リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

12週未満の妊娠中絶胎児の取り扱いについて

平成17年2月14日放送  日本産婦人科医会常務理事 栃木 明人

日産婦医会アワー 平成17年放送分 

 母子の生命健康を保護するとともに,女性の健康を保持・増進して,国民の保健の向上に寄与することを目的とする,母体保護法指定医師やこれに賛同する産婦人科医師等により組織されている、日本産婦人科医会発行の指定医師必携には,母体保護法による人工妊娠中絶について記載があります。そこには人工妊娠中絶の適応などの説明とともに人工妊娠中絶後の注意と指導の項目に,排出内容とくに胎児の取り扱いは慎重に行う事として明記してあります.その中には,妊娠12週未満の胎児は,指定医師が処置することになっているが,これの処置は特に留意し,粗雑に陥らぬように注意する.妊娠12週以後の排出胎児は死産届による埋葬許可書をとらせ火葬させる.人工妊娠中絶実施後の妊娠12週未満の死胎児を含む胞衣の取り扱いについて,各都道府県の胞衣取り扱い条例の有無に拘わらず,分娩や自然・人工流産に伴う胎盤などの取り扱い,とくに妊娠12週未満の場合の子宮内容物についても,これをすべて胞衣の一部として処理することが必要であり,胞衣取り扱いを許可されている専門業者に委嘱して丁重に処理すべきものである.として、いわゆる胞衣の取り扱いについて示しています.

 これに関連して、長年問題となる事柄はありませんでしたが、平成16年7月このような注意事項の遵守を理解している母体保護法指定医師によって,人工妊娠中絶胎児の不適切な処理についての報道がありました。この医師については中絶胎児を一般廃棄物として排出していたとして廃棄物処理法違反で逮捕され捜査が行われました。結果として、人工妊娠中絶に関して中絶胎児の処理についての問題が残りました。


いわゆる「伊勢崎クリニック事件」ですね。Livedoorのサイトに日経新聞の記事が載っていました。

伊勢佐木クリニック、半年で約120の中絶胎児廃棄か
 横浜市産婦人科伊勢佐木クリニック」(廃業)が中絶胎児などを事業系一般ごみとして廃棄していた事件で、同クリニックでは今年1―6月に計約120件の中絶手術をしていたことが15日、神奈川県警生活経済課の調べでわかった。いずれも中絶胎児は一般ごみと一緒に廃棄されたとみられる。

 調べによると、元院長の原田慶堂容疑者(62)は今年1―6月、中絶胎児などを横浜市内の業者に処理委託した際、文書で数量や内容を通知しなかったとして、廃棄物処理法(委託基準)違反容疑で逮捕された。同課が同クリニックから押収したカルテなどを精査したところ、今年1―6月に124件の中絶手術が行われたことが判明。胎児は5週未満―10週で、いずれも外から中が分からないように四重にしたビニール袋に入れられ、事業系一般ごみの指定袋にごみと一緒に捨てられたという。

2004年9月16日 日経新聞

以下は日母アワーの続きです。

 日本産婦人科医会では直ちに各都道府県支部における胞衣および産汚物に関する条例の有無について調査を行いました。条例が「ある」と回答したのは7都道府県と1市町村で、2県には関連する通知などがあるとの回答がありました。

 日本産婦人科医会の調査と同時期の平成16年7月から8月にかけて、厚生労働省環境省合同の「妊娠4か月未満の中絶胎児の取り扱いに関するアンケート調査」が、都道府県及び保健所設置市の合計104の医療・衛生行政担当課および廃棄物行政担当課宛で行われました。調査内容は、妊娠4か月未満の中絶胎児の取扱いに関して、条例の有無、火葬場での焼却許可を与える制度の有無、廃棄物処理業者が取り扱うことの有無、都道府県及び保健所設置市の廃棄物処理課による妊娠4か月未満の中絶胎児の取扱いに関する指導の有無の4点についてでした。
調査結果の概要は次のごとくでした。中絶胎児に関する条例の有無については、独自の条例を制定しているのは、日本産婦人科医会の調査結果と同じ7都道府県および4保健所設置市で全体の10.6%でした。具体的な条例の内容としては、許可を受けた収集処理業者による取扱いを定めたもの、火葬場での取扱いを定めたものなどが見られました。条例が「ある」と回答した自治体で、条例に基づく許可業者が無い自治体もありました。

 中絶胎児に関して火葬場での焼却許可を与える制度の有無については、28道府県では1つ以上の市町村に制度があり、35保健所設置市にもその制度がありました。また制度はないが依頼があれば受け付けるとしたのが、8都道府県と3保健所設置市の10.6%でありました。
 中絶胎児を廃棄物処理業者が取り扱うことの有無については、取り扱うことが「ある」のは21県および11保健所設置市で、全体の30.8%でした。また、「ない」としたのが57.7%、「不明」が11.5%でした。
 廃棄物担当課による中絶胎児の取扱いに関する指導の有無については、指導が行われているのは3道県および3保健所設置市で全体の5.8%でした。このうち、火葬場で取り扱うよう指導が行われている自治体は4か所、胞衣・産汚物等に係る条例に基づくよう指導が行われている自治体は2か所でした。

 アンケートによる調査結果をうけ、平成16年10月12日付けで、厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課長から各都道府県および保健所設置市の母子保健主管部長宛に、「妊娠4か月未満の中絶胎児の取扱いに関する調査結果等について」とする通知が発せられました。それには、中絶胎児については、妊娠4か月未満であっても、社会通念上、丁重に取り扱うことが必要であることから、今後、妊娠4か月未満の中絶胎児の取扱いについては、今回の調査により明らかとなった、次の3つの各自治体における取扱いを参考として、市町村への周知指導等を含め適切な対応をしていただくようお願いします。また、すでに条例を定めている自治体においても、その適切な運用に努められるようお願いします。とありました。その3例の取扱い参考は次のごとくです。

胞衣・産汚物に係る条例を定め、この条例により許可を得た収集処理業者が、医療機関から妊娠4か月未満の中絶胎児を廃棄物とは別に収集し、許可をうけた処理場で焼却する。
胞衣・産汚物に係る条例を定め、この条例により許可を得た収集業者が妊娠4か月未満の中絶胎児を収集し、火葬場で焼却する。又は、この条例により医療機関が火葬場で焼却する。
市町村の指導等により医療機関が妊娠4か月未満の中絶胎児を火葬場で焼却する、などです。
 これに関連して、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課適正処理・不法投棄対策室長から各都道府県・各保健所設置市の廃棄物行政主管部長あてに、厚生労働省からの通知を参考にして、妊娠4か月未満の中絶胎児の適切な取扱いが行われるよう、廃棄物処理業者等に対し、さらに都道府県にあっては市町村廃棄物行政主管課に対し周知するようお願いする。とする通知がありました。