リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

世界中で進む中絶の権利

Center for Reproductive Rights

Abortion Rights are Advancing Across the Globe

情報リーフレットの内容を仮訳します。

中絶法の自由化に向けた圧倒的な世界的潮流がある。
過去30年間に60カ国以上が中絶法を自由化しており、中絶の法的根拠をなくした国はわずか4カ国しかない。この自由化の波の結果、合法的な中絶の根拠が拡大された国々では、約8億1500万人以上の生殖年齢にある女性が生活している。


後退:4か国
1994年以降、中絶の法的根拠を撤廃:米国、エルサルバドルニカラグアポーランド


進展:60か国+
1994年以降、中絶法を緩和(自由化):アルバニアアンゴラ、アルゼンチン、ベニン、ブータン、ブラジル、ブルキナファソカンボジア中央アフリカ共和国、チャド、チリ、コロンビア、コートダジュールキプロスコンゴ民主共和国エクアドルエリトリアエスワティニ(旧スワジランド)、エチオピア赤道ギニア、フィジーガボンギニアガイアナアイスランド、インド、インドネシア、イラン、アイルランドケニアレソトリヒテンシュタインルクセンブルグモルジブ、マリ、マルタ、モーリシャス、メキシコ、ミクロネシアモナコモザンビークナウル、ネパール、ニュージーランドニジェール北アイルランドポルトガルルワンダサンマリノサントメ・プリンシペソマリア南アフリカ、韓国、スペイン、セントルシア、スイス、タイ、トーゴ、アラブ首長国連合、ウルグアイウズベキスタン


自由化の経緯:1995~2023
1995~2000:6か国
2001~2006:14か国
2007~2012:12か国
2019~2023:21か国
*過去30年間に2回以上の緩和/自由化を行った7か国も含まれている(アルゼンチン、ベニン、中央アフリカ共和国、チャド、コロンビア、ルワンダ、タイ)


中絶法の自由化の流れは、過去5年間で加速している
 過去5年間だけでも、5億1800万人以上の生殖年齢にある女性が、ますます自由になっていく中絶法のもとで生活している。
この加速は、安全で合法的な中絶へのアクセスは人権であり、公衆衛生上の必須事項であるという世界的なコンセンサスの高まりを反映している。中絶法を自由化し、中絶が合法である根拠を拡大することは、サービスを利用できるようにするための不可欠な一歩である。


すべての大陸の国々が中絶法を自由化している
 今日、生殖年齢にある女性の60%は、中絶が広く合法である場所で生活しており、40%は制限的な中絶法の下で生活している。


地域毎の改善
アフリカ:24か国
ヨーロッパ:14か国
アジア、パシフィック:13か国
ラテン・アメリカ、カリビアン:9か国
中東:2か国


 最近では、コロンビアとメキシコで中絶の権利を認める画期的な判決が下されるなど、ラテンアメリカ全土で「緑の波」が画期的な法改正に火をつけた。アジアでは、ネパール、韓国、タイなど、中絶を認める根拠を拡大し、より自由な中絶法を採用する国々が続いている。ヨーロッパのいくつかの国では、要求があれば中絶を認める法律を拡大し、アイルランド北アイルランドサンマリノでは制限的な中絶法が覆されている。特筆すべきは、アフリカ地域に住む人々が、過去30年間で最も多くの国が中絶法を自由化していることである。


中絶合法化のカテゴリー
カテゴリーI:要求しだい 77カ国
 生殖年齢にある女性の35%が、様々な妊娠期間制限を設けて、要求しだいで中絶が認められる国に住んでいます。最も一般的な妊娠期間は12週ですが、その期間が過ぎると、追加的な理由によって中絶が許可されることがよくあります。これらの追加的な理由には、例えば、妊娠している人の健康や生命が危険にさらされている場合や、レイプや近親相姦による妊娠などが含まれます。

  • 過去30年間で、29カ国が中絶法を自由化し、このカテゴリーに入った。


カテゴリーⅡ:社会経済的理由 12カ国
 生殖年齢にある女性の25%は、年齢、経済状態、婚姻関係などの社会経済的な理由による中絶を認めている国に住んでおり、多くの場合、妊娠している人の実際の環境または合理的に予見可能な環境を考慮している。これらの法律は一般的に自由に解釈され、幅広い状況下で中絶を認めている。

  • このカテゴリーに含まれる12カ国はすべて、レイプや近親相姦による妊娠、胎児診断の場合など、その他の理由による中絶も認めている。


カテゴリーIII:健康を守るため 47カ国
 生殖年齢にある女性の12%は、健康上の理由で中絶を認めている国に住んでいる。これらの国々は、多くの場合、広範な健康上の理由や治療上の理由で中絶を認めているが、中には特に精神的な健康を含んでいたり、中絶を身体的な健康への脅威のみに限定している国もある。

  • このカテゴリーに属する20カ国は、妊娠している人の精神的健康を維持するための中絶を明確に認めている。
  • このカテゴリーに属する国の大多数は、妊娠がレイプや近親相姦の結果である場合や、胎児診断の場合など、追加的な理由による中絶も認めている。


カテゴリーIV:妊娠している人の命を救うため 44カ国
 生殖年齢にある女性の22%が、妊娠している人の命を救うための中絶を認めている国に住んでいる。これらの国では、妊娠している人の命が危険にさらされている場合、中絶を明確に認めている。

  • このカテゴリーに属する12カ国は、妊娠した人がレイプや近親相姦の結果であったり、胎児診断の場合など、追加的な理由で中絶することも認めている。


カテゴリーV 全面禁止 21カ国
 生殖年齢にある女性の6%が中絶を完全に禁止している国に住んでいる。これらの国では、妊娠した人の生命や健康が危険にさらされている場合を含め、いかなる状況下でも中絶を認めていない。

  • 過去30年間で、20カ国が中絶の絶対的禁止を撤廃し、このカテゴリーから他のより自由なカテゴリーに移行している。


州レベルで異なる 2カ国
 現在、中絶の法的地位が州レベルで大きく異なるのは、米国とメキシコ*1の2カ国だけである。これらの国の州法は、カテゴリーⅠ(要請があれば)からカテゴリーⅣ(妊婦の命を救うため)まで多岐にわたる。

  • 2022年にロー対ウェイド裁判を覆す判決を下した連邦最高裁判所は、中絶の権利に対する全国的な保護を取り払った。それ以来、中絶を犯罪化した州がある一方で、保護を強化した州もある。
  • 2021年、メキシコの最高裁判所は、妊娠初期に合法かつ安全で無料の中絶サービスを受ける憲法上の権利を全会一致で認めた。それ以来、メキシコ全土の州は、その権利を反映させるために法律の自由化を進めている。


安全な中絶は人権であり、公衆衛生上の必須事項である
 国際人権機関や世界の保健当局は、制限的な中絶法は個人の尊厳、平等、健康、幸福を損ない、人々に安全でない中絶に頼らざるを得なくさせ、生命と健康を危険にさらすことを認識している。世界中で毎年22,000人以上の女性が安全でない中絶によって死亡し、さらに数百万人が長期にわたる健康上の合併症を経験している*2
 妊娠を余儀なくされることは、教育的・経済的機会を追求し、社会生活に参加する能力に、生涯にわたって影響を及ぼす。こうした影響は、歴史的に疎外されてきた人々に不釣り合いな影響を与え、社会的・経済的不平等を深める。


国家は中絶へのアクセスを拡大するために行動しなければならない
 制限的な中絶法を改革することは、誰もが安全で合法的な中絶サービスを利用できるようにするための不可欠な第一歩である。アクセスを保証するために、国家は次のこともしなければならない:

  • すべての人に中絶サービスへのアクセスを保証し、特に歴史的に社会から疎外され、十分なサービスを受けていない人々にとって、安全で合法な中絶サービスが利用可能で、アクセスしやすく、受け入れられやすく、質の高いものであることを保証する効果的な法律と政策を採択する。
  • 自己管理を可能にする環境を整える。

人々が中絶を自己管理する法的権利を有し、希望すれば薬による中絶を利用できることを認めることによって、自己管理による中絶を可能にする環境を作ること。

  • 中絶医療に対する手続き上の障壁を取り除き、中絶を非犯罪化し、幅広い医療従事者が中絶医療を実施できるようにするなど、世界保健機関(WHO)の中絶ガイドラインを遵守する。

Center for Reproductive Rights
worldabortionlaws.org

*1:引用者注:2023年9月に画期的な判決があり全土で中絶が合法化されたはずである。'Green Wave Continues' Across Latin America as Mexican Supreme Court Decriminalizes Abortion

*2:Guttmacher Institute, Induced Abortion Worldwide (2018), https://www.guttmacher.org/fact-sheet/induced-abortion-worldwide-2018