リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

COVID-19と中絶

女性の権利を制限する動きも

COVID-19流行下で、女性の権利を守る国についてよくお知らせしていますが、女性のリプロダクティブ・ライツを制限する方向に進んでいる国もあります。

リトアニアでは保健相が次のような発言をして、フェミニストから猛反発を受けています。

(「妊娠した女性はどうすべきか」と問われて)「(女性たちは)自分の選択を見直すべき。」「家族たちや女性たちは責任をもって、非合法で自らの健康を損ねかねない方法を使わないようにすべきである。クリニックが妊娠中絶サービスを提供しない決断をしている場合には、今こそ、家族たちや女性たちが医師や心理師に相談し直して自らの決断を再考し、妊娠中絶をしないことを決断すべき時である。」

LITHUANIA – Minister of Health recommends keeping unwanted pregnancies: EPF responds

元はソ連圏だった国、中絶については緩いのではないかと意外だったので、Wikipediaリトアニアの中絶状況を調べてみたら、なんと! 少子化のために、近年、中絶を厳しく取り締まろうとの議論が行われていたというのです。日本にとって、他人ごとではありません。

カトリック教会の圧力が強く、ヨーロッパでもっとも厳格な中絶法をもつと言われているポーランドでも、これまではイギリスにトンボ帰りすることでかろうじて中絶を受けられていたのが、ロックダウンで困難になっています。おまけに、もし決行した場合には、帰国後の14日間の自宅待機まで課せられることになり、ますます実現性が遠のいているそうです。
In Poland, Abortion Access Worsens Amid Pandemic
ポーランドも以前は共産圏で中絶規制が非常にゆるかったにも関わらず、近年になって中絶規制の動きが強まった国の一つです。2015年には国会に中絶禁止法案が提出され、翌2016年には大規模な「ブラック・デモ」が行われたことは日本でも少々報じられていたかと思います。(昨年、堕胎罪違憲判決を獲得した、韓国でもポーランドへの連帯を示すために黒い服を着て集まる大規模な「ブラック・デモ」が行われました。)

何らかの危機に見舞われた時、人権が二の次に置かれてしまうことはたびたび繰り返されてきたし、女性の健康と権利は無化されてしまいがちです。

そればかりか、混乱に乗じて中絶を封じ込めようとする動きまで出ています。アメリカについてはすでにご存じの方が多いと思いますが、テキサス、オハイオミシシッピルイジアナオクラホマアラバマ各州では、中絶は「選択的医療」だと宣言することで、パンデミック下での中絶医療提供を停止させてしまいました。これに対して、家族計画協会は遠隔医療によって中絶薬を配布するシステムを構築すると共に、最高裁テキサス州を訴え出る訴訟を開始しています。
Activists are using Covid-19 to set limits on abortion around the world