リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

中絶薬の自宅送付を認めた米FDAについて

忘備録

 FDAアメリカの医薬品の販売と安全性を管理している連邦政府機関である。2000年にはダンコ・ラボラトリーズ社の中絶薬ミフェプレックスを始めて承認したのも、2011年にはミフェプリストンの調剤要件に「リスクの評価・軽減戦略(REMS)」を追加し、薬を処方できるのはメーカーの認定を受けた医療機関のみに限定したのもFDAだった。REMSではミフェプリストンをクリニック、病院、その他の医療現場で提供者から患者に手渡しすることが定められていたため、対面で薬が手渡されることが定められていた。これは医学的に不必要な障壁となっているとアメリカの医師たちは批判していたのですが、2021年4月、FDAはCOVID-19のパンデミック中のあいだはこの対面要件を一時的に差し止めたることにし、遠隔医療による中絶へのアクセスを拡大する動きを見せました。

長年、アメリカのプロチョイス団体は中絶の規制緩和のためにREMSの修正を求めてきたのですが、2016年、FDAは現在の臨床診療の指針となる科学的エビデンスに基づく新しいレジメンと薬剤ラベルに更新しました。その後、2019年には後発薬であるGenBioPro社の「ミフェプリストンジェネリック」の申請が承認されました。
 COVID-19のパンデミックが始まった2021年春以降、ヨーロッパ諸国を始め多くの国々が中絶薬の遠隔診療を開始しました。アメリカのFDAも、2021年12月16日20年にミフェプリストンの対面処方要件を削除してオンライン診療を許可し、認定臨床医に加えて認定薬局でも薬を処方できるようになったのです。この規制緩和の動きを一気に加速化させたのが、今年1月3日にFDAが発表した新しい方針です。処方箋はまだ必要だとされているものの、中絶薬を受取ることができる薬局が大幅に拡大され、自宅に送付してもらうことも可能になったことでアクセスの幅が大きく広がったのです。