リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

リプロダクティブ・ヘルスとそのサービスへのアクセス確保を再確認

2012年の国連

12年の段階でリプロダクティブ・ヘルスに関する「決議」が出されたと思い込んでいたけど、以下の「持続的な開発に関する国連報告」と間違えていたのかもしれない。
Report of the United Nations Conference on Sustainable Development
Rio de Janeiro, Brazil, 20-22 June 2012

145. 我々は、性と生殖に関する健康につながる公約と、この文脈におけるすべての人権の促進と保護を含む、北京行動綱領と国際人口開発会議の行動プログラム、およびそれらの再検討会議の成果を完全かつ効果的に実施することを求める。我々は、家族計画および性の健康を含むリプロダクティブ・ヘルスへの普遍的なアクセスを提供すること、およびリプロダクティブ・ヘルスを国家戦略およびプログラムに統合することの必要性を強調する

146. 我々は、妊産婦および児童の死亡率を低減し、女性、若者および児童の健康を改善することにコミットする。私たちは、男女平等へのコミットメントを再確認し、強制、差別、暴力から解放され、性と生殖に関する健康へのアクセスを含む、女性、男性、若者が自らの性に関連する事柄を自由にコントロールし、責任を持って決定する権利を守る。私たちは、女性の健康とジェンダー平等の推進に不可欠であることから、安全で効果的かつ手頃な価格で受け入れ可能な現代の家族計画方法への普遍的なアクセスを目指すことを含め、保健システムが女性の性と生殖に関する健康に対処するために必要な情報と保健サービスを提供するよう積極的に取り組んでいく。


241. 我々は、女性の性と生殖に関する健康への取り組みを含む、教育、基本的サービス、経済的機会、ヘルスケアサービスへの女性と女児の平等なアクセスを促進し、安全で効果的かつ安価で受け入れ可能な現代の家族計画方法への普遍的なアクセスを確保することを約束する。これに関連して、我々は、国際人口開発会議の行動プログラムと、行動プログラムのさらなる実施のための主要な行動を実施するというコミットメントを再確認する。

Taking ICPD Beyond 2015(By Françoise Girard)は次のように論じている。

ICPDの20周年が近づいてきた2011年から2012年初頭にかけて、SRHR活動家と支援国政府は、「カイロでの未完の仕事」の分析を始めた。ICPDのアジェンダのうち、いくつかの重要な分野は、会議の時点では未定義または未開発のままだった。その間、特に1999年のICPDプラス5のレビューでは、いくつかの進展があった。しかし、20年近く経った今、新たなデータや証拠、理解の深まり、他の分野での規範的な進歩により、さらなる精緻化が求められている。


そこで、「ICPDビヨンド2014」では、4つの課題が検討されることになった。(1)青少年、特に思春期の女の子のための、包括的な性教育CSE)を含む、統合された質の高いSRHRサービス、教育、情報への権利、(2)その一環としての安全で合法的な中絶へのアクセス、(3)性の権利の国際的な承認、(4)性的指向性自認に基づく差別、虐待、暴力の非難。

この積み残しの課題を2014年(ICPD+20)に盛り込むために、さまざまな会議で試みられたが最終的にはまだこの段階では反対勢力の力を押さえて安全な中絶を盛り込むことはできていなかった。

それが急速に進んだのは、国連人権理事会の「法と慣行における女性差別問題に関するワーキング・グループ(Report of the Working Group on the issue of discrimination against women in law and in practice)」の調査報告である。同WGは、2015年には「文化における/家庭内での女性差別」の問題を、2016年には「女性の健康権を国家が保障すべき」であることを報告している。おそらくそれを受けて、2016年に社会権規約一般勧告22が出され、「女性と少女に安全な中絶へのアクセス」を保障すべきだとされた。リプロダクティブ・ヘルスケアへの権利である。

この年の国連では中絶に反対する勢力から主に「家族」の独立性に関する決議などが相次いだ。さらに2017年には「すべての人の文化的権利の享受と文化的多様性の促進」の決議も出された。要は、家族内のことに干渉するな、他人の文化には口出しするなということである。

これに対して、2018年のWG報告書は、「胎児生命尊重」の信念によって女性の権利を封じ込むことはできないという判断を示し、「国際人権法による人権はすでに生まれた人間にのみ与えられる」として、「受精の瞬間に人格が始まると信じる者が自分の信念に従って行動する自由はあるが、自分の信念を法制度を通じて他人に押し付けることはできない」と論じたのである。

これを受けて、2019年には自由権規約一般勧告に「中絶へのアクセスへの障壁は撤廃すべき」と書き加えられ、中絶の自己決定権に制約をつけることは人権侵害だというのが国連レベルでの理解であることが明確に示されたのである。