リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

日本人は「人権」を知らないが「中絶」についてはわりと許容的らしい

議論しないから一般論は言えないけど、感覚的な意見は述べられるということか?


以下は2023年の国際人口基金(UNFPA)が8か国を対象に行った「人口が変化する可能性について懸念すること」の調査で、最も懸念されることを選んでもらった。

UNFPA2023 調査対象国の人口が変化する可能性への懸念

(選択肢は下から積み上げ)

  • 経済
  • 環境
  • セクシュアル&リプロダクティブ・ヘルスの政策と人権
  • 文化、民族、人種差別
  • 人口減少
  • 紛争、緊張
  • その他、分からない
  • スラム化、都市の空洞化

日本のみ「セクシュアル&リプロダクティブ・ヘルス」(薄緑)を選んだ人は皆無だった。そもそも、この言葉を知らない人も日本には多いのかもしれない。また、「人権教育」がほとんど行われていないこともこの項目が選ばれていない理由の一つだろう。


このことは、かつて行われたIpsos「2018年 人権の現状」29か国比較調査の結果とも呼応している。(選択肢は左から「よく/まあまあ知っている」「知っているかどうか分からない」「ほとんど/まったく知らない」)

Ipsos調査 あなたは人権についてどの程度知っていますか?

日本人は単に「知らない」ではなく、自分がどの程度知っているのかが「分からない」人も多いのだ。この状態では、次にように「中絶」の合法性に関する質問で「分からない/答えたくない」人が非常に多いことにも通じているのではないだろうか。

Ipsos 2022 中絶についてあなたの個人的な意見に最も近いのは次のいずれですか。

選択肢は:

  • すべての場合につき合法にすべき
  • たいていの場合につき合法にすべき
  • たいていの場合につき非合法にすべき
  • すべての場合につき合法にすべき
  • 分からない/答えたくない

この場合、日本人は17%が「すべての場合につき合法」、32%が「ほとんどの場合につき合法」を支持しているが、「わからない」が41%にものぼる。


同社は2021年にも類似調査を行っているのだが、その時の選択項目が少し違うことで、また別の結果が出ている。

Ipsos2021 中絶合法化に対する国別の許容度

選択肢は左から右の順(以下、全て同じ)

Q. あなたの考えに近い方を選んでください。

  • 中絶は、女性が望むと決めたらいつでも許可されるべきである。
  • 中絶は、女性がレイプされた場合など、特定の状況において許可されるべきである。
  • 中絶は、母体の生命が危険にさらされている場合を除き、いかなる状況においても許可されるべきではない。
  • どのような状況であっても、中絶は決して許されるべきではない。
  • わからない/言いたくない

この選択肢だと、日本人の41%が「当人が望めばいつでも」、26%が「たいていの場合」に中絶は認められるとしており、合わせると実に67%が中絶に対して許容的であることになる。「わからない」は26%で、他の国々に比べて多いが、ストレートに合法性を質問された場合よりは減っている。

「どうすべき」か一般論としては知らない(学んでない)が、自分の感覚としては「構わないよ」ということなのだろうか??