リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

第4回世界女性会議 北京宣言ならびに行動綱領

リプロダクティブ・ヘルス&ライツに関する抜き書き

内閣府男女共同参画局の訳による「北京宣言」ならびに「行動綱領から」のリプロダクティブ・ヘルス&ライツに関連する箇所を抜粋します。

北京宣言
我々は,以下のことについての我々の誓約(コミットメント)を再確認する。
9 あらゆる人権及び基本的自由の不可侵,不可欠かつ不可分な部分として,女性及び女児の人権の完全な実施を保障すること。

我々は,以下のことを確信する。
17 すべての女性の健康のあらゆる側面,殊に自らの出産数を管理する権利を明確に認め再確認することは,女性のエンパワーメントの基本である。

我々は,以下のことを決意する。
29 女性及び少女に対するあらゆる形態の暴力を阻止し,撤廃する。
30 女性及び男性の教育及び保健への平等なアクセス及び平等な取扱いを保障し,教育を始め女性のリプロダクティブ・ヘルスを促進する。
31 女性及び少女のあらゆる人権を促進し,保護する。

以下は行動綱領より。

行動綱領
第4章 戦略目標及び行動 C 女性と健康
92. 最高水準の健康を享受する女性の権利は,全ライフサイクルを通じて男性と平等に保障されなければならない。女性は男性と同じ健康状態の多くに影響されるが,その経験の仕方は男性と異なっている。女性の間に広がる貧困と経済的依存,暴力被害,女性及び少女に対する否定的な態度,人種差別その他の形態の差別,多くの女性の自らの性と生殖に関する生活に対する限られた権限,並びに意思決定における影響力の欠如は,女性の健康に悪影響を及ぼしている社会の現実である。特に農村地域及び都市の貧困地域における,食糧不足,家庭内での少女及び女性への食糧配分の不公平,安全な飲み水,衛生設備及び燃料補給への不十分なアクセス,並びに不十分な住宅事情がすべて,女性とその家族に過重な負担を負わせ,彼らの健康に悪影響を与えている。良好な健康は生産的で充足した生活を送るために不可欠であり,自らの健康のあらゆる局面,特に自らの出産数をコントロールするすべての女性の権利は,彼らのエンパワーメントの基礎である。

93. しばしば息子志向から起こる,栄養及び保健サービスにおける少女への差別は,彼らの現在及び将来の健康及び安寧を危険にさらす。少女を若年の結婚,妊娠及び出産に追い込み,女性性器の切除など有害な習慣にさらす状況は,健康上の重大な危険を引き起こす。思春期の少女は成熟する際に欠かせない保健及び栄養サービスへのアクセスを必要としているにもかかわらず,それを持たない場合があまりにも多い。思春期の若者のためのカウンセリング及び性に関する健康(セクシュアル・ヘルス)とリプロダクティブ・ヘルス情報及びサービスへのアクセスは,依然として不十分もしくは完全に欠如しており,プライバシー,秘密保持,敬意及びインフォームド・コンセント(医師等の説明の下の同意)に対する若い女性の権利は,多くの場合,顧慮されない。思春期の少女は,性的虐待,暴力及び売春行為に対し,また,保護されない早熟なうちの性的関係の結果に対して,生物学的にも社会心理学的にも少年より傷つきやすい。若年で性経験を持つ傾向は,情報及びサービスの欠如と相まって,望まず,かつ早すぎる妊娠,HIV感染その他の性感染症並びに危険な妊娠中絶を増加する。若年出産は,世界のすべての地域において相変わらず女性の教育的,経済的及び社会的地位の向上を阻む障害になっている。全体として,若い女性にとって,若年結婚及び早くに母親になることは,教育及び雇用機会をひどく短縮しかねず,自分自身と子どもの生活の質に長期的な悪影響を及ぼすおそれがある。若い男性は,女性の自己決定を尊重し,セクシュアリティーと生殖に関する事柄において女性と責任を分担するように教育されていないことが多い。

94. リプロダクティブ・ヘルスとは,人間の生殖システム,その機能と(活動)過程のすべての側面において,単に疾病,障害がないというばかりでなく,身体的,精神的,社会的に完全に良好な状態にあることを指す。したがって,リプロダクティブ・ヘルスは,人々が安全で満ち足りた性生活を営むことができ,生殖能力をもち,子どもを産むか産まないか,いつ産むか,何人産むかを決める自由をもつことを意味する。この最後の条件で示唆されるのは,男女とも自ら選択した安全かつ効果的で,経済的にも無理がなく,受け入れやすい家族計画の方法,ならびに法に反しない他の出生調節の方法についての情報を得,その方法を利用する権利,および,女性が安全に妊娠・出産でき,またカップルが健康な子どもを持てる最善の機会を与えるよう適切なヘルスケア・サービスを利用できる権利が含まれる。上記のリプロダクティブ・ヘルスの定義に則り,リプロダクティブ・ヘルスケアは,リプロダクティブ・ヘルスに関わる諸問題の予防,解決を通して,リプロダクティブ・ヘルスとその良好な状態に寄与する一連の方法,技術,サービスの総体と定義される。リプロダクティブ・ヘルスは,個人の生と個人的人間関係の高揚を目的とする性に関する健康も含み,単に生殖と性感染症に関連するカウンセリングとケアにとどまるものではない。

95. 上記の定義を念頭に置くと,リプロダクティブ・ライツは,国内法,人権に関する国際文書,ならびに国連で合意したその他関連文書ですでに認められた人権の一部をなす。これらの権利は,すべてのカップルと個人が自分たちの子どもの数,出産間隔,ならびに出産する時を責任をもって自由に決定でき,そのための情報と手段を得ることができるという基本的権利,ならびに最高水準の性に関する健康およびリプロダクティブ・ヘルスを得る権利を認めることにより成立している。その権利には,人権に関する文書にうたわれているように,差別,強制,暴力を受けることなく,生殖に関する決定を行える権利も含まれる。この権利を行使するにあたっては,現在の子どもと将来生まれてくる子どものニーズおよび地域社会に対する責任を考慮に入れなければならない。すべての人々がこれらの権利を責任を持って行使できるよう推進することが,家族計画を含むリプロダクティブ・ヘルスの分野において政府および,地域が支援する政策とプログラムの根底になければならない。このような取組みの一環として,相互に尊敬しあう対等な男女関係を促進し,特に思春期の若者が自分のセクシュアリティに積極的に,かつ責任を持って対処できるよう,教育とサービスのニーズを満たすことに最大の関心を払わなければならない。世界の多くの人々は,以下のような諸要因からリプロダクティブ・ヘルスを享受できないでいる。すなわち,人間のセクシュアリティに関する不十分な知識,リプロダクティブ・ヘルスについての不適切または質の低い情報とサービス,危険性の高い性行動の蔓延,差別的な社会慣習,女性と少女に対する否定的な態度,多くの女性と少女が自らの人生の中の性と生殖に関し限られた権限しか持たないことである。思春期の若者は特に弱い立場にある。これは大部分の国では情報と関連サービスが不足しているためである。高齢の男女は性に関する健康およびリプロダクティブ・ヘルスについて特有の問題を抱えているが,十分な対応がなされていない場合が多い。

96. 女性の人権には,強制,差別及び暴力のない性に関する健康及びリプロダクティブ・ヘルスを含む,自らのセクシュアリティに関する事柄を管理し,それらについて自由かつ責任ある決定を行う権利が含まれる。全人格への全面的な敬意を含む,性的関係及び性と生殖に関する事柄における女性と男性の平等な関係には,相互の尊重と同意,及び性行動とその結果に対する責任の共有が必要である。

97. さらに女性は,セクシュアリティと生殖に関する保健ニーズへの対応の不十分及びサービスの欠如のために,特別な健康上の危機にさらされている。妊娠及び出産に関連した合併症は,開発途上世界の多くの地域で,出産可能年齢の女性の死亡及び罹病の主要原因のひとつである。経済が移行期のいくつかの国々でも,同様の問題がある程度存在する。安全でない妊娠中絶は多数の女性の生命を脅かし,最も高い危険を被るのが主として最も貧しく最も若い層であることから,深刻な公衆衛生問題になっている。これらの死亡,健康問題及び傷害の大半は,男女とも自ら選択した安全かつ効果的で,経済的にも無理がなく,受け入れやすい家族計画の方法,ならびに法に反しない他の出生調節の方法についての情報を得,その方法を利用する権利,および,女性が安全に妊娠・出産でき,またカップルが健康な子どもを持てる最善の機会を与えるよう適切なヘルスケア・サービスを利用できる権利を認め,安全で効果的な家族計画手段及び産科救急医療を含む適切な保健サービスへと改善されたアクセスを通して予防できる。これらの問題及び手段には,カイロの「国際人口・開発会議」(ICPD)(注14)の報告に基づき,特に同会議の「行動計画」の中の関連パラグラフを参考にして,取り組むべきである。殆どの国では,女性のリプロダクティブ・ライツの無視が,教育及び経済的・政治的エンパワーメントの機会を含む,公私の生活における女性の機会を著しく制限している。自らの出産に対する女性の管理能力は,その他の権利の享受にとって重要な基礎をなす。性と生殖に関わる行動に関する事柄における女性と男性による責任の共有もまた,女性の健康の向上にとって不可欠である。

98. ときには性暴力の結果として感染することもあるHIV/AIDSその他の性感染症は,女性の健康,特に思春期の少女及び若い女性の健康に破壊的な影響を及ぼしつつある。往々にして,彼らは安全で責任ある性習慣を主張する権限を持たず,予防及び治療の情報及びサービスへのアクセスも殆ど持たない。新たにHIV/AIDSその他の性感染症に感染した成人全体の半分を占める女性たちは,性感染症の蔓延を抑制しようとする取組みの中で,社会的に弱い立場であること及び女性と男性の間の不平等な力関係が安全なセックスへの障害になっている点を強調してきた。HIV/AIDS感染の影響は,母親及び介護者としての彼らの役割に対する女性の健康や家族への経済的支援に対する寄与の域を越えてまで及ぶ。HIV/AIDS及びその他性感染症の社会,発育及び健康への影響は,ジェンダーの視点から眺める必要がある。

99. 身体的及び心理的虐待,女性及び少女の人身売買,並びにその他の形の虐待及び性的搾取を含む性的及びジェンダーに基づく暴力は,身体的・精神的トラウマ(傷),病気及び望まない妊娠をもたらす高い危険に少女及び女性をさらす。そのような状況は,女性に保健及びその他のサービスの利用を躊躇させることが多い。

注14 「国際人口・開発会議(カイロ,1994年9月5日~13日)報告」(国連出版物,販売番号 E. 95.ⅩⅢ. 18),第I章,決議1,付属文書

行動綱領(続き)
104. 多くの場合,健康に関する統計データは,年齢,性,社会経済的な地位によっても,また,弱い立場の人々,疎外された人々その他の関連変数に特に重点を置いて,下位集団の利益を図り,彼らの問題を解決するために用いられる人口統計学上の確立された基準別にも,組織的に収集され,分類され,分析されることがない。多くの国では,女性の死亡率及び罹病率,特に女性に影響を及ぼす状況及び病気に関する,最近の信頼できるデータが入手できない。社会的・経済的要素があらゆる年齢の少女及び女性の健康に及ぼす影響,少女及び女性に対する保健サービスの提供とその利用パターン,女性のための疾病予防とヘルスプロモーションプログラムの価値に関しては,相対的にほとんど知られていない。女性の健康にとって重要な課題は十分に調査研究されておらず,女性の健康調査研究はしばしば資金供給が欠如している。多くの国における,例えば心臓疾患に関する医学的調査研究や疫学的研究は男性のみに基づいている場合が多く,男女別のものではない。避妊薬を含む薬の,用量,副作用及び効能に関する基礎的情報を確立するための,女性を対象に加えた臨床試験は著しく欠如しており,また,必ずしも調査研究及び試験の倫理基準に合致していない。女性に施される多くの投薬療法の規定その他の医療及び処置は,男性に関する調査研究に基づいており,男女差に対する調査も調整も加えられていない。

105. 女性と男性の間の健康状態における不平等,保健サービスへの不公平なアクセス,及び不十分な保健サービスに対処するに当たり,政府及びその他の行為者は,決定が下される前に,それらが女性と男性それぞれに及ぼす影響の分析がなされるよう,あらゆる政策及び計画の中心にジェンダーの視点を据える,積極的で目に見える政策を促進するべきである。

行動綱領(続き)
戦略目標C.1. ライフサイクルを通じ,適切で,手頃な料金の良質の保健,情報及び関連サービスへの女性のアクセスを増大すること

取るべき行動

106. 非政府機関,使用者団体及び労働者団体と協力し,国際機関の支援を受けて政府により:
(a) 少女及びあらゆる年齢の女性の保健ニーズを満たすために,「国際人口・開発会議」の報告書の中で明らかにされている,「国際人口・開発会議」の「行動計画」及び「社会開発サミット」(注15)の「社会開発に関するコペンハーゲン宣言及び行動計画」の中でなされた誓約,「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」の締約国の義務その他関連の国際的合意を支援し実施すること。
(b) 達成可能な最高水準の身体的・精神的健康を享受する権利を再確認し,女性及び少女のこの権利の達成を守り促進するとともに,例えば国内法に盛り込み,女性の健康への関与を反映するとともに女性の居住場所の如何を問わず,変わりゆく女性の役割と責任に確実に対応できるものにするため,保健法規を含む既存の法律及び必要な場合には,政策を見直すこと。
(c) 女性の一生を通じたニーズに対処し,女性のいくつもの役割と責任,女性の時間の必要,農村女性や障害を持つ女性の特別なニーズ,並びにとりわけ,年齢,社会・経済的並びに文化的な相違から生じる女性のニーズの多様性を考慮に入れた,地方分権化した保健サービスを含む,ジェンダーに配慮した保健計画を,女性団体及び地域に基盤を置く組織と協力して企画・実施すること。保健医療の優先事項及びプログラムの認定及び立案に女性,特に地元及び先住民女性を参加させること。女性への保健サービスを阻むあらゆる障害を除去し,広範な保健サービスを提供すること。
(d) 全ライフサイクルを通じて男性と平等な社会保障制度へのアクセスを女性に与えること。
(e)  「国際人口・開発会議」の「行動計画」の中で合意されているように妊産婦及び産科救急医療に特別の注意を払う,家族計画の情報及びサービスを含む性に関する健康及びリプロダクティブ・ヘルスについてのケアも含めた,利用・入手がもっと容易で料金が手頃で質の高いプライマリー・ヘルスケア・サービスを提供すること。
(f) ジェンダーに配慮し,対人関係やコミュニケーションの技術についての利用者の視点及びプライバシーや秘密保持に対する利用者の権利を反映したものになるよう,健康情報,保健サービス及び保健従事者のための訓練を計画し直すこと。これらのサービス,情報及び訓練は,全体論的アプローチに基づくべきである。
(g) 責任ある自発的なインフォームド・コンセントの確保を目指す,女性への保健サービスの提供に当たって,すべての保健サービス及びその従事者が人権に則り,倫理的かつ専門的でジェンダーに配慮した基準を遵守するよう保障すること。また,既存の国際的医療倫理規範のみならず,他の保健専門家を律している倫理原則に倣った倫理規範の開発,実施及び普及を奨励すること。
(h) 女性に対する有害かつ医学的に不要な,又は強制的な医療の介入,並びに不適切かつ過剰な投薬を撤廃するために,あらゆる適切な措置を講じ,また,適切な訓練を施された職員から,すべての女性に対し,見込まれる利益と副作用の可能性などについて,自らの選択に関して,十分知らされるよう保障すること。
(i) 女性及び少女のための良質な保健サービスへの普遍的なアクセスを保障するため,保健サービス,特にプライマリー・ヘルスケアを強化して方向修正をすること。健康障害及び妊産婦の罹病率を減らして,2000年までに妊産婦死亡率を1990年の水準の少なくとも50パーセント減少させ,2015年までに更に2分の1減らすという合意目標を世界的に達成すること。また,健康に関する制度の各レベルにおいて,必要なサービスが利用できるよう保障し,プライマリー・ヘルスケア制度を通じて,リプロダクティブ・ヘルスケアが,できるだけ早く,遅くとも2015年までに,適切な年齢のすべての個人に利用できるようにすること。
(j) 「国際人口・開発会議」の「行動計画」のパラグラフ8.25で合意されているように,危険な妊娠中絶の健康への影響を主要な公衆衛生上の問題として認め,対処すること。
(k) 「国際人口・開発会議」の「行動計画」のパラグラフ8.25は,以下のように述べている。「いかなる場合も,妊娠中絶を家族計画の手段として奨励すべきでない。全ての政府,関連政府間組織及びNGOは,女性の健康への取り組みを強化し,安全でない妊娠中絶(注16)が健康に及ぼす影響を公衆衛生上の主要な問題として取り上げ,家族計画サービスの拡大と改善を通じ,妊娠中絶への依存を軽減するよう強く求められる。望まない妊娠の防止は常に最優先課題とし,妊娠中絶の必要性をなくすためにあらゆる努力がなされなければならない。望まない妊娠をした女性には,信頼できる情報と思いやりのあるカウンセリングが何時でも利用できるようにすべきである。健康に関する制度の中で,妊娠中絶に関わる施策の決定またはその変更は,国の法的手順に従い,国または地方レベルでのみ行うことができる。妊娠中絶が法律に反しない場合,その妊娠中絶は安全でなければならない。女性が妊娠中絶による合併症に対しては,いかなる場合も女性が質の高いサービスを利用できるようにしなければならない。また,妊娠中絶後にはカウンセリング,教育及び家族計画サービスが即座に提供される必要があるが,それらの活動は妊娠中絶が繰り返されることを防ぐことにも役立つ。」違法な妊娠中絶を受けた女性に対する懲罰措置を含んでいる法律の再検討を考慮すること。
(l) 少女のニーズ,特に運動を含む健全な行動の促進に特別の注意を払うこと。乳児及び幼児の死亡率の減少という国際的合意目標 ― 具体的には,2000年までに乳児及び5歳未満児の死亡率を1990年の水準の3分の1減少させるか,1,000人の出生に対し50から70までの死亡率の,いずれかより低いものに減らし,2015年までに,乳児死亡率を1,000人の出生に対し35未満,5歳未満児の死亡率を45未満に減少すること ― を達成する。少女が不利な罹病率及び死亡率における性別格差を埋めるための明確な施策を講じること。
(m) 子どもから成人への健全な移行を促進するために,少女が成熟に伴って必要とする保健及び栄養に関する情報及びサービスへの継続的なアクセスを少女に保障すること。
(n) 女性が加齢に関連する変化を理解しそれに適応するのを助け,また,身体的あるいは精神的に介護が必要な人々に特に注意を払いつつ,高齢女性の保健ニーズに取り組み,対処するための情報,プログラム及びサービスを開発すること。
(o) いかなる形態であれ障害を持つ,少女及びあらゆる年齢の女性に支援サービスを受けることを保障すること。
(p) 妊娠中及び授乳中の女性に配慮しつつ,家庭,職場その他あらゆる場所における仕事に関係した環境的及び職業的な健康障害の軽減及び根絶のために必要な特別の政策を策定し,プログラムを企画し,法律を制定すること。
(q) 精神面の保健サービスをプライマリー・ヘルスケア体制又はその他の適切なレベルに組み込み,支援プログラムを開発し,いかなる形態であれ暴力,特に家庭内暴力,武力及び非武力的紛争から起きる性的虐待又はその他の虐待を経験してきた少女及びあらゆる年齢の女性を認識し,世話をする訓練をプライマリー・ヘルスケアの担当者に与えること。
(r) 母乳の利益に関する広報を促進し,WHO(世界保健機関)/ユニセフの「母乳代替品の企業活動に関する国際規範」を完全に実施する方法及び手段を検討し,法的,経済的,実戦的及び情緒面での支援の提供によって,母親が母乳で子どもを育てることを可能にすること。
(s) 非政府機関,特に女性団体,専門家団体及び少女及び女性の健康向上のために働くその他の機関を支援し,適当な場合,政府の政策決定及び計画立案,並びにあらゆるレベルの保健部門及び関連部門内部における実施に参加させる仕組みを確立すること。
(t) 女性の健康のために働いている非政府機関を支援し,保健に影響するすべての部門間の調整・協力を改善するためのネットワークの開発を助けること。
(u) 薬品の調達を合理化し,WHOの模範基本薬品リストを手引きに用いて高品質の薬品,避妊薬(具)その他の医療品及び機器の信頼できる継続的な供給を確保するとともに,国内の規制的な薬品認可手続を通じて,薬品及び医療具の安全性を確保すること。
(v) 女性薬物乱用者とその家族のための適切な治療及び社会復帰訓練サービスへのアクセスの提供を改善すること。
(w) 適当な場合,家庭及び国内の食糧安定を促進・保障し,栄養における性別格差に特別な注意を払いつつ,2000年までに5歳未満児の重度及び中等度の栄養失調を,世界的に1990年の水準の2分の1減らすこと,及び2000年までに少女及び女性の鉄欠乏性貧血を1990年レベルの3分の1減らすことを含む,「国際栄養会議の行動計画」(注17)でなされた公約の実施によって,すべての少女及び女性の栄養状態の改善を目指すプログラムを実施すること。
(x) 先住民女性に対し,保健のインフラストラクチャー(施設)及びサービスへの完全かつ平等なアクセスを保障すること。
(y) 女性が加齢に関連する変化を理解しそれに適応するのを助け,また,身体的あるいは精神的に介護が必要な人々に特に注意を払いつつ,高齢女性の保健ニーズに取り組み,対処するための情報,プログラム及びサービスを開発すること。


戦略目標C.2. 女性の健康を促進する予防的プログラムを強化すること

取るべき行動

107. 適当な場合,非政府機関,マスメディア,民間部門及び国連機関を含む関連国際機関の協力を得て,政府により:
(a) 女性が自尊心を育み,知識を獲得し,自らの健康に対して意思決定を行い,責任を取ることができるよう支援し,性及び出産に関する事柄における男女相互の尊重を達成し,また,女性の健康及び安寧の重要性について男性を教育する,フォーマル及びインフォーマル双方の教育計画を優先すること。その際には,女性器の切除,(女の乳児殺しや胎児期の性の選別を招く)息子志向,幼児婚を含む若年結婚,女性に対する暴力,性的搾取,時としてHIV/AIDSその他の性感染症への感染をもたらす性的虐待,麻薬乱用,食糧配分における少女及び女性への差別,並びに女性の生命,健康及び安寧に関連したその他の有害な態度及び慣行の撤廃を強調する男女双方のためのプログラムに特別な重点を置くとともに,これらの有害な慣行のいくつかは人権侵害や医学の倫理原則への背反になりかねないことを認識すること。
(b) 女性の不健康への陥りやすさを軽減し,その健康を増進させるために,女性の貧困の根絶を目的とする社会政策,人間開発政策,教育政策及び雇用政策を追求すること。
(c) 男性に対し,育児及び家事を平等に分担し,別居の場合であっても,家族に対する自らの応分の財政的支援を行うよう奨励すること。
(d) 法律を強化し,制度を改革するとともに,女性への差別を撤廃し,自らの性と生殖に関する行動に責任を取ることを女性と男性の双方に奨励する規範及び慣行を促進すること。完全な一体としての人間の体に対する敬意を保障すること。女性がリプロダクティブ・ライツを行使するために必要な条件を確保するための行動を取ること。強制的な法律及び慣行を撤廃すること。
(e) 情報へのアクセス,プライバシー,秘密保持,敬意及びインフォームド・コンセントに対する子どもの権利とともに,子どもが,「児童の権利に関する条約」に認められ,また「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」に沿った権利を行使する際に,発達する子どもの受容能力に合わせて適切な指導及び手引きを与える,親及び法律上の保護者の責任,権利及び義務を考慮しつつ,公衆衛生キャンペーン,メディア,信頼できるカウンセリング及び教育制度を通じて,女性と男性,特に若い人たちが自らの健康に関する知識,特にセクシュアリティーと生殖に関する情報を得られるように保障するための入手しやすい情報を準備し普及すること。子どもに関するすべての行動においては,子どもの最良の利益がまず第一に考えられるよう保障すること。
(f) 少女及びあらゆる年齢の女性が男性や少年と同じようにできるスポーツ,運動及びレクリエーションに参加する機会を作るため,教育制度,職場及び地域社会においてプログラムを案出し,支援すること。
(g) 上記のパラグラフ107(e)に述べたような子どもの権利及び親の責任,権利及び義務を考慮しつつ,思春期の若者の特有なニーズを認識し,性に関する健康およびリプロダクティブ・ヘルス問題についての,また,HIV/AIDSを含む性感染症についての教育及び情報のような特定かつ適切なプログラムを実施すること。
(h) 保健及び社会サービスから十分な支援とプログラムを提供することによって,家庭及び地域内でいくつもの役割を担う女性への不均衡かつ増大する重荷を減らす政策を開発すること。

注15. 「社会開発サミット(コペンハーゲン,1995年3月6日~12日)報告」(A/CONF. 166/9),第I章,決議1,付属文書I及びⅡ

注16. 危険な妊娠中絶とは,必要な技術に欠ける者によるか,又は最低限の医学的基準に欠ける環境におけるかのいずれか又はその双方で,望まない妊娠を終結させるるための手続きである,と定義されている。(世界保健機関技術作業部会の報告,「危険な妊娠の予防と管理」ジュネーヴ,1992年4月(WHO/MSM/92.5)による。)

注17. 「国際栄養会議(ローマ,1992年12月5日~11日)最終報告」(ローマ,国連食糧農業機関,1993年),第Ⅱ部

なお、現在、WHOでは「危険な中絶=unsafe abortion」の定義を変更しており、たとえ訓練を受けた者が行う場合でもD&Cは安全な中絶ではないとしています。

国連の英語による”BEIJING DECLARATION”と”PLATFORM FOR ACTION”は「こちら」を参照してください。