リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

世界の人工妊娠中絶政策データベース:人工妊娠中絶医療に対する財政的保障の記述的分析

WHO Published online: 25 June 2020

Global Abortion Policies Database: a Descriptive Analysis of Financial Coverage for Abortion Care
Antonella F. Lavelanet1 & Esther Major 2 & Veloshnee Govender1

(c) World Health Organisation 2020

以下はブログ所有者の個人的な覚書としての仮訳であり、WHOの英語版の原文が申請で拘束力があります。WHOは本翻訳の内容や正確性について責任を負いません。

以下、仮訳します。

アブストラク
レビューの目的
 このレビューの目的は、2020年2月時点でGlobal Abortion Policies Database(GAPD)で利用可能なデータについて報告することである。GAPDは、すべての国の中絶に関する一般に入手可能な情報源のリポジトリである。


最近の調査結果
 調査によると、個人が中絶手術の費用を支払わなければならない場合、その費用はしばしば家計にとって手が届かず、壊滅的な打撃を与える可能性がある。経済的な障壁に直面すると、個人は医療を受けることを躊躇したり、密かな行為に頼ったりすることもありうる。


サマリー
 中絶サービスの経済的保護に関する情報源が公開されている国は限られている。書類上では合法的な利用が可能であっても、中絶を求める特定のタイプの個人や中絶の特定の法的カテゴリーに経済的保護を制限することによって、実際の利用を制限して国もいくつかあり、その結果、公平性の問題や人権侵害の可能性が生じている。各国がユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に向けて前進する中、GAPDを拡大して、中絶サービスに資金を提供する国の医療制度についてのエビデンスを構築するデータを追加し、中絶サービスへのアクセスに関する経済的保護の意味を検討することが急務である。


キーワード:中絶、法、政策、経済的保護(financial protection)、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)、保険


はじめに
 第74回国連総会におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に関する政治宣言は、UHCが「健康と福祉だけでなく、あらゆる形態と次元における貧困の根絶...… [および] ジェンダーの平等と女性のエンパワーメントの達成...… [1]に関連する持続可能な開発目標(SDGs)を達成するための基本」であることを認めた。UHCの下では、すべての人が、経済的な困難に苦しむことなく、「必要な推進的、予防的、治療的、リハビリテーション的、緩和的な(質の高い)必須保健サービス」を受けることができ、健康が基本的権利であり続けることが保障される[1, 2-, 3]。世界保健機関(WHO)は、その第13次一般事業計画の一環として、UHCの達成と維持のための保健システム強化について各国を支援している [4]。
 UHCに向けた前進には、質の高いあらゆる保健サービスへのアクセスが必要であり、すべての人が必要なサービスを受けられることが重視される。さらに、医療を受けることに伴う経済的リスクから個人が保護される必要がある。経済的リスクとは、主に自己負担(OOPs)に関連するもので、これには利用者負担、医薬品、診断薬、追加処置料金、交通費、その他サービス利用時に発生する非公式な料金が含まれる [5--]。医療費が障壁となる場合、個人が医療を受けることを躊躇する可能性がある [6] 。
 中絶のようにスティグマ化されていたり、法的に制限されているサービスを考慮する場合、医療費、特にOOPの影響は拡大する可能性がある。中絶に関連する費用は、しばしば手が届かないものになることがあり、個人や家計にとって壊滅的な打撃となりうる [7] 。個人は、貯蓄を使ったり、高利で借金をしたりするなどの対処策に頼るかもしれない [7] 。しかし、経済的悪化は中絶に限定されるものではない。自然流産や流産/中絶後の合併症の管理にかかる費用も、資産の損失、負債の発生、生産性の損失、医療制度への費用、家族への影響につながる可能性がある [7, 8]。施設でかかえる費用に加えて、個人はケアを受けるために受診する前から大きな経済的損失を経験したり [8] 、ケアの時点で追加料金を求められたり [9] する可能性がある。そうした経済的な打撃は、貧困層 [7, 8] や有色人種の女性 [10] など、社会的・経済的に不利な立場に置かれている集団では、より大きくなる。
 公費で賄われている医療制度では、中絶サービスは必ずしも利用者の負担を軽減するためにサービスが(全額または部分的に)確実に助成されるようにしている医療給付パッケージに含まれていない [11, 12]。そうした場合の医療費は、支払う手段を持たない人々にとって障害となり、その結果、一部の女性たちは、大きな個人的リスクと社会への大きなコストを伴う違法の手段に頼らざるをえなくなっている [13---]。世界保健機関(WHO)の「安全な中絶:保健システムのための技術的・政策的ガイダンス」で、女性の支払い能力に関係なく合法的な中絶にアクセスできるようにすべきであると述べている理由のひとつはここにある。
 この論文では、Global Abortion Policies Databaseから抽出したデータを用いて、特定の種類の保険(公的、私的、および/またはその2つの組み合わせ)、あるいは中絶に特有のエンドユーザーの費用を相殺するためのその他の措置など、経済的保護に関連する文書が公開されている国の数を報告することを主な目的としている。さらに本論文では、それらの国々の政策が、個人の支払い能力に関係なく、いかにして合法的な中絶のすべてのカテゴリーにアクセスできるようにしているのか、またはそのようなアクセスが可能であるようにしているのかどうか、また公開されている情報に頼ることの限界を明らかにすることを目指している。


方法
 Global Abortion Policies Database(GAPD)は、法的カテゴリー、アクセス要件、サービス提供に関連する情報を含む、中絶に関する法律と政策に関する情報を提示するツールである。GAPDには198の加盟国の情報が含まれている。我々は2020年2月時点でGAPDで利用可能なデータを使用している。データベースの情報は、ソース文書へのアクセス可能性とソース文書の翻訳能力によって制限されている。GAPDにおけるデータの収集、分類、コーディングに使用された方法は、すでに説明されている[14]。簡単に説明すると、GAPDにデータを入力するためにデータ抽出アンケートを使用し、法律、政策、ガイドラインの明確な文章に基づいてコーディングを行った。中絶を正当化するための要件がなく、女性の要求があれば合法的に中絶を行うことができる国および/または1つ以上の法的事由をもつ国のみを対象とした[15]。
 サービス、人口、経済的保護を含むUHCのありようは国によって大きく異なる。そのため、本稿では、GAPDで利用可能なすべての政策(法律、基準、ガイドラインを含む)のうち、保険(公的、私的、および/またはその2つの組み合わせ)を含む中絶に利用可能な経済保護に関連するもの、または利用者負担を相殺するためのその他の措置を記述した政策を分析した。追加的な規制要件については、他[16]でレビューされているため考慮しない。


結果
 41カ国の政策がGAPDで入手可能であるため、41カ国のデータを掲載した。サブナショナル・レベルで追加情報が入手可能な場合は、それを記載した(表1)。


すべての法的カテゴリーにおけるすべての個人への保険適用
 17カ国に、適応にかかわらず中絶手術を求めるすべての人への適用について記述した政策が存在している。サービスを受けるために移動しなければならない北アイルランドでは、移動費と宿泊費も補償の対象となっている。スイスでは、適用範囲はすべての州で同じである。カナダでは、4つの州(アルバータ州ブリティッシュコロンビア州マニトバ州ニューブランズウィック州)が、中絶サービスを求めるすべての人に保険を提供している。


特定の法的カテゴリーに対するすべての個人への適用
 12カ国において、中絶の保険はすべての人に提供されているが、選択された法的カテゴリーにのみ適用されている。例えば、ハンガリーでは、健康状態や胎児の異常による中絶を求める個人は、社会保険によってカバーされる。ハンガリーでは、中絶を希望するその他のすべての個人に対して、中絶のために請求される費用が社会保険で通常賄われる金額を超えることはない。中絶へのアクセスがいくつかの法的カテゴリーで法的に認められているモルドバ共和国では、胎児の適応症のために行われる中絶のみが保険の対象となる。

 オーストリアボスニア・ヘルツェゴビナスルプスカ共和国ブルガリア、中国、リトアニアモンテネグロ北マケドニアスロバキアベトナム)の9カ国では、中絶は要求があれば法的に認められているが、適用範囲は医学的適応に限定されている。これらの国のうち5カ国(ボスニア・ヘルツェゴビナ・するプスカ共和国、リトアニアモンテネグロ北マケドニアスロバキア)は、中絶の法的カテゴリーを明確に指定し、オンリクエストの中絶を希望する個人に対する保険適用を除外している。
 モンテネグロでは、生命・健康への脅威、胎児の障害、犯罪の結果として生じた妊娠、または妊娠・出産が個人的または家庭的な困難につながる場合の中絶にも適用される。ドイツとブルガリアでは、レイプを理由に中絶を希望する場合には保険が適応される。


すべての法的事由について特定の個人への適用
 10カ国では、すべての法的事由に適用されるが、特定の個人にのみ適用される。例えば、イスラエルでは、18歳未満の青少年について、すべての医学的または非医学的な事由による中絶にアクセスする場合が対象となる。ドイツでは、経済的に不利な立場にあり、中絶サービスをカバーするための資金を調達することが合理的に期待できない人に限って、すべての法的事由が対象になる。モンテネグロでは、すべての貧困層の女性に対し、オンリクエストの中絶の費用を保障している。
 中絶に関連する医療は、メキシコシティの住民についてのみカバーされているが、メキシコの他の州の住民には、所得に応じたスライド制の料金が適用される。ウルグアイでは、国内に1年以上居住している個人には、すべての法的事由について対象になる。オランダでは、国内に居住する不法滞在者は中絶関連サービスの保険で保障されていない。ニュージーランドでは、季節的移住女性、非居住者、留学生を除き、経済的保護による医療を受ける資格のある人のみが対象であり、同様にアイルランドでは、通常、国内に居住しているすべての人が保険の対象になる。カナダでは、2つの準州と6つの州(ノースウェスト準州ニューファンドランド・ラブラドール州ノバスコシア州オンタリオ州プリンスエドワード島、サスケッチャバン州、ケベック州ユーコン州)において、有効なヘルスカード(健康保険証)[1]を所持している人に限定することを地方自治政策に明記している。オーストラリアのビクトリア州では、すべてのカテゴリーに保険が適用されるが、誰が支援を受ける資格があるのか、サービスが公立、私立、地域社会のいずれで受けられるか、どの方法が用いられるかは異なる場合がある。


特定の法的カテゴリーに対する特定の個人への適用
 4カで国は、特定の理由によって特定の個人にのみ適用を提供している。例えば、イスラエルでは、妊娠がレイプの結果である場合、胎児に異常がある場合、妊娠が女性の生命や身体的または精神的健康にリスクを及ぼす場合には、33歳までのすべての女性に中絶手術が適用される。チェコ共和国では、市民は医学的事由については保険が適用されるが、オンリクエストの中絶については適用されない。非市民と一時滞在者に対しては経済的保護はない。エストニアでは、すべての女性に保険が適用されるが、全額保証されているわけではなく、個人の支払い能力に応じて中絶に補助金が支給される。
 アメリカでは、経済的困窮のためにメディケイドの受給資格を得た個人は、生命や健康を脅かす場合の中絶や、レイプによる妊娠の場合には保険が適用される。


合併症に対する保険
 7カ国が、妊娠または中絶の結果生じた合併症に対する補償を明確に規定している。コロンビアの憲法裁判所は、個人の保健の種別を根拠にアクセスを拒否するのは違法であるとしているが、すべての女性に対して保障すべきだとは明言していない。


議論
 UHCの目的には、質の高い医療への公平なアクセスと、個人に経済的リスクを与えない方法で提供されることが含まれる。一国の保険制度にすべての可能な介入を含めることはできないが、適応率と死亡率の最も重大な事由に対処するサービスの保険は含めるべきである [17] 。毎年2,500万件の安全でない人工妊娠中絶が行われ [18] 、その結果約2万3,000人の人工妊娠中絶に関連した死亡者が出ていることから [19] 、手ごろな価格の安全な中絶が必要であることは明らかである。しかし、経済的な保護がないところで個人がサービスを受けることは困難であり、この分析結果は、すべての法的カテゴリーについて、すべての個人を対象とした中絶に関連する経済的保護について記述した文書が公開されているのは17カ国しかないことが示されている。
 保健制度への財政補助は、さまざまな形で行われている。サービスの現場での公的料金を廃止する医療費無料化(FHC)政策は、医療費のありかたを示す一つの方法である。このような政策には、医療的・経済的弱者を保護する試みとして、特定の個人を対象としたすべてのサービス、あるいはすべての個人を対象とした特定のサービスが含まれる。ここでは12カ国が、医学的事由や胎児的事由など、選ばれた法的事由に関して中絶に関する経済的保護をすべての個人に提供している。なぜこれらの特定の事由が適用されるのかについて資料には記載されていないが、このような特定の理由について選択的に適応されているのは医学的リスクを伴う妊娠の継続には経済的リスクが伴うという認識があることと関係しているのかもしれない。FHCを採用している国は、利用者負担の損失を補うために、サービス提供者レベルで追加資金を割り当て、提供のインセンティブと説明責任を確立しなければならない[6]。しかし、国々は追加資金を割り当ててサービス提供にインセンティブを与えることには消極的かもしれない。他の多くのセクシュアル&リプロダクティブ・ヘルスの課題と同様に、中絶は非常にスティグマ化されているためである。
 選択的な経済的保護は、公平性と公正性の問題を引き起こす。一部の国では、オンリクエストの中絶に対する経済的保護を明確に除外している。そのため、保険が適用されないことが懲罰的な性質を持つかどうかという疑問が生じる。このような手続きに資金を提供しないという一部の国の決定により、一部の女性グループが希望に応じて中絶を受けることができない場合、既存の不平等を強化することになる。経済的に余裕のある女性だけが希望に応じて中絶を受けることができる一方で、貧しい女性や青少年は最終的に中絶という法的手段を拒否されている。なお、青少年を含む特定の集団に焦点を絞った経済的保護政策を採用している国々もある。これは、サービスを利用する上での青少年に特有の課題を潜在的に認識していると同時に、青少年の健康の保護は地域社会全体への投資であることを認識しているためである。選ばれた集団に対する経済的保護は、サービスを利用する女性のタイプに階層があることを示唆する可能性もある。
 しかし、UHCに移行していくためには、税金とその他の前払いメカニズムを組み合わせた国内公的資金によって、保健システムの資金を主に賄う必要があり、そうすることで保健に関連する社会的保護を確保するため、より持続可能で効率的かつ公平な基盤が得られる [5--]。また、そのようにすることは、医療に対してじかに資金を拠出するのではなく、自発的な前払いや雇用に基づく仕組みに拠出することで医療にアクセスすることも意味する。その結果、国民健康保険や社会健康保険のような制度が生まれるかもしれない。
 GAPDは、特定の種類の経済的保護、保険、あるいはエンドユーザー負担を相殺するためのその他の措置に関してある程度の洞察を与えてくれるが、公開されている情報のみに頼ることには落とし穴がある。入手可能な文書には、たとえば、そのような経済的保護がどのようにカバーされているのか、公的または私的なアクターによってカバーされることになるのかといったことは記述されていない。ほとんどの政策文書が中絶全般について述べているため、実際にどのようなサービス(例えば、人工妊娠中絶の方法(医学的および/または外科的)、麻酔、その他の付帯サービス)が対象となるのかについては、ほとんど情報が提供されていない。渡航費を含む追加費用や、現地元の薬局で得られる内科的中絶に用いる医薬品に関する経済的保護に関する情報はほとんどない。最後に、データベースの情報は、公式な翻訳がないため、すべての原文を翻訳することができないことによっても制限されている。
 個人が中絶手術の費用を支払わなければならない場合、その費用は、年間の医療費の自己負担額の一般的な金額の2倍にもなることがある[20]。中絶サービスに対する経済的な保護がない場合、または利用料が発生している場合には、個人がサービスを見送ったり、標準以下のケアに頼ったりするリスクが高まる。また、費用が障壁となる場合 [20] 、自己誘発を試みたり、望まない妊娠や危険な妊娠を続けざるを得ないと感じたりする場合もある。
 さらに、たいていの国では、中絶は他のほとんどの医療サービスとは異なり、刑法によって規制されているため、一部の国家が中絶サービスへの財政保障に消極的である一因となっている可能性がある。これは、自国民のニーズに応えることを各国に義務付けている人権の基準に反しているように思われる [21]。安全でない中絶には圧倒的なコストがかかり、病院資源の利用に伴う非効率性があるにもかかわらず、である。例えば、中絶後の合併症に関連したサハラ以南のアフリカの個人と世帯の自己負担額は、中絶後の合併症の治療のために毎年2億米ドルと以前に推定されており、安全でない中絶に関連した罹患と死亡のための年間支出は9億3,000万米ドルと推定されている[13-]。41カ国中7カ国が妊娠中絶後の合併症に対する特別な保障を設けているのはこのためであろう。
 中絶サービスに対する資金援助が一部しかない、または全くない状況では、女性と女児にとって深刻な影響があり、基本的人権潜在的に侵害している。国際人権条約の遵守を監視する責任を負う国連専門家委員会が、合法的に利用可能な中絶のすべてのカテゴリーにおいて、すべての女性に中絶サービスが適用されていないことにますます強い懸念を示すようになっているのは、おそらくこのためである。例えば、国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)は、各国に対し、「要請による中絶を含む、合法的な中絶に関するすべての費用」について、「公的医療保険による普遍的な適用を確保する」よう求めている [22]。CEDAWは各国政府に対して、「オンリクエストの中絶を含み、合法的な中絶に関わるあらゆるコスト」に対して、公共の健康保険によるユニバーサル・カバレッジを確実に保障すること」を求めている [22]。こうした韓国では、「すべての女性に対して、合法的中絶と中絶後サービスへのアクセスを妨害することなく、有効に実現すること」[22]を求めており、この立場は複数の国連委員会によって支持されている [23-26]。
 最後に、UHCを達成するための唯一の正しい方法は存在しないが、各国は医療の効率性と公平なアクセスの両方を改善するために独自の方法を模索する必要がある [5--]。WHOは、タスク・シェアリング [27] や、手作業による真空吸引や薬による中絶など、限られたインフラしか必要としない技術に関するガイダンスも提供している [13-]。そのようなガイダンスを実施することで、各国は既存の技術や医療サービスを最大限に活用できるようになり、その結果、UHCの獲得に向けてより大きな努力をつぎ込んでいくことができるようになる [5--]。


結論
 本調査の結果から、GAPD域内における中絶サービスの保険適用やその他の資金調達メカニズムに関して、公に入手可能な資料が限られていることが示された。限られたデータであっても、GAPDで利用可能なものは、合法的な中絶にアクセスできる場合に、そのようなサービスを必要とする個人のために金銭的な保護を保障する措置をとっている国々があることを示している。
 世界保健機関(WHO)の『安全な中絶:保健システムのための技術・政策ガイダンス)』では、女性は支払い能力に関係なく合法的な中絶にアクセスできるべきだとしている。このたびの調査の結果は、世界中の多くの女性にとって、オンリクエストの中絶が許可されている場合でさえも、支払いができない人、特に貧しい人、若い人、法的地位が不確かな人にとっては、安全な中絶サービスを現に利用することは手の届かないままであることを示している。国の医療給付パッケージに中絶サービスを含めることは、中絶サービスの全額とは言わないまでも、少なくとも部分的に国からの補助が受けられるようにするための重要な方法のひとつである。予防的、推進的、治療的な保健サービスは、UHCに含まれるべきである。しかし、すべての個人に対する中絶のための経済的保護が存在する場合でも、公平性の問題は残っており、オンリクエストの中絶に資金を提供する国はほとんどない。そのような政策が最も弱い立場にある人々をどのように保護しているのか、また保護しているのかどうかを含め、各国がどのように資金調達に関する政策を策定し、実施しているかに関連するエビデンスを調査し、構築していくためには、さらなる調査とGAPDの拡大が必要である。