リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

戦後の中絶料金と現在の中絶料金

1949年の中絶料金は今の価格なら?

ノーグレン(2008年邦訳p.96の注98)によると:

谷口は1949年に中絶の費用は約1500円で、高くても2000円だと報告している(『参議院厚生委員会会議録』第18号(1949年5月6日)4頁)。ところが、1950年5月14日の『毎日新聞』に掲載された日本産科婦人科学会の調査では、人々は中絶料金が不当に高いと感じており、料金の上限を1500円にすべきと考えていることが示されている――つまり、多くの産婦人科医がこれより高い料金を請求していたことは間違いない。

実際の国会発言(第5回国会 参議院 厚生委員会 第18号 昭和24年5月6日)

谷口弥三郎
 只今のいわゆる費用につきましては、これは私共母性保護医協会などにおきましても、こういうふうにいたしておるのでございます。從來はこの人口妊娠中絶は、殊に圏で行われた時代には非常に費用が高かつたのでございます。これはどうしても安くせんければならんと思いまして、普通人口妊娠中絶は千五百円程度にいたしますし、余程ひどい場合でも二千円という程度にして、決して高く取らんようにということを一般に互いに自粛自戒させておるのでございます。尚これは幸いにいたしまして、社会保險におきましても、普通社会保險は御承知のように治療の場合のみやつておつたのでございますが、こういうふうな予防的の手術も社会保險でやることができますし、尚生活保護法でこの費用を拂つて頂くことができますので、特に民生委員などに説明いたします場合には、貧困者であつて生活保護を受けておる方は、それによつて費用は出るのだからして安心して治療を受けるようにというようなことを勧めるようにいたしておるのでございます。


日銀の持家の帰属家賃を除く総合消費者物価指数
1949年 12.8 ⇒当時の1500円、2000円
2021年 99.7 ⇒現在の11,684円、15,578円


上記の通り、現在の感覚からすると、かなり安かったように思われる。ところが、国家公務員の初任給に対する比率を調べると、当時の人々にとって上記は非常に高額だったことが窺われるし、また現在の国家公務員の初任給に対する比率と比べると、相対的に値上がりしていることが分かる。


国家公務員初任給の変遷(行政職俸給表(一))によると
1949年 大卒六級職 4,223円 中絶料金1500円の初任給に占める比率36%
同   高卒五級職 3,565円 同比率42%

2022年 大卒一種 216,000円 中絶料金10万円の初任給に占める比率46%
同   大卒二種 185,200円 同比率54%
同   高卒三種 154,800円 同比率 65%


実際には10万円で中絶を受けられるところは非常に稀であり、本当に底辺の最低価格でこれなのだ。20万だったら国家公務員初任給の1か月分が消えることになる。

  
国際的に見ても、日本の中絶料金があまりにも高いことは、以前、医療費の高いアメリカで医療保険がきかない場合の平均的な女性の所得との比較で明らかにした。
参照高すぎる! 日本の中絶!! - リプロな日記