リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

ヒトにおける生殖コストの証拠:高い生涯生殖努力を払った閉経後女性は酸化ストレスが高まる

PLoS One. 2016; 11(1): e0145753., Published online 2016 Jan 13. doi: 10.1371/journal.pone.0145753

ポーランドアメリカの研究者らの共同研究で、子どもを多く出産した女性ほど、閉経後の老化と早死にの傾向がある可能性が初めて示唆された。

Evidence for the Cost of Reproduction in Humans: High Lifetime Reproductive Effort Is Associated with Greater Oxidative Stress in Post-Menopausal Women

アブストラクトを仮訳します。

 生活史理論では、エネルギーが制限された環境では繁殖努力と母親の生存率がトレードオフになると予測されている。しかし、エネルギー的に厳しいヒト集団から得られた母体死亡率と繁殖努力の正の関連性に関する実証的証拠はまちまちであり、この関連性の根底にある生理学的メカニズムも十分に理解されていない。われわれは、妊娠・授乳期を繰り返すことで有酸素性代謝が増加し、酸化ストレスが増加する結果、体力の低下、病気への脆弱性、老化の加速につながると仮定した。そこで、生涯の妊娠期間と出産回数が、閉経後の女性における酸化ストレスのバイオマーカーや抗酸化防御酵素のレベルに関連すると予測した。我々の仮説は、DNA酸化損傷のバイオマーカーである8-OHdGレベル(β = 0.21、p<0.05)、抗酸化防御酵素Cu-Zn SODレベル(β = 0.25、p<0.05)、および生涯妊娠回数の間の正の直線的関連によって支持された。さらに、年齢や健康状態とは無関係に、妊娠率や分娩数が高い閉経後女性(生涯妊娠回数が4回以上)は、妊娠率や分娩数が低い女性(生涯妊娠回数が4回未満)に比べて、8-OHdGの濃度が20%高く、Cu-Zn SODの濃度が60%高かった。この結果は、酸化ストレスがヒトにおける生殖努力のコストである可能性を示す初めての証拠である。