審議結果報告書 令和5年4月26日 医薬・生活衛生局医薬品審査管理課
[販 売 名] メフィーゴパック
[一 般 名] ミフェプリストン、ミソプロストール
[申 請 者 名] ラインファーマ株式会社
[申請年月日] 令和3年 12 月 22 日
[審 議 結 果]
令和5年1月 27 日に開催された薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会において、本品目を承認して差し支えないとされ薬事・食品衛生審議会薬事分科会に上程することとされた。
令和5年4月 21 日に開催された薬事分科会において、以下の取扱いが行われることを前提に承認して差し支えないとされた。
緊急対応体制については、適切な使用体制のあり方が確立されるまでの当分の間、入院可能な有床施設で入院または外来(院内待機を必須)とすること及び「適切な使用体制のあり方が確立されるまでの当分の間」については、市販後に十分な調査研究を実施し、適切な医療連携体制のあり方について評価を行い、その結果に基づき検討・判断することを通知で規定する。
流通・使用管理については、製造販売業者及び各医療機関から、毎月、それぞれ販売数量及び使用数量(中絶件数)を都道府県医師会に報告させるよう、手順書を定めて管理することを求め、製造販売業者には承認条件における「必要な措置」として規定する。都道府県医師会においては、双方からの報告内容の整合性を確認するなどの監督を求める。
正しい情報提供の充実を図るため、申請者は母体保護法指定医師向けの資材(適正使用ガイド)を作成するとともに、厚生労働省は国民向けの適切な情報提供(HP の作成等)を行う。
本品目は生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、再審査期間は8年、ミフェプリストンの原体及び製剤並びにミソプロストールの製剤はいずれも劇薬に該当するとされた。
[承 認 条 件]
1. 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
2. 本剤が母体保護法指定医師のみにより使用されるよう、関連団体等と連携して流通等の管理を実施することも含め、必要な措置を講じること。
審査報告書
別紙 p.76~p.80
審査報告(2)
令和 4 年 11 月 8 日
申請品目
[販 売 名] メフィーゴパック
[一 般 名] ミフェプリストン/ミソプロストール
[申 請 者] ラインファーマ株式会社
[申請年月日] 令和 3 年 12 月 22 日……中略……
3. 総合評価
以上の審査を踏まえ、機構は、下記の承認条件を付した上で、以下の効能・効果及び用法・用量で本品目を承認して差し支えないと判断する。なお、本品目は新有効成分含有医薬品及び新投与経路医薬品であることから、再審査期間は 8 年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、ミフェプリストンの原体及び製剤、並びにミソプロストールの製剤はいずれも劇薬に該当すると判断する。
ラインファーマ社から頂いた回答
Date: 2023年6月9日(金) 16:52
Subject: お問い合わせありがとうございました。
……略……劇薬していの背景は、既に別の効能・効果でサイトテック錠の商品名で承認されているミソプロストールが劇薬指定されていることから、ミフェプリストン及びミソプロストールからなるメフィーゴ(r)パック(商品名)も劇薬指定となりました。
Date: 2023年6月10日(土) 8:51
Subject: RE: お問い合わせありがとうございました。……中略……
毒薬・劇薬ですが、ご存じのように日本には下記の指定基準はあり、また弊社のデータは、ご覧頂いているようにPMDAのホームページに公開となっています「1.10 毒薬・劇薬の指定審査資料のまとめ」。
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000014658.pdf
私から同社に送った苦情の一部。
さっそくのご回答ありがとうございます。ただ、当方の問い合わせのお答えにはなっていないように存じます。
ミソプロストール(サイトテック)単体が劇薬とされたのは、妊婦に使用した場合に流産をする可能性があるためだったのではないのでしょうか。もしそうだとすれば、中絶薬として用いる場合には「流産をする」のは効用であり、危険な副作用ではないはずですから、中絶薬として用いる場合にも「劇薬」として指定しているのは理解できません。
なおご説明通り(用途の違いには目をつぶって)、従来劇薬に指定されてきたミソプロストールがセットに含まれているために、メフィーゴパック全体も劇薬なのだという説明は、まだしも理解できますが、実のところ、審査報告書ではミフェプリストン単体も劇薬とされていました。となると、御社のセットに含まれているミフェプリストンの小箱にも劇薬のマークが付いているのでしょうか?
私は、ミフェプリストンとミソプロストールの両方に共通の問題である「催奇性」が劇薬に指定された理由(のひとつ)ではないかと推測しております。もしそうなのであれば、御社の情報提供は不十分です。これら2薬の「催奇性」を安全に管理するためには、薬の服用者に2つの情報を与える必要があります。1つ目は「いったん服用を始めたら中絶を完遂させる」こと、2つ目は「中絶完了後すぐに妊娠する可能性があるので次の月経までは避妊をしっかり行う」ことです。理由はご存じでしょう。当事者にとって、これらの情報は重要です。
また、御社の一般向け資料は、データの出所がまちまちで、誤解を抱かせるような表現も多々あり、誤植も各所に見られるのが残念です。
たとえば、日本国内の第三相試験の結果(大須賀譲、2021で確認)では、120例のうち重篤な有害事象が出たのは3.3%(4例7件)、そのうち因果関係あり(副作用)とされたのは0.8%(1例2件:不完全人工流産、失血性貧血)です。おそらくこの小規模な試験で生じた1例に基づいて、「重度の子宮出血 0.8%」と表記してしまっては、10万回行われたら800回も起きる重大事象なのかと受け止められます。一方、英国で2000人を対象とした試験では、輸血3名(0.15%)の副作用があったとされており、オーストラリアで15,008例について行われた臨床試験でも多量出血(haemorrhage)は17件(0.13%)でした。これらと比較しても、120件中1件=0.8%は5〜6倍にも達し、統計的な誤差が大きすぎます。
それ以外の「重大な副作用」として挙げられているものは、すべて「頻度不明」として中途半端に様々な情報を加えて並べられており、結果的に、非科学的で利用者に不安を与えてしまいます。「頻度不明」な副作用がいくつも並べられているのでは「重大な副作用に見舞われる可能性は高いのではないか」といった誤解を招きますから、「まれ」な例としてただ列挙すればいいのではないでしょうか。また、医療機関の診察を受けるべきなのは、どのようなタイミングでどのような症状がある時なのかをもっとしっかり書くべきです。
たとえばカナダの添付文書*1では、次のような記載(拙訳です)が見られます。
ミソプロストール服用後24時間以上経過して、腹痛や不快感があったり、発熱の有無にかかわらず、脱力感、吐き気、嘔吐、下痢などの「不調がある」場合は、遅滞なく医療専門家に連絡する必要があります。
いつ、どのような症状が、どのような条件で(発熱の有無は無関係)、何が起きた場合が「緊急事態」であるのかが、素人でも判断しやすい内容になっていると思います。いたずらに利用者を脅すのではなく、利用者がどのような場合に「緊急事態」なのかが判断できるようにしておくことで、御社の薬を安心して利用できるような情報提供を心掛けていただきたいと思います。そうすれば、利用者もおのずと増えていくでしょうし、御社にとっても利益につながるのではないでしょうか。
また、中絶薬を利用する当事者たちの「メンタルヘルス」を守るような資材もぜひ開発していただきたいと思います。
サイトテックのインタビューフォームをダウンロードできるページ
インタビューフォーム
(p.41)
X.管理的事項に関する項目
1.規制区分
製 剤:劇薬、処方箋医薬品(注意-医師等の処方箋により使用すること)
有効成分:毒薬
さらに先述の「カナダの添付文書」には、次のような記述も見られる。
• there is approximately a 2.7% to 5.1% chance that the course of treatment will not be fully effective, in which case you will need to have a surgical procedure to complete the abortion. If you have a continuing pregnancy and decide to keep the pregnancy, foetal malformations from the use of mifepristone or misoprostol may occur.