リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

避妊薬はビリ、緊急避妊薬はラスト6か国、中絶薬は95番目

世界における日本のリプロケア薬承認の遅れの裏に女性への無関心と侮蔑がある

日本で低用量避妊薬が承認されたのは1999年で、国連加盟国189ヶ国中で最後だった。
緊急避妊薬専用薬(レボノルゲステロル)が承認されたのは2011年で、ラスト6か国の中から一抜けだった(残されたうちイランとペルーは2013年までに承認*1イラクアフガニスタンは今でも輸入薬のみ、北朝鮮は今も全面禁止らしい)*2

経口中絶薬は95番目でOECD38ヶ国中33番目。OECDで未認可なのは、ポーランド、トルコ、エストニア、韓国、コスタリカ。コロナ禍を経て、国際産婦人科連合が「自己管理中絶」(クリニックに行かずにオンライン診療で処方された薬を自宅に送付され、当事者が服用・結果判断)の恒久化を宣言したのに、日本では母体保護法指定医師の厳重管理を受けて面前服用、入院または胎嚢排出まで院内待機)で10万円、配偶者の同意は通常の外科的中絶同様に必要。

経口中絶薬メフィーゴパックの厳重管理のモデルは、中期中絶薬(坐剤)のプレグランディンだが、この薬はWHOの「安全な中絶」に指定されてもおらず、ほぼ日本でしか使われていない。非常に高額(1個4000円を複数回使用)。海外ではこの薬の代替にミソプロストール(メフィーゴパックの第2剤)が使われている。プレグランディンは冷蔵管理が必要だが、ミソプロストールは室温管理可能で、しかも安い(1個数十円で、1回分4個使用で100円程度。複数回使ってもたかが知れている。)

しかも、ミソプロストールには頸管拡張作用があるため、プレグランディンのように事前にラミナリアで頸管拡張を行う必要はない。ラミナリアによる拡張はかなり痛いと言われており、WHOは初期妊娠中絶には使用しないことを推奨(中期中絶で、ミソプロストールだけでは拡張が難しい時だけ併用する)。なぜこんな変な運用にして、女性たちを苦しめるのか……。

経口中絶薬パック(ミフェプリストンとミソプロストール)を使うと、流産させた胎児が生誕することはないのだが、プレグランディンだけではそれが起こりうる……海外では、ミフェ+ミソで中期中絶も安全に行えると判明する以前は、医師がD&Eと呼ばれる外科的「手術」で中期中絶を行うのが標準だった。女性たちに人工流産させる「分娩法」ではなく、麻酔をかけておいて医師が辛い仕事を引き受けていたのだ。では、なぜ日本では「分娩法」が使われてきたのか……もしかしたら、中期で外科的中絶を行った場合は「出産育児一時金」をもらえないのか? いや、そういった「決め事」をしていないような気がする。

プレグランディンは「母体保護法指定医師が」「治療的流産」を行う場合にのみ使用可能とされている。治療的流産というのは、かなり古い言葉で、中絶が厳禁されていた19世紀~20世紀初めの欧米で、「妊娠を続けていくと死んでしまう」との診断をつけて(お金で買える場合もあったようだ)、例外として合法的に流産(中絶)させることを意味していた。

日本産婦人科学会や日本産婦人科医会は「治療的流産」の定義をしていないようだ。つまり、母体保護法指定医師が「これは治療的流産」と決め込めば、合法的に中期中絶を行える仕組みになっている。

そんな実態の中で、放置されているのが女性たちの心身のケアであり、尊厳であり、人権ではないか。

薬の導入が遅れているだけではなく、日本の中絶医療は女性の尊厳を守る医療になっていないという意味でも、あまりにも「後進的」である。戦後四半世紀にわたって、日本の中絶医療はほとんど変わってこなかった。そのツケを負っているのは、今、中絶を必要としている若い人々で、こんなことを今後もずっと続けていっていいわけはない。

海外での中絶医療と法の進展は、「人権」、「健康(公衆衛生)」、「社会的公正(平等)」、「医学の進歩(安全な中絶)」に支えられてきた。日本には、そのどれもが欠けているのが実態だ。まずはそれを知ってほしい。