リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

すべて、人権の問題です!

藤田早苗著『武器としての国際人権 日本の貧困・報道・差別』

引用する(p.19)。

 人権について国連の人権高等弁務官事務所は次のように説明している。

 生まれてきた人間すべてに対して、その人が能力・可能性を発揮できるように、政府はそれを助ける義務がある。その助けを要求する権利が人権。人権は誰にでもある。
人権とは? (OHCHR: 国連人権高等弁務官事務所) - YouTube

 つまり人権の実現には、政府が義務を遂行する必要があるのだ。
 その義務は三つある。

① 人がすることを尊重し、不当に制限しないこと:「尊重義務」(respect)。
② 人を虐待から守ること:「保護義務」(protect)。
③ 人が能力を発揮できる条件を整えること:「充足義務」(fulfil)

さらに引用する。(p.20)

「人が能力を発揮できるように助ける政府の義務」を具体的に規定していいるのが、本書で取り上げる各種の国際人権条約だ。

その実施状況を監視する=条約委員会
果たすべき義務の内容解説=一般的意見(一般勧告とも呼ばれる)、各種報告書、各国への勧告


ところが問題は:

  • 日本では「政府に義務がある」という点が十分理解されていない。
  • 政府が条約について独自の解釈を行い、勧告を無視し続けている。
  • たとえば、日本政府は二つの人権規約(自由権規約社会権規約)を含む国際条約を批准していながら、国民が人権侵害を国連にじかに訴えることができる「個人通報制度」を可能にする「選択議定書」をひとつも批准していない。
  • 日本には政府から独立して独自の調査権限をもつ国内人権救済機関が設立されていない。(日本政府は法務省管轄下の人権擁護委員制度で足りるとしている。)


※もっと問題なのは2013年6月に当時の安倍政権は、「条約機関の勧告には法的拘束力がないので従う義務がない」という閣議決定をしたこと⇒「人権条約を批准するということは(国として)自発的に条約の規定に従うと約束すること、審査を受け、出された総括所見を実施することにも責任を負うということ」なのに責任放棄したことになりまた日本国憲法の第98条「日本が締結した条約について、国には誠実に遵守する義務がある」にも反する。


まだまだ問題山積ですが、日本で「人権が守られていない」のは「政府の側に守る気がない」ためであり、それはひいては「国民の人権などどうでもいい」というかつて戦争を引き起こした時と変わらないメンタリティをもつ人々がこの国のリーダーであるという恐ろしい状況が今も続いているのです。