日母アワーより
平成15年2月17日【10代の人工妊娠中絶についてのアンケート結果から】日本産婦人科医会医療対策委員会委員 幡 研一
考察部分を紹介する。
【考察】
1.性教育について
今回の調査で明らかなように10代の妊娠中絶患者は16歳以降急激に増加して、おり、同様のことは相手の男性についても言えました。
このことから、性教育はこのような事態の起こる以前の年齢、少なくとも中学生になったら男子生徒・女子生徒双方に対して行われる必要があると思われます。
避妊については女性自らが積極的に避妊している人は殆どなく、今回の妊娠についても相手がコンドームをつけなかった等、男性まかせであります。
また、避妊の方法もコンドームや膣外射精等不確実な方法を選択しております。
避妊知識の入手方法は学校が最も多く、以下 雑誌・TV・友達からでありますが、詳しく知りたいと答えた人が56.7%もおり、従来の教育では不充分と考えられました。2.10代女性の出産・育児支援
少子化が社会問題となっておりますが、その原因の第一は何と言っても、未婚率の上昇と晩婚化であります。
今回の調査で産みたかったと答えた女性は16~18歳で38.2%、19歳で41.8%おり、産みたくないと答えた女性は夫々19.5%、14.7%であり、相当数の10代女性が産みたかったが、止むを得ず人工妊娠中絶を選択している状況が明らかになりました。
中絶の理由としては経済的理由が最も多くありましたが、若すぎる・未婚のため・親の反対という理由も多く見られました。出産育児に対する経済支援、未婚であっても産みたい女性には、産めるような環境を整える体制や、シングルマザーに対しての社会全体の理解が必要であります。また、晩婚化による高齢出産のリスクを考えれば、10代での妊娠出産支援の方がより少子化対策には有効であると思われます。
政府は平成14年9月少子化対策プラスワンを発表しました。その中では従来の子育てと仕事の両立支援だけではなく、男性の働き方の見直しにも言及し、男性の育児休暇取得等を10%まで増加させたいとしております。
今回の調査結果によると、こうであれば中絶しないで済んだ理由のトップは、育児と学業の両立であります。このことより考えると大学等における育児休学制度の制定や、学生を対象とした公的保育施設の設置等、学業と子育ての両立支援も必要であると思われます。