リプロな日記

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双子死産のベトナム人実習生、死体遺棄罪の有罪見直しか  最高裁

朝日デジタル記事 根岸拓朗 2022年12月9日 15時04分

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写真・図版キャプション
 一周忌の祈りの集いに参加したレー・ティ・トゥイ・リン被告。祭壇には双子の骨つぼが並べられた=2021年11月7日、熊本市西区


 自宅で死産した双子の遺体を遺棄したとして、死体遺棄罪に問われたベトナム国籍の技能実習生レー・ティ・トゥイ・リン被告(23)の上告審で、最高裁第二小法廷(草野耕一裁判長)は検察側、弁護側の双方の意見を聞く弁論を来年2月24日に開くと決めた。弁論は二審判決を変えるのに必要な手続き。弁護側の無罪主張を退けて有罪とした二審・福岡高裁の判断が見直される可能性がある。

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 リン被告は9日、支援団体を通じてコメントを発表。「最高裁の弁論開始の知らせを聞いて、とてもうれしいです。私の無罪主張に、最高裁の裁判官が耳を傾け、ぜひ無罪判決を言い渡してくれることを願います」と期待した。さらに「これまで私を応援してくれた多くの皆さんへの感謝と、無罪判決実現へ向けて今後ともよろしくお願いします」とした。

 リン被告は、技能実習生として熊本県の農園で働いていた2020年11月、自宅で双子を死産した。遺体をタオルに包んで部屋にあった段ボール箱に入れ、おわびの言葉などを書いた手紙も入れた。「妊娠がわかれば帰国させられる」と考えて周囲には相談しておらず、翌日に病院を受診して死産が発覚した。

 刑法の死体遺棄罪は「死者に対する一般人の敬虔(けいけん)感情」を害する行為を罰する。「遺棄」には、遺体を山中に捨てたり家の床下に隠したりするといった「作為」と、役所への届け出や葬儀をせずに遺体を放置する「不作為」という二つの考え方がある。

 裁判では、死産直後の被告の行為が、これらにあたるのかが争われた。

 被告側は、遺体を段ボールに入れたのは「埋葬のための安置だった」として罪は成立しないと主張したが、21年7月の一審・熊本地裁判決は「作為」と「不作為」の両方にあたると判断し、懲役8カ月執行猶予3年の有罪とした。死産から間もない被告が厳しい状態にあったと認めつつ、「まわりの人に助力を求めることはできたはずだ」と述べた。

 今年1月の二審・福岡高裁判決は、一審の判断を一部修正した。死産から発覚までの時間が1日半ほどにとどまり、通常の葬儀と比べて遅すぎるとはいえないため、「不作為」は認めなかった。

 ただ、「作為」にはあたるとして有罪を維持した。被告が遺体を段ボール箱に二重に入れ、テープで封をした行為が「遺体の隠匿にあたり、適切な時期に葬祭が行われる可能性を著しく減少させた」と判断した。量刑は軽くし、懲役3カ月執行猶予2年とした。

 弁護側は、上告して改めて無罪を主張するとともに、出産を経験した女性らから、無罪判決を求める127通の意見書を集め、最高裁に提出。「孤立出産に追い詰められた女性に必要なのは処罰ではなく、背景の分析だ」と訴えた。

 リン被告は今年4月の会見で「私は絶対に双子の子どもたちの体を捨てたり、隠したりしていません」と語っていた。(根岸拓朗)