中絶問題を研究している塚原久美です。結論から言うと、日本産婦人科医会(以下「医会」)が「誘導的な調査」をしたのは、これが初めてではありません。
 関心のある方は、拙論「日本の中絶の安全性は確認されたのか」(日本女性学会学会誌『女性学』2020 Vol.28掲載)をぜひお読みください。
 2010年に私も参加して行った日本初の中絶実態調査(方法や料金など)の結果について、朝日新聞が「日本の中絶 母体に重い負担 WHOが勧める方法1割」という見出しで報じた直後、日本産婦人科医会が行った大規模な実態調査を」行い、「搔爬が多用されているが日本の中絶は安全」という結果を出しました。
 これに疑問を持ち、比較対象とした海外文献の詳細や、調査実施時に対象者に送った「依頼文」の内容なども吟味した結果、非常に操作的かつ誘導的な「調査」だったことが分かりました。結論先にありきのアリバイ作りであった可能性が強いと、私は考えています。
 なぜそんなことをしたのか? まず、中絶の技術が世界では変化したからです。日本は東欧圏を除けば、世界で一番早い段階に中絶を合法化しており、当時、比較的確実に行える中絶方法は「そうは法」しかありませんでした。しかし、そうは法は下手をすると子宮に穴をあけてしまいかねない危険性と背中合わせであり、そのために戦後に中絶を合法化した優生保護法を提案した産婦人科医でもあった国会議員は、安全に「そうは」を行える産婦人科医のみに中絶業務の独占を認める「指定医師制度」を提案したのです。
 指定医師たちは、戦後のベビーブームの中で急増していた「中絶需要」を独占しました。一方、西欧では、1970年前後に女性の健康と権利のために中絶が合法化された西欧諸国の医師たちが、「そうは」は違法の堕胎師が行うものだとして拒否し、「吸引法(日本の電動式吸引法とは少々内容が違います)」を確立していきました。ところが、日本の医師たちは「日本人は器用だから難しい搔爬を」安全にできるのだ」として、西欧の医師たちを見下し、新しい技術を学ぼうともしてきませんでした。
 そして緊急避妊薬の薬局販売や、中絶薬の導入が現実化している今、指定医師たちは「特権」(戦後4000万件、年間数百億円?)の中絶業務を手放したくないため、少しでも利権にしがみつこうとしているように見えてなりません。