リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

ICPD+25 ナイロビ会議について日本語で報じられていること

プラン・インターナショナルのニュース

「性と生殖に関する健康と権利」の25年とこれから~ナイロビ・サミット~|国際NGOプラン・インターナショナル 寄付・募金で世界の女の子を支援

2019年11月12~14日、ケニアの首都ナイロビで国際人口開発会議(ICPD+25、以下ナイロビ・サミット)が開
催され、世界から100カ国以上の大臣や政府関係者、13の国際機関と200以上のNGOが参加しました。

「性と生殖に関する健康と権利」が認識されてから25年
 今から25年前、1994年にカイロで開催された国際人口開発会議では、人口問題が政策としてだけではなく、個人の権利や幸福に基づいた、持続可能な開発テーマとして捉え直されました。会議の成果文書としてまとめられたカイロ行動計画で、妊産婦死亡の削減、ジェンダー平等、差別是正と包摂などとともに、「性と生殖に関する健康と権利」(以下、SRHR)が179カ国によって合意されたことは画期的でした。

 ナイロビ・サミットでは、妊産婦死亡率が約44%減少したことなど、カイロ行動計画の実施によって25年間で達成してきたことが称えられました。一方で、未だ1日あたり3万3000人の女の子が早すぎる結婚をし、800人が妊娠や出産で命を落としていること、そして年間400万人の女の子がFGMを経験していることが訴えられ、行動計画の実施を加速させることを国際社会に求めました。


サミット会場のケニヤッタ国際会議場

SRHRへの連帯を求めたエクアドルの女の子
 今回のサミットで象徴的だったのは、80を越えるイベントのほぼすべてに、世界中から集まった若者たちが参加したことです。若者たちのSRHRの課題は、政策的意思決定のプロセスへの若者の参画なくしては解決できません。プラン・インターナショナルのユースとして参加したルースさんは、母国のエクアドルで女の子が人身取引の被害に遭い、早すぎる妊娠や出産によって死に至っている状況を説明。特に先住民の女の子が、先住民であること、女の子であること、そして若いということによりこうした苦しみがさらに増幅されると語りました。こうした状況を変えるには、若者に避妊具を普及させ、性と生殖に関する保健情報にアクセスできるように、すべての人々が連帯していくことが必要だと訴えました。


多くの聴衆の前で連帯を訴えるルースさん
 
プランが果たすべき約束
 プランのCEOであるアンネ・ビルギッテ・アルブレクトセンは、カイロ行動計画の達成を目指して団体として果たしていくコミットメントを発表しました。


プランのコミットメント

プランのコミットメントを発表するプランCEO

 プランは、思春期の女の子と若い女性たちが自分たちのSRHRについて意思決定に参画できるように、女の子と女性のリーダーシップを促進させます
 2025年までに、すべての人々のSRHRを確実なものとするために政府、支援者、国際機関、コミュニティや宗教的リーダーへ働きかけ、早すぎる妊娠の削減に貢献します。取り組みは以下の3点を含みます。
 プランが活動するすべての地域で、性と生殖に関する保健情報とサービスにアクセス改善と暴力からの保護に焦点を当てた複数年のジェンダー平等を目指したSRHRのプログラムを展開します。
包括的性教育と年齢にかなった性と生殖に関する保健サービスが提供されるように政府に働きかけます。
WHOが定義する生殖可能年齢に、10~14歳の女の子も含めるように働きかけます。また、より若い子どもたちのニーズに応えられるように細分化されたデータ収集を政府に求めます。


不可欠な若者たちの参画
 若者の人口は、世界人口の半分を占めるといわれていますが、政策決定者である国会議員に占める割合は、2%と言われています。これでは、若者が求める政策を策定していくことは困難です。SRHRやジェンダーに基づく暴力は思春期の子どもや若者にとって身近な課題です。

アドボカシーオフィサー 澤柳孝浩職員からのコメント

若者の参画について議論する各国の若手国会議員

 ナイロビ・サミットには、特により困難な状況にあるとされてきたLGBTQの若者、障がいのある若者、先住民の若者が多数参加し、彼らがSRHRのみならず基本的な人権を保障するように国際社会に訴えていることが印象的でした。「Nothing about us without us(私たちのことを私たち抜きに決めないで)」とは、「障害者権利条約」が作られたときに障がいのある人々によって訴えられたスローガンでしたが、その精神が若者たちに受け継がれていました。
 サミットに参加したプランのユースたちは、自分自身に身近なSRHRやジェンダーに基づく暴力といった課題に取り組んできた経験を語ってくれました。ユースが力強い意志を示すたびに、聴衆で埋まった会場が拍手喝采に沸きました。国際社会は、若者たちの参画を確かなものとしながら、各国政府が約束を果たすために迅速に行動することを求めています。

 プランは、サミットで発表したコミットメントを果たすためにさまざまな関係者と引き続き協働していきます。また日本でも、この会議の成果や、国際社会が達成できていない課題を広く社会に発信し、ユースも含めた関係者と協働しながら日本政府への働きかけを強化します。

ジョイセフ

カイロ会議(ICPD)から25年~ナイロビサミット開催 | HOT TOPICS | 国際協力NGOジョイセフ(JOICFP)

カイロ会議(ICPD)から25年~ナイロビサミット開催
報告:ジョイセフ事務局長 勝部まゆみ
HOT TOPICS お知らせ レポート アドボカシー
2019.12.24

1994年にカイロで開催された国際人口開発会議(ICPD: International Conference on Population and Development)から25年となる今年(2019年)、11月12~14日の3日間、ナイロビ、ケニヤッタ国際会議場(KICC)で、ICPD25に関するサミットが開催されました。

ICPDは179カ国が参加し、これ以降、国際保健分野の基本原則、理念ともなる重要な合意がなされた国際会議でした。人口は、数の問題ではなく、一人ひとりの尊厳と生活の質に関する問題である捉えられ、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)がカップルと個人の基本的権利であること、また、両性の平等、女性のエンパワーメント、若者の性と健康の重要性などが成果文書であるカイロ行動計画に明記され採択されました。そして、翌年(1995年)、北京で第4回世界女性会議が開催され、その行動綱領に、リプロダクティブ・ヘルス/ライツは女性の基本的権利と明記されました。

この2つの会議の決定は、持続可能な開発目標SDGsにも踏襲されています。ジェンダーの平等と女性と少女のエンパワーメントなくしてSDGs達成はありえないほど重要であり、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)の推進なくして、ジェンダーの平等と女性・少女のエンパワーメントの実現もあり得ないとされています。



8300人が集結したナイロビで感じられた若者のパワー
ナイロビサミットは、国連人口基金UNFPA)、ケニア政府、デンマーク政府が共催し、170カ国の政府機関、市民社会、ユース団体、企業などから、約8300人が参加しました。会議では、過去25年間に妊産婦死亡が44%削減され、これは400万人の妊産婦の死亡を防いだことになるなど、これまでの進展を評価すると同時に、ICPD行動計画の一層の前進とSDGs達成に向けて、各国政府、国連・国際機関、NGO、企業、市民社会などが、改めてそのコミットメントを再確認し、強化することが求められました。

サミットでは、SRHRの残された深刻な課題である、次の3つのゼロを達成するというテーマが掲げられました。

家族計画サービスへのアクセスが満たされない状況をゼロに
予防可能な妊娠・出産による妊産婦の死亡をゼロに
児童婚などの有害な慣習とジェンダーに基づく暴力をゼロに
しかし女性と少女を取り巻く状況は未だに非常に厳しいものです。例えば①に関しては、世界全体で、家族計画を必要としている2億2000万人の女性にサービスが届いていません。②については、1日に800人の女性が予防可能な妊娠、出産、安全でない中絶が原因で、命を落としています。③の児童婚や有害な慣習、暴力に関しては、18歳未満で結婚する少女は、年1200万人、1日に3万3000人に上ります。さらに、年400万人の少女が女性性器切除(FGM)を経験し、3人にひとりの女性がジェンダーに基づく暴力を受けています。

約130のセッションでは、女性と少女、若者、ダイバーシティ(多様性:セクシュアルマイノリティー、先住民、少数民族障がい者、高齢者等)と、その人々を取り巻くSRHR、ジェンダー、エンパワーメント、イノベーション、資金調達等の環境や課題についての議論が、縦横無尽に展開されました。

会議全体を通して感じられたのは、登壇者が、当事者として、現場での経験、サバイバーとしての経験など、自分の経験を自分の言葉で語るセッションが多かったことです。また、様々な障壁を乗り越えるためには、法整備や政策が必要であることは言うまでもありませんが、施策をいかにコミュニティーまで浸透させるか、コミュニティーの指導者の意識と行動を変えるか、あるいは、多様な業界のインフルエンサーを巻き込んだ活動を展開するか、などが重要な鍵であるということです。そして、若者のパワーと発言力、発信力にも圧倒されました。若者への包括的性教育の重要性や、あらゆる側面で若者の声を反映し、決定プロセスへの参画の必要性が、早婚や若年妊娠、HIV/エイズFGMなどに対する危機感をもって語られました。未来を背負うのではなく、当事者として今を生きている、今を変えるのは自分たちだという若い世代の強い意思が会議の原動力になっていたと言っても良いかもしれません。

サミット会場では、参加国政府、参加団体等が、コミットメントを実際に口頭で発表する場も設けられました。ケニアケニヤッタ大統領はオープニングスピーチで「ケニア国内で行われている女性と少女の権利を著しく害しているFGMを2022年までに撲滅させる。そのための協定に、地元の宗教リーダー及び有識者とともに署名した。」と述べ、喝采を浴びました。実現を期待したいと思います。ジョイセフも、本会議場で、コミットメント発表の機会を得ました。コミットメント発表直後、あるアフリカの国の計画・経済開発大臣が、是非ジョイセフと連携して、女性の課題を解決していきたいと声をかけてくださったことは、大変うれしい出来事でした。


また、米国がSRHRに対する拠出を停止する中で、様々な国、機関から財政支援のコミットメントが発表されたことも注目されます。オーストリア、カナダ、デンマークフィンランド、フランス、ドイツ、アイスランド、イタリア、韓国、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェースウェーデン、英国政府およびEU等が合計約10憶ドルの支援、民間組織・団体のチルドレンズ・インベストメント・ファンド(CIF)、フォード財団、ジョンソン&ジョンソン、フィリップス、ワールドビジョン等が、計約80憶ドルを新たに創出すると表明しています。

そして、重要なことは、ICPD50が開催されることがあってはならない、ということ。この先25年を待たずに、ジェンダーの平等、女性、少女のエンパワーメントを推進し、誰一人取り残さずSRHRのサービスが受けられる社会の実現する、という決意でサミットは締めくくられました。


ナイロビ声明

  1. ICPD行動計画とSDGsおよびアジェンダ2030を達成する行動と資金調達への努力を加速し、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)実現の一環としてSRHRへの普遍的アクセスを達成する
  2. 家族計画サービスへのアクセスが満たされない状況をゼロに
  3. 予防可能な妊娠・出産による妊産婦の死亡をゼロに
  4. すべての若者が正しい知識と情報を入手し、自身でSRHRの選択を可能に
  5. ジェンダーに基づく暴力と児童婚やFGMなどの有害な慣習をゼロに
  6. ICPD行動計画の実現を推進するための国家予算配分と新しい資金調達の検討
  7. SRHR、ジェンダー平等などICPD行動計画を実施するための国際的予算の増資
  8. 人口ボーナスを活用するために、若者特に少女に対する教育、雇用、健康などへの投資
  9. あらゆる差別のない、平和かつ公正で包括的な誰も取り残さない社会づくり
  10. 正確なデータを入手するためのビッグデータシステムの構築
  11. 若者の健康とウェルビーイングに関する決定プロセスに若者を含める
  12. 非常事態下における基本的人権の確保と、SRHRの保証
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