リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

中絶の方法(2020年レビュー改訂)

MSDマニュアル プロフェッショナル版 / 18. 婦人科および産科 / 家族計画 / 人工妊娠中絶

www.msdmanuals.com

方法


 人工中絶の一般的な方法は以下の通りである:

  • 頸管拡張後の器具による子宮内容除去術
  • 薬物による誘導(子宮収縮を促進する薬剤)


 用いられる方法は,妊娠期間の長さによって異なる部分がある。器具による子宮内容除去術はほとんどのケースで用いることができる。11週未満または15週を超える妊娠の一部には薬物が使用できる。

 子宮手術(子宮切開術や子宮摘出術)は最後の手段であり,死亡率が高いため通常は避ける。また,子宮切開術により子宮瘢痕が生じ,これが後の妊娠において破裂する可能性がある。

器具による子宮内容除去術
 典型的には14週未満では,通常径の大きい吸引カニューレを子宮腔に挿入し,頸管拡張・内膜掻爬(D&C)が行われる。

 9週未満では,手動真空吸引法(manual vacuum aspiration:MVA)を用いることができる。この方法では子宮内容を除去するために十分な圧力を発生させる。MVA装置は持ち運び可能で,電源を必要とせず,電動式の真空吸引装置よりも静かである。MVAは妊娠初期の間の自然流産の管理にも用いられることがある。9週以降は,EVAが用いられる;電動式吸引装置にカニューレを接続する。

 14~24週では,通常は頸管拡張・内容除去(D&E)を用いる。鉗子を用いて胎児を切断および除去し,吸引カニューレを用いて羊水,胎盤および胎児の残骸を吸引する。D&Eには,器具による他の内容除去法よりも高い技術およびより多くの研修が必要である。

 しばしば,手技の前に頸管を拡張するために徐々に径が大きくなる先細の拡張器を使用する。しかしながら,在胎期間と出産回数によっては,先細の拡張器が頸管に与える損傷を最小限にするため,先細の拡張器の代わりに,またはそれに追加して,他のタイプの拡張器の使用が必要になる場合がある。選択肢としては以下のものがある:

プロスタグランジンE1誘導体(ミソプロストール)
ラミナリア桿(乾燥した海藻の茎)のような浸透性拡張器


 ミソプロストールはプロスタグランジン放出を促進することで頸管を拡張させる。ミソプロストールは通常手技の2~4時間前に腟内投与または舌下投与する。

 浸透性拡張器は頸管に挿入し4時間以上(妊娠18週を超えていればしばしば一晩)放置しておくことが可能である。浸透性拡張器は通常16~18週以降で使用する。


薬物による誘導
 
 11週未満または15週を超える妊娠には薬物による誘導が可能である。患者に重度の貧血がみられる場合は,輸血を迅速に行えるように,薬物による中絶は病院でのみ行うべきである。

 米国では10週未満の中絶の25%が薬物による中絶である。

 10週未満の妊娠に対するレジメンとして,プロゲステロン受容体拮抗薬であるミフェプリストン(RU 486)とプロスタグランジンE1誘導体であるミソプロストールの併用があり,以下のように使用する:

 ミフェプリストン200mgを経口投与,その24~48時間後にミソプロストール800μgを舌下投与(10~11週の妊娠には,ミソプロストールの初回投与から4時間後に追加でミソプロストール800μgを舌下投与
ミソプロストールは患者が自身で使用するか,医師が投与してもよい。

 このレジメンは8~9週の妊娠では約95%,9~10週を超える妊娠では92%の効果がある(1)。

 妊娠の終了を確認し,必要に応じて避妊法を提供するために,フォローアップ来院が必要である。

 15週以降は,誘導の24~48時間前にミフェプリストン200mgによる前治療を行うことで誘導時間が短縮する。中絶の誘導にはプロスタグランジンを使用する。選択肢としては以下のものがある:


 典型的なミソプロストールの用量としては600~800μg腟内投与後,400μgを3時間毎,最大5回までの舌下投与である。または2錠の200μgのミソプロストール腟錠を6時間毎に使用できる;流産はほぼ100%の症例で48時間以内に起こる。

 プロスタグランジンの有害作用としては,悪心,嘔吐,下痢,高体温,顔面紅潮,血管迷走神経症状,気管支攣縮,発作閾値の低下などがある。


方法に関する参考文献
1.Kapp N, Eckersberger E, Lavelanet A, Rodriguez MI: Medical abortion in the late first trimester: A systematic review.MMWR Recomm Rep 65 (4):1–66, 2016.doi: 10.15585/mmwr.rr6504a1.