リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

受精卵取り違え事件

本日付の YOMIURI.ONLINEにあった記事です。

別人の受精卵で妊娠・中絶、医師が培養容器取り違え…香川

 香川県は19日、県立中央病院(高松市)で昨年秋、不妊治療中の20歳代の女性患者に、別の患者の受精卵を誤って移植する医療ミスがあったと発表した。

 受精卵を培養する容器を別の患者のものと取り違えたのが原因としている。妊娠した女性は、体外受精から約2か月後に人工中絶をした。受精卵の取り違えは、2000年に石川県内のクリニックで発覚したが、取り違えによる妊娠が明らかになったのは国内で初めて。

 県によると、同県在住の20歳代の女性で、昨年4月から同病院産婦人科不妊治療を開始。担当の男性医師(61)が受精卵の成熟状況を確認した際、誤って別の患者の受精卵を培養容器に戻し、気づかないまま同9月中旬に移植したという。

 男性医師は、同病院に約20年間勤務し、約1000例の体外受精を経験したベテラン。男性医師は病院に、「注意不足で、別の患者の受精卵を移植してしまった。非常に反省している」と説明しているという。

 女性患者側は精神的苦痛を与えられたとして、県に2000万円の損害賠償を求めて高松地裁に提訴している。
(2009年2月19日18時21分 読売新聞)

時事ドットコムでは次のように報じています。

不妊治療で受精卵取り違えか=20代女性に移植、人工中絶−県立中央病院・香川

 香川県は19日、県立中央病院(高松市)で昨年9月中旬ごろ、不妊治療のため体外受精を行った20代の女性に、誤って別の患者の受精卵を移植した可能性があるとして、人工妊娠中絶をする事故があったと発表した。
 病院側は女性に、受精卵を取り違えた可能性があることを説明し、謝罪したという。
 県によると、女性と夫は県を相手に約2000万円の損害賠償を求める訴えを高松地裁に起こした。
 県の説明によると、体外受精した受精卵を患者に移植するには数日間の培養が必要。女性の受精卵が入った複数のシャーレを培養器から取り出し、発育確認をして戻した際、担当の男性医師(61)が他の患者の受精卵と間違え、そのまま女性に移植した疑いがあるという。(2009/02/19-19:19)

毎日jpの記事は次のとおり。

体外受精:受精卵取り違え?20代女性中絶 香川の病院

 香川県は19日、県立中央病院(高松市、松本祐蔵院長)で昨秋、不妊治療中に体外受精をした20代女性の子宮に、間違って別人の受精卵を戻した可能性があり、妊娠9週目で人工妊娠中絶をしたと発表した。院内のマニュアルには事故防止についての記述はなかった。病院は厚生労働省に報告していない。女性と夫は県側を相手に、約2000万円の損害賠償を求める訴訟を高松地裁に起こした。

 記者会見した県側の説明では、産婦人科の男性担当医(61)が昨年9月20日、シャーレに入った受精卵を体内に戻し、10月7日に妊娠が確認された。シャーレには女性の名前は書いていなかった。

 女性はそれまでの体外受精に失敗していたが、この時は経過が順調だった。このため担当医は不審に思い、10月16日に取り違えの可能性に気付き、月末に院長に報告した。病院側は11月7日、女性に経緯を説明して謝罪。担当医は、夫婦から「誰の受精卵か調べられないか」と尋ねられたが、「6週間後に羊水検査をすれば分かると言われているが、6週間後なら中絶は母体に負担が大きい」と答えた。女性は「100%自分の子供なら産みたい」と言ったが、同月中旬に人工中絶した。

 米沢優・産婦人科主任部長(59)によると、担当医は受精卵を体内に戻す前、保存用の培養器から女性のシャーレを複数取り出し、いずれもふたを外して受精卵を検査する作業台に並べた。顕微鏡で調べるとほとんど状態は悪かった。顕微鏡の手前に一つ残っていたシャーレの受精卵を見ると、状態が良かった。このシャーレは、直前の検査で片付け忘れた別人のものだったとみられるが、担当医はそのまま培養器に保存し、その後、体内に戻してしまったという。

 米沢主任部長は「他の病院などでDNA鑑定が可能か分からないが、うちの病院では9週目で鑑定して特定するのは不可能だった」と釈明した。病院は、人工中絶手術で取り出した子宮の内容物のDNA鑑定など、取り違えの最終確認はしなかったという。

 担当医はこれまで約1000例を手がけるベテラン。【大久保昂】