讀賣新聞の「ES細胞研究推進派が勝利…住民投票でも保守敗北」という記事で,サウスダコタ州の“ロウ判決以後のアメリカで初めての中絶禁止法”が棄却されたことが,ついでのように扱われていました。
【ロサンゼルス=古沢由紀子】中間選挙が行われた7日、全米37州で、住民が提案した州法案などの是非を問う200件以上の住民投票が行われた。
民主党の躍進を背景に、宗教的な価値観が絡む注目の法案で、保守派が敗北するケースが目立った。
―中略―
人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁止する厳格な州法が全米の注目を集めていたサウスダコタ州では、同法の取り消しを求めた住民の提案が可決された。
(2006年11月8日23時58分 読売新聞)
ES細胞研究のことと一緒に取り上げられているのは,アメリカのプロチョイスは合法的中絶支持&ES細胞研究推進派,プロライフは中絶違法化支持&ES細胞研究反対派と明確に分かれているためである。(日本とは事情が異なる。)
北海道新聞は次のとおり。
中絶禁止法に「NO」 住民投票でも不信浮き彫り 米中間選挙 2006/11/08 23:41
【ワシントン7日枝川敏実】米中間選挙では、三十七州で二百七件を超す住民投票も行われた。州議会や知事が決めた決定を覆した投票結果が目立ち、政府や行政に対する草の根の不信感が浮き彫りとなっている。
サウスダコタ州の中絶禁止法の是非を問う住民投票では、同法の施行について55%が「NO」。一度、州議会が議決し、州知事が署名した法律の扱いをめぐり、議会はあらためて再審議する方向だ。
――後略――
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20061109&j=0026&k=200611084584
ただ,気になるのは,サウスダコタの中絶禁止法に反対するアメリカの“良識派”が「レイプや近親姦でも中絶が許されない」ことの問題性を強調することだ。(たとえば,2006/8/26のthe Washington Postの記事参照。)
古き良き“良識派”の中絶禁止法の改良を要求する運動によって,かえって「真の根本的改革への道が永遠に閉ざされる」恐れがあることを,1970年のリブの時代にルシンダ・シスラーLucinda Cislerは,「中絶と中絶禁止法」(ウルフの会訳『女から女たちへ〜アメリカ女性解放運動レポート』合同出版,1971 所収)で指摘していた。
サウスダコタ州の中絶禁止法のゆくえは,まだまだ目が離せない。