日本人女性は置き去り……
日本の国際協力NGO「ジェンダー主流化ガイドライン」
令和4年度 NGO研究会 「国際協力におけるジェンダー主流化に向けた課題と実践」
「発刊によせて」とあるので2022年度から始まった取り組みらしい。
発刊に寄せて
特定非営利活動法人国際協力 NGO センター( JANIC )
事務局長 水澤恵
国際社会では過去20年以上にわたりジェンダー主流化の取り組みが推進されてきました。ジェンダー主流化とは、「政策・事業・組織運営のすべてのプロセスにおいてジェンダーの視点に立った対応を行う、ジェンダー平等達成のための手段」と本ガイドラインで定義づけています。
グローバル課題に取り組む私たち NGO/NPOは、ジェンダーや多様性に配慮した活動を率先して実践する立場にあります。組織および事業におけるジェンダー平等の推進は、PSEAH(性的搾取・虐待・ハラスメントからの保護)の取り組みとともに、人権、アカウンタビリティ、危機管理の観点から、今まで以上に求められるようになっています。
2021 年に国際協力 NGO センター (JANIC)の会員団体によりジェンダー平等推進ワーキン グ グ ル ー プ が 立 ち 上 が り、全 国 のNGO/NPO を対象にしたアンケートでは、約3 割が組織運営においてジェンダー平等と多様性を推進する取り組みを行っていない・取り組み過程であり、セクシュアルハラスメントや PSEAH に関わる規定がある団体は半数程であることが分かりました。その理由としてはリソース不足が最も多くあげられますが、問題意識の欠如や、NGO/NPO 業界全体の指針や取り組みの仕組みがないことも原因として考えられます。
本ガイドラインは、日本の国際協力関係者向けに、国際的な潮流を踏まえ、事業と組織運営の両面において目指す方向性を示しています。
JANIC 自身も、自ら組織内のジェンダー平等に関する意識を改革し、ジェンダー平等のための取り組みを推進します。そして、ネットワークの強みを活かして、研修の継続的実施、専門家のサポート体制づくり、ルール策定のアドボカシーの取り組みをリードしていきます。
最後となりましたが、外務省国際協力局民間援助連携室主導による「令和4年度NGO研究会」のテーマとして「国際協力におけるジェンダー主流化に向けた課題と実践」を採択いただき、ジェンダー平等の取り組みに関する学びと普及の機会をいただけたことに感謝申し上げます。また、本ガイドラインの制作にご尽力いただいたプラン・インターナショナル・ジャパンおよびジェンダー平等推進ワーキンググループの皆様に心よりお礼を申し上げます。
こんな記述もある。
ガイドラインの背景と意義
1) ジェンダー主流化の政策枠組み
開発協力の分野では、1970 年代頃より女性の開発への参加と地位向上が重要視されるようになり、「開発と女性 (WID: Women in Development)」という理念が生まれました。1980 年代には、女性のみを対象にした WID の取り組みには限界があると指摘されるようになり、より男女の不平等な関係性 や 役 割、格 差 を 生 む 社 会 構 造 を 変 え よ う と す る「ジ ェ ン ダ ー と 開 発(GAD: Gender and Development)」アプローチに変化しました。1995 年に行われた第 4 回国連世界女性会議(北京会議)の北京宣言で初めて、ジェンダー平等の達成を目的に、ジェンダーの視点に立って全ての分野の政策や事業の計画、実施、モニタリング、評価を行う「ジェンダー主流化」の概念が明記されました。
日本政府においては、以下のような政策枠組で開発協力分野におけるジェンダー主流化へのコミットメントを表明してきました。年 政策枠組み
2005 年 ジェンダーと開発(GAD)イニシアティブ(2003 年 ODA 大綱)
2015 年 女性・平和・安全保障(WPS)国連安保理決議に基づく行動計画
2016 年 女性の活躍推進のための開発戦略(2015 年開発協力大綱)
2016 年 持続可能な開発目標(SDGs)の実施指針及びアクションプラン(2017)2015 年に採択された持続可能な開発目標(SDGs)においては、ジェンダー平等は SDGs の目標 5 の
みならず、横断的な課題としてすべての SGDs に関連しています。「持続可能な開発のための 2030 ア
ジェンダ」の宣言部分には、「ジェンダー」という独立したパラグラフがあり、「ジェンダー平等の実現
と女性・女児のエンパワーメントは、すべての目標(SDGs)とターゲットにおける進展において死活
的に重要な貢献をするものである」とジェンダー平等の達成なくして持続可能な開発目標は達成でき
ないことを示しています。