旧優生保護法強制不妊手術被害者の裁判で証拠提出した論文の著者サム・ローランズさん
First Trimester Abortion in Japan - BSACP
Sam Rawlands(サム・ローランズ)さんが、日本の中絶薬導入に関してエッセーを書いているのを発見しました。私の英文ブログから得た情報も使われています。
仮訳して共有しますね
日本における妊娠第一期の中絶
2022年5月12日
1988年に中国とフランスで利用可能になったミフェプリストンが、日本にやってくるかもしれない兆しがあります。ミフェプリストンは現在82カ国で早期の薬による中絶に使用することが承認されています(https://gynuity.org/resources/list-of-mifepristone-approvals )。30年以上にわたる臨床研究に基づいて、早期の薬による中絶に用いられるミフェプリストンとミソプロストールの安全性、有効性、受容性は疑う余地がありません。
Linepharma は、ミフェプリストンとミソプロストールのコンビパックについて、日本での販売承認を申請しています(https://exbulletin.com/world/1357452/ )。もし承認されれば、次のようなことが可能になります。
現在、毎年15万人以上の日本人の女性が手術による中絶を行っていますが、これが承認されれば、薬による中絶を選択することができるようになります。中絶のプロセスに対する受容性と満足度は、女性が方法を選択でき、自分の好きな方法を受けられるときに最も高くなります4。
日本産科婦人科学会(JAOG)は、薬による中絶は地域医療施設ではなく、病院でのみ行われるべきであると述べています(https://okumi.hatenadiary.com/entry/2022/05/05/124733 )。これは、医療施設以外での中絶薬の自己投与と中絶プロセスの自己管理を奨励する世界保健機関(WHO)のガイドラインの勧告50に反するものです5。
また、JAOGはこのサービスの料金を中絶手術の料金(約875米ドル)と変わらないようにすべきであると述べています。薬による中絶を行う女性の大多数が治療室や手術室の施設を使用する必要がないことを考えると、これは不合理なことだと思われます。
日本では、吸引システムによる交差感染の危険性や器具の洗浄が難しいという理由から、真空吸引法はあまり行われていないと言う医師もいます。実は、手動の真空吸引で使用するカニューレ・シリンジ、電動真空吸引で使用するカニューレ・チューブは、高資源国ではすべて滅菌されたシングルユースです。
日本における2019年1年間のすべての中絶業者の診療に関する調査によると、病院では真空吸引だけで中絶を行っているのは4分の1だけで、4分の3はD&Cだけ、または掻爬と組み合わせた真空吸引によって行われています6。
この研究では、電気真空吸引を使用した手術よりもD&Cを使用した手術の方が合併症が多いことがわかりました。このように妊娠第一期の中絶手術にD&Cを用いることは、WHOガイドラインの勧告23の3.4.15項に反しており、現代の実践では時代遅れであると考えられています7。
私たちは、日本の生殖年齢にある2500万人の女性に影響を与える可能性のあるミフェプリストンを承認するこの動きを歓迎します。私たちは、日本の厚生労働省と日本産婦人科医会に対し、薬による中絶と外科的中絶の両方のサービス提供に関する広範な科学的証拠に注目することを求めます。早期の薬による中絶の導入は、世界での豊富な経験とその安全性の実績を考慮した方法で行われるべきです。また、過剰な費用や過剰な医療化など、アクセスに対する不必要な制限があってはならない。そうすれば、日本の女性たちは、科学の進歩の結果として存在する選択肢の恩恵を本当に受けることができるようになるのです。
著者紹介
Sam Rowlands MB BS, MD, LLM, FRCGP, FFSRH 英国ボーンマス大学医学部・公衆衛生学部の客員教授。FIAPACのセクレタリー、BSACPのセクレタリー、FSRHの副会長、FSRHの臨床効果委員会の委員長を歴任しています。
Emeka Oloto MB BS, FWACS, FRCOG, FFSRH 英国レスターの婦人科医で、性と生殖に関する健康のスペシャリスト。彼は、様々な医療現場で薬による中絶と手術による中絶の両方について幅広い臨床経験を持っています。References
1. de Costa C, Carrette M. Early medical abortion. In: Rowlands S, ed. Abortion care.
Cambridge: Cambridge University Press 2014:62-70.
2. Aiken A, Lohr PA, Lord J, et al. Effectiveness, safety and acceptability of no-test medical abortion provided via telemedicine: a national cohort study. BJOG 2021 doi: 10.1111/1471-0528.16668
3. Schummers L, Darling EK, Dunn S, et al. Abortion safety and use with normally prescribed mifepristone in Canada. NEJM 2022;386:57-67. doi: 10.1056/NEJMsa2109779
4. Kapp N, Lohr PA. Modern methods to induce abortion: safety, efficacy and choice. Best Practice & Research Clin Obstet Gynaecol 2020;63:37-44.
5. WHO. Abortion care guideline Geneva: World Health Organization; 2022 [Available from: https://apps.who.int/iris/handle/10665/349316
6. Nakamura E, Kobayashi K, Sekizawa A, et al. Survey on spontaneous miscarriage and induced abortion safety at less than 12 weeks of gestation in Japan. J Obstet Gynaecol Res 2021;47(12):4158-63.
7. Roblin P. Vacuum aspiration. In: Rowlands S, ed. Abortion care. Cambridge: Cambridge University Press 2014:71-79.
旧優生保護法の裁判で私が訳出して高裁に提出したSamさんが共著者の一人である論文は以下⇓
[https://scholar.google.com/citations?view_op=view_citation&hl=en&user=10bRosIAAAAJ&citation_for_view=10bRosIAAAAJ:HoB7MX3m0LUC:title=
[PDF] from tandfonline.com
Legalised non-consensual sterilisation–eugenics put into practice before 1945, and the aftermath. Part 1: USA, Japan, Canada and Mexico]
今回の日本の中絶薬導入の問題に加えて、日本の優生保護法の問題についても詳しい方です。