リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

4月26日に書いた「男女共同参画基本計画,リプロダクティヴ・ライツを否定?」について,いったいどこが出所なんだろうと思っていたのだけど,調べがついた限りでは,2001年10月31日衆議院文部科学委員会から,2003年6月12日衆議院憲法調査会まで【2008年7月の時点で、2005年12月までと修正】,山谷えり子議員が「リプロダクティブライツ」および「性の自己決定権」への批判を繰り返していたことが判明。(参議院にも同様の発言をしていた議員さんがいるかもしれないけれど,今のところ見つけていません。)

たとえば,H15年6月6日の衆議院内閣委員会では,次のような発言をしています。

○山谷委員 リプロダクティブヘルス・ライツについての概念はカイロ会議で提唱されたわけでございますけれども、実は中身をめぐって、こんなはずではなかったとか、それはおかしいじゃないかというようなことが、議論がそれからもう延々と何年も続いていて、去年のニューヨークの国連総会では、リプロの文言を削除したらいいのではないかというような議論さえ行われているわけです。
 そんな中で、日本だけは非常にゆがんだ解釈が行われていて、出産は個人の決定というのが、女性の決定権があるように、そしてそれが世界的な流れであるというような解説がなされているということは、非常に憂慮すべきことだというふうに思っております。
 男女共同参画の市町村の条例についても、中絶の容認につながりかねないような表現の、性の自己決定権を明記したものが三十一市区町村でございます。これはもうカイロで決まったことです、世界の流れです、女性の自己決定権ですという、非常にラフな、大ざっぱな、間違った説明の仕方で、恐らく市区町村のレベルの方たちは余り細かいことを御存じないのかもしれません。その辺、やはり誤解を招かないような行政の指導というのが必要だというふうに思いますが、その辺、いかがでございましょうか。

山谷議員は,この2002年のニューヨークの国連総会の話をいろんなところで何度も持ち出しているのですが,どうやら事実は次のようなことらしい。

2002年5月に開催された国連の子供に関する特別総会で,ブッシュ政権は包括的性教育ではなく,思春期の若者向けに性的禁欲を勧める文言を強く要求し,リプロダクティブ・ヘルスケアに関する文言に反対した。ブッシュ政権はこの総会で,イラン,イラクリビアスーダンバチカンと歩調を合わせ,禁欲のみの思春期向けプログラムを導入するよう圧力をかけることには失敗したものの,包括的性教育について詳述した文章を最終文書から削除することに成功した。

http://www.siecus.org/inter/J_Pol_Rel_Opp_Guide.pdf(3頁のところ)

なおこの文書は,性教育,性の健康,セクシュアル・ライツに関する国民の声として過去40年間活動してきたSIECUS(米国セクシュアリティ情報と教育評議会)発行の日本語版「リプロダクティブ・ヘルス/ライツに対する宗教的・政治的反対を理解するためのガイド」です。

いずれ国連の記録で確かめたいですが,山谷議員の話とはだいぶ中身が違いそうですね。少なくとも,いわゆるプロライフの立場をとる国々が反対したのは,リプロダクティブ・ライツそのものではなさそうです。まさかとは思いますが,「リプロ」という都合のいい略語で,他の議員たちに「リプロダクティブ・ライツ」そのものが否定されたという印象を与えた?(偶然,山谷議員の発言を見つけて,そんな話を聞いたことがなかったので,びっくりして調べたのですが。おかげで今日も寝不足になってしまった……。)