リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

中絶薬の基本

経口中絶薬を使うとどうなるか


 経口中絶薬の「経口」とは口から服用することを意味しています。メフィーゴパックは2種類の薬を組み合わせたもので、第1薬のミフェプリストン1錠は水と一緒に飲み込みます。第2薬のミソプロストールは、第1薬の服用後36~48時間に、左右の頬と歯ぐきのあいだに2錠ずつ入れて30分間そのままにしておき、薬が自然と溶けるのを待ちます。30分間後、まだ残っているものがあればそのまま、あるいは水と一緒に飲み込んでください。実は、第2薬のミソプロストールは経腟――膣の中に薬を入れて自然と溶けるのに任せる方法――で使うこともできます。でも最近は、感染のリスクがより少ない経口投与が一般的になっています。


 第1薬のミフェプリストンは、妊娠を持続させるために必要なホルモンを止める薬で、これを服用することで妊娠は終了し、子宮壁から妊娠産物がはがれ落ちます。第2薬のミソプロストールは子宮の筋肉を収縮させる薬で、はがれ落ちた妊娠産物を子宮から外に押し出します。この時、月経痛に似た痛みがあります。実は、月経の時に痛みがあるのも、経血を膣から外に押し出すために子宮の筋肉が収縮するためです。妊娠週数にもよりますが、中絶薬を使った時の痛みは通常の月経より強いことが多く、人によってはかなり辛かったと言う人もいますが、一過的なものなのでさほど心配はありません。イブプロフェンなどの痛み止めを使っても構いません。リラックスできる環境で、湯たんぽでお腹を温めながらソファの上で丸まっているのが良かったという経験者もいます。


 第2薬を服用してから徐々にお腹の痛みが強くなってきて、出血が始まります。今回の経口中絶薬が使用可能なのは妊娠9週0日目までで、まだ「胎芽」と呼ばれる段階です 。多量の血液の中にところどころ血の塊が見えるくらいで、ほとんど姿を見分けられないくらいです。妊婦向け雑誌にあるような「胎児」の写真やイラストは、あたかも最初から「小さな人間」がいるように見えますが、実際にはまだ皮膚も形成されていない状態です。海外でも、中絶薬を使ってみた女性から「プロライフ派からベビーだと脅されてきたけど、出てきたのはただの血の塊にしか見えなくてほっとした」といった証言もあります。


 もちろん、まだ目に見えないくらい小さいからどうでもいいと言っているのではありません。ただ、そうした儚い存在を「赤ちゃんを殺す」ことと同等にして女性たちを責めるのは、あまりに実態とかけ離れているのではと思うのです。