リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

先に入手できた『更年期の真実』から読み始めた。寺澤恵美子さんと山本博子さんのお二人は,訳者あとがきでこの本を次のように紹介している。

 更年期に関しては,数多くの書籍が出版されているが,医師が書いた者や当事者の女性が書いたものでも,医学的・身体的な問題に焦点を当てているものが多い。しかし本書は,ホルモン補充療法など医療・身体問題はもとより,直接,あるいは間接的に中年女性に影響するすべての面から更年期について考察している。したがって,医学,文学,歴史学,人類学などさまざまな分野の文献を詳細に検証しており,際だった多面性を持つが,全体的な論点に関しては一貫している。それはまず,日常生活における中年女性の「不可視性」invisibilityに対する異議申し立てである。現実に存在しているにもかかわらず,医学をはじめ文化や文学や人類学の研究者たちにとっては「見えない存在」として無視されてきたと,グリアは痛烈に批判する。銀髪の中年男性はもてはやされるが,中年女性は訳に立たない,哀れな,ひからびた婆さんとして「目に見えない(invisible)存在」とされてきたため,現代に生きる私たちにはロールモデルがない。pp.540-1.
ISBN:4768478247

さらに,この本が提唱しているそのinvisibilityを逆手に取った生き方について,訳者は次のように説明する。

 人は皆死すべき運命にあり,更年期は「死の控えの間」に入ることだと認めなければならないときでもある。しかし,「夏はずっと昔に過ぎて,日は短く,寒々としている」と感じても,憂うつを乗り越えれば,人生をもっと深く感じとることができるようになる。「更年期のストレスが終わったときにはじめて,秋は長く,楽しく,夏よりも穏やかで,暖かいということを知ることができる」。―中略―
 中年女性は自分が「目に見えない存在」であることにはじめて気づく。それを逆手にとって,欲望を捨て,自分の肌,唇,胸,ヒップへの果てしない執着を捨て,人の目に留まらない存在になるよう提案している。そして,これまでの母親役割,妻役割から解放されて,本来の自分へ,あるがままの自分に戻るよう呼びかけている。「女性が若く美しくあろうといらいらしてもがくことをやめてはじめて,女性は外に眼差しを向け,美しいものを見出し,それによって生きることができる」。本書を読み進めていくうちに,更年期は「人生の棚卸をすべき時」であり,自分の外面をつくろうことから,「内面へ向けて真の自己を探求する」旅がいよいよ始まる時だということが実感できるだろう。
pp.543-5.

目から鱗が落ちる一冊になりそうだ。