リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

心理的苦痛の程度:希望出産<中絶<養子縁組<希望しない出産 日本で研究結果

意図しない妊娠が心理的苦痛に及ぼす長期的影響:大規模サンプル回顧的横断研究(原文は英語)

Long-term influence of unintended pregnancy on psychological distress: a large sample retrospective cross-sectional study

ICWRSA Newsletter: 19 January 2023


Archive of Women’s Mental Health 28 October 2022;25:1119–1127. Long-term influence of unintended pregnancy on psychological distress: a large sample retrospective cross-sectional study.

仮訳します

「意図しない妊娠が心理的苦痛に及ぼす長期的影響:大規模サンプルによる回顧的横断研究」
サキナツ、イケダマリ、ニシダイスケ著


概要
 本研究では、意図しない妊娠をした女性における出産の決定と長期的な心理的苦痛との関連について検討した。2021年7月に代表的な研究パネルから選ばれた女性を対象にオンライン調査を実施した。意図しない妊娠を経験した参加者のうち、出産の意思決定を、①希望出産、②中絶、③養子縁組、④望まない出産に分類した。1年以上前に出産を決定した参加者を対象とした。心理的苦痛(ケスラー6)を従属変数とし、教育、配偶者の有無、決断からの年数、最初の妊娠の年齢、意図しない妊娠時の経済状況、意図しない妊娠時に相談した人の数を共変数としてANCOVAを実施した。同じ共変数を調整することで、苦痛が大きい(K6≧13)場合のロジスティック回帰分析も実施した。合計47,401人が研究に参加した。研究の1年以上前に意図しない妊娠を経験した女性を分析対象とした(n = 7,162)。心理的苦痛は、希望出産で最も低く、中絶、養子縁組、希望しない出産で増加した。調整モデルでは、中絶は、養子縁組および望まない出産の両方よりも低い苦痛のスコアと関連していた。希望出産と比較して、養子縁組および希望しない出産は、有意に高いレベルの苦痛を示した(それぞれ、調整オッズ比 [aOR] = 2.03 [95% CI 1.36-3.04], aOR = 1.64 [95% CI 1.04-2.58]).心理的苦痛に対する長期的な影響は,意図しない妊娠における出産の決定によって異なっていた.医療従事者は、このような意図しない妊娠の経験が女性の精神的健康に及ぼす隠れた影響に注意する必要がある。


 まとめると、本研究では、中絶は養子縁組と望まない出産の両方よりも低い心理的苦痛と関連していることが明らかになった。