1968年の「人口問題研究」105号41頁
最近わが国でも労働力不足がしだいに深刻化するにつれて、女子労働力の活用が真剣に考えられており、事実、女子の労働力率は上昇する傾向をみせている。労働力が不足になるにつれて、いまのところ労働力率の低い女子とくに有配偶女子に期待がかけられるのは当然だといえる。しかし、男子の場合とちがって女子の労働力化については特別に複雑な問題が伴うことに注意しなければならない。それは、女子労働力には、本来、ふたつの役割—家庭と仕事—が負わせられるという事実に基づく問題である。単純な労働力政策の波にのって家庭に在った女子がむぞうさに労働にかり出され、家庭責任がおろそかにされるようなことがあれば、『犯罪白書』(昭和42年版)が警告しているように、子女の非行化のごとき事例の増加をまねき、社会的に大きな大家が支払われねばならないはめに陥るであろう。
これはアルバ・ミルダール、ビオラ・クライン共著の『婦人の二つの役割』という本について岡崎陽一氏が書いた書評の冒頭であり、氏はこの本から以下の提案を受取っている。
1.男女両性の個人的態度の改善。まず女性は人生のはじめにあたって、教育期、家族形成期、活動期の3つの局面をあらかじめ予定し、この期間をどのように過すかを計画すべきである。男性の側では、女性が社会的に二つの役割を果たすべき事実を理解し、これに協力すべきである。
2.労働市場における調整・女性の特殊な役割を考慮に入れ、矛盾が生じないような受け容れ体制がたてられるべきである。産前・産後休暇の拡充や40歳以降の再雇用を円滑にするための訓練が必要である。
3.社会的調整。ショッピング・センターの配置、休職制度の充実、託児所の増設、家庭補助員の整備などの社会的設備の充実がすすめられなければならない。
すべての女性に「ふたつの役割」を想定している点には難があるが、現代にも応用できるところもある。
著者の経歴を調べてみた。
本の紹介欄を仮訳。
外交官であり、フェミニストであり、スウェーデンの福祉国家の創始者の一人であるアルヴァ・ミルダル(1902-1986)は、その類まれな人生において、現代における女性の喜び、悲しみ、功績を体現している。彼女の娘は、彼女が他の何百万もの女性たちのために勝ち取った自由と機会を、私生活で獲得するためにいかに奮闘したかを、冷徹な率直さで教えてくれる。
2022年の本によれば、核軍縮の立役者でもあったようだ。
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もう一人、Viola KleinはWikipediaで紹介されていたのでこれも仮訳する。
ヴィオラ・クライン(1908-1973)はイギリスの社会学者である。彼女の研究は、女性の属性に関する客観的な考え方が社会的に構築されたものであることを実証した。彼女の初期教育は心理学と哲学であったが、最も精力的に取り組んだ研究は、女性の社会的役割と、それが産業革命後にどのように変化したかに関するものであった。彼女は、この社会経済的トピックに定量的証拠をもたらした最初の学者の一人である。彼女の研究は、社会における女性の役割の変化を明らかにするだけでなく、こうした新しい役割を促進するための具体的な社会的・政治的変化についても執筆や講演を行った。
興味深い……。