リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

最新のベトナム中絶情報

More to Demand: Abortion in Vietnam

  • ベトナムは東南アジアでは最もリベラルな中絶政策をもつ。
  • 中絶が合法化されたのは1945年。
  • ベトナム政府は1960年代頃から中絶を基本的に社会公正の問題とみなしてきた。
  • ベトナム憲法リプロダクティブ・ヘルスを含むあらゆる側面及び条件で男女は等しい権利を享受すると宣言している。
  • 国家、社会、家族、及び国民は、母子に医療と保護を提供し、人口及び家族計画プログラムを実行する責務を有する。
  • ベトナム政府は1980年代より小家族を奨励するようになった。
  • 2006年の時点で避妊の普及率は67%、中絶数は年間50万件を超えている。
  • 中絶はMOHネットワークの医療施設で行われる。
  • 中絶サービスは3つの医療施設レベルで分けられ、(1)中央および県立病院では妊娠6週~18週までの中絶が行われているが、(2)妊娠6週~12週までなら地区保健所でも可能で、(3)妊娠6週までであれば地域診療所でも受けられる。
  • 胎児に障害がある場合、レイプの結果妊娠した場合、母親の生命が危険に晒されている場合は、妊娠22まで中絶を受けられる。
  • 中絶を合法的に行えるのは、医師、補助医師、MOH公認の訓練を受けた助産師である。
  • 一般に、中絶費用は第1トリメスタでVND40,000(US$4)から第2トリメスタのVND1,500,000(US$100)と幅が大きい。貧困地帯や遠隔地では無料でサービスが提供されている。また、避妊計画に参加している者が避妊に失敗した場合も無料で中絶を受けられる。
  • 政府は1980年代と1990年代に家族計画のために大量に資金をつぎ込んだが、サービスを使えるのは妊娠可能期にある既婚カップルに限定されている。そのため妊娠可能期にある未婚女性の立場は弱く、政府が補助金を出しているようなプログラムや製品を使えない。
  • ベトナム政府の中絶に関する方針や家族計画プログラムは女性のエンパワーメントを旨としているが、男性たちに自分の責任に気づかせるための方策は未だ不足している。多くの場合、どの避妊方法を用いるのかは男性が決定しているため、女性たちは望まないセックスや安全でないセックスに至り、中絶においやられている。
  • 女性たちは中絶の経験を相当な心配と恐怖で見ている。中絶はできる限り避けるべきものだとされる。避妊の代わりにしてはならないのだ。医療的、経済的、社会的な様々な原因によって、女性たちは中絶に追いやられている。
  • ベトナムでは妊娠6週から12週までの中絶では、MVA(手動吸引器)が使われている。
  • 第2トリメスタの中絶にはKovacs(生理食塩水注入法)が一般的である。
  • ベトナムの中絶数は1995年に130万件でピークを迎え、2003年には50万件まで減少した。出生100に対する中絶比率は38.7である。
  • 中絶がこれほど広く使われている原因の一つは、リプロダクティブ・ヘルスへの認識や関連サービスが不十分なためである。たとえばコンドームが無料で配られていても、使い方は教えられていない。家族計画などに関するカウンセリングも行われていない。中絶後のケアにも関心が向けられておらず、中絶後の避妊も教えられていない。
  • 1980年代の経済的危機以降は資源不足が深刻で、周縁にいる人々に手が届いていない。
  • IpasがMOHや官民と共に開始した包括的女性中心的高品質中絶ケア(CAC)モデルは、女性たちに選択肢を学ばせることで自分にとって最良の選択をできるように女性をエンパワーしている。
  • 昔から使われているがリスクの高いD&CやKovacsに置き換えることを狙って、IpasはMVAやD&Eなどのより安全な中絶の手法を導入している。カウンセリング・サービスや避妊や性感染症の情報提供も重要だ。「以前もカウンセリングを提供していたが不十分だった。より包括的なカウンセリングを導入したい」
  • Ipasのイニシアチブで「スマート・ウィミン・クラブ」という中絶を経験した女性同士で自らの経験を語り合い、互いに感情的なサポートを得る活動も行っている。
  • 中絶サービスの質の向上のために、WHOやIpasの技術協力を得て『全国中絶標準ガイドライン』を策定した。
  • 安全な中絶に関するアドボカシー・ワークショップも政府とIpas等の協力で実施している。

次の段階では:

  • 中間レベルの医療提供者の役割が低く見積もられており、国内の地域差も大きい。中間レベルの医療提供者は質の高い中絶サービスを行うだけの能力も技能も備えているのに、公立病院レベルでの中絶には関われないのは、医師が特権を握っているためである。現在、中間レベルの医療提供者たちは薬による中絶の際のカウンセリングしか行えない。

ベトナムには2つの明らかな目標がある:(1)中絶に頼る比率を引き下げること、(2)より質の高い中絶を提供することである。
More to Demand: Abortion in Vietnam