リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

日本産科婦人科学会で作った冊子

人工妊娠中絶について書かれている内容

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なんか他人事の現状解説。料金は自分たちが決めているのに、「かかります」って何?
良くしていこうという意志はないのか。「にんしんSOS」ってあなたたちにとって無関係の他団体でしょ? そこに丸投げって何なの??

人工妊娠中絶
Doctor:木村 正
大阪大学大学院産科学婦人科学講座


日本では「母体保護法(ぼたいほごほう)」という法律にもとづいて、胎児(たいじ)が子宮(しきゅう)の外で生活できない時期(妊娠21週6日まで)に限って、その妊娠をやめることができます。これを「人工妊娠中絶(ちゅうぜつ)」といいます。人工妊娠中絶(以下「中絶」と書きます)に関する考え方は、国によって大きく異なり、まったく認めていない国(カトリックが国の宗教であるところに多い)から、妊娠した本人の意思だけで行うことができる国まであります。日本はその中間で、中絶できる条件は、下記の2つの場合だけです。


1. 妊娠の継続または分娩(ぶんべん)が、身体的または経済的理由により、母体の健康を著しく害するおそれのあるもの

2. 暴行もしくは脅迫(きょうはく)によって、または抵抗もしくは拒絶することができない間に、姦淫(かんいん)されて妊娠したもの

本人とパートナーの同意書が必要ですが、パートナーがわからない、あるいはレイプなどのときは本人の同意書だけでできます。ただ、手術なので未成年の場合は親の同意をもらいます。日本での中絶は、上記の1によるものがほとんどです。


どんな手術? いつまでならできるの?

妊娠初期(11週6日まで)と妊娠中期(12週~ 21週6日まで)では、やり方が異なります。初期では、多くの施設で前の日に子宮(しきゅう)の入口を柔らかくする器具を入れて、一晩おいてから次の日に麻酔(ますい)をかけて子宮の中の胎児(たいじ)、胎盤(たいばん)を吸いだす(または掻(か)きだす)方法をとります。多くの施設では日帰りで行っていますが、一部の施設では、特に持病(じびょう)がある場合などは一泊二日で行う場合もあります。妊娠中期では、入院して子宮の入り口を柔らかくする処置を受け、子宮収縮剤で陣痛(じんつう)をつけて分娩(ぶんべん)させることが多いです。同じ中絶をするなら初期のほうが女性のからだへの負担が小さく、回復も早いです。


費用は健康保険は使うことができず、すべて自費診療になります。初期中絶で10万~20万円程度、中期中絶だと30万~50万円程度かかり、分娩費用と変わらなくなります。中期中絶の場合は、死産証明書を役所に出して火葬しなければなりません。この費用も別にかかります。いずれの場合でも最初に初診料がかかり、感染症や血液型などの検査をすることが多いので、ここにさらに1万~2万円の費用がかかります。費用はその地域や医療機関によって大きな差があります。ただ、初期でも週数が進むと費用がかさみ、かつ女性のからだへの負担も大きくなるので、妊娠に早く気がつくことはとても大事なことです。そのために、月経の周期を把握して、数日遅れたと思ったら妊娠検査をしましょう。ただ、あまり早い時期の中絶(ちゅうぜつ)(4~5週)は、でてきたものの確認が難しく、妊娠が続いてしまうことがあるのでおすすめしません。


中絶しても、また赤ちゃんを産める?

中絶手術は、まれですが、子宮(しきゅう)の壁を破ってしまったり、胎盤(たいばん)が残ったり、出血が長く続いたり、感染がおこったりというトラブルがあります。特に性感染症(せいかんせんしょう)(クラミジアなど)を気づかず持っていると、子宮や卵管に炎症がおこり、後で不妊の原因になることもあります。お医者さんはなるべくそのようなことがおこらないように注意して、あらかじめ検査をするなど、処置を進めます。ですから、たいていは安全に中絶を終えて、再び人生のどこかで、ちゃんと赤ちゃんを産んでいます。


中絶でからだの傷を負うことは、昔に比べてとても少なくなりました。でも、もうひとつ大きな問題は、心の傷です。女性が妊娠して「産むことはできない」と思って中絶をする、というのはとっても悲しいことです。中絶した女性に一番大事なことは、同じ失敗を繰り返さないことだと思います。ですから「中絶イコール今後の避妊(ひにん)を真剣に考える・今後のパートナーとのつきあい方を真剣に考える」という機会にしてほしいと思います。中絶してから通常の周期(月経周期28 日型なら14 日目前後)で次の月経の前に排卵(はいらん)がおこることが結構多いので、避妊は中絶したすぐ後から必要です。腟外射精(ちつがいしゃせい)はとても避妊法とは呼べません。また、コンドームも特に若くて使い慣れていないカップルでは、失敗が多くみられます。一番確実なのはピルか、子宮内避妊具(IUD) です。子宮内避妊具は、中絶後に入れることが可能です。


産まない、という判断

今、日本では年間20万件弱の中絶手術が行われています。「そんなにたくさん!」と驚かれるかもしれません。「けしからん!」という人もいるでしょう。この妊娠がすべて出産して幸せな子どもに育てばそれでいいのですが、実際には虐待(ぎゃくたい)やネグレクト、育児放棄(ほうき)などで子どももその母親も結果的に傷ついてしまうような出産が、悲しいけれどあるのです。中絶ができるということは、産んだ後、母と子どもが悲劇に遭(あ)わないようにするための世の中の安全弁のひとつでもあると思います。もちろん、2人で力を合わせて産んでしっかり育ててあげる決心をするなら、一番それがいいです。


思わぬ妊娠で困ったとき、相談する窓口が、たとえば大阪・名古屋・静岡などでは「妊娠SOS」という形でできています。ほかの都道府県でも相談窓口ができてきました。重い決断なので、そのような場所で相談するのもひとつの方法です。