リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

流産の外科的治療における手動真空吸引の安全性と有効性を従来の拡張・鋭利掻爬術および電気真空吸引と比較:無作為化比較試験

BMC Pregnancy and Childbirth (2020)20:695

DOI https://doi.org/10.1186/s12884-020-03362-4

Safety and efficacy of manual vacuum suction compared with conventional dilatation and sharp curettage and electric vacuum aspiration in surgical treatment of miscarriage: a randomized controlled trial
BMC pregnancy and Childbirth 2020; 20: 695
この論文は、経口中絶薬メフィーゴパックに関する独立行政法人医薬品医療機器総合機構の審査報告書の引用文献である。同審査報告書では、下記のように書いている。要するに、掻爬で失敗しても外科的処置(再掻爬または吸引)でカバーして100%成功しているということだろう。

外科的処置(掻爬法)後に追加の外科的処置が必要だった症例の割合は、本邦で 2.4%(BMC pregnancy and Childbirth 2020; 20: 695)と報告されており」、本邦における外科的処置による人工妊娠中絶の成功割合は概ね 100%であるが、薬剤による人工妊娠中絶では外科的処置のデメリットを回避できる可能性があることを考慮し、主要評価項目の評価の基準値を外科的処置による人工妊娠中絶の成功割合として想定される値(概ね 100%)より低い値とすることは可能と判断する。


アブストラクトを仮訳します。

アブストラク
背景
 世界保健機関は、妊娠初期の流産に対する外科的治療として、子宮内膜の損傷によるアッシャーマン症候群を引き起こす可能性があるため、拡張・鋭利掻爬(D&C)を推奨しておらず、依然として吸引が主な治療選択肢となっている。海外では1990年代から手動真空吸引法(MVA)が広く普及していたが、日本では2015年10月にMVA装置(Women's MVA system)の使用が承認された。ここでは、流産に対して外科的治療を受けた女性におけるMVAキットの有効性を検討した。


実施方法
 本レトロスペクティブ・コホート研究は、2014年から2018年にかけて、日本の国際医療福祉大学病院で実施された。妊娠12週以内の流産に対して外科的治療を受けた女性を特定し、本研究に登録した。以下の処置を受けた合計404名の女性が含まれた: D&C121人、電動真空吸引法(EVA)123人、MVA160人。各参加者について、手術時間、出血量、使用した麻酔薬の量、再手術を必要とする不完全流産、術中・術後合併症が評価された。


結果
 手術時間はD&C群、EVA群、MVA群でそれぞれ13.7±7.2分、11.2±4.2分、6.9±4.3分だった(p = 1.00). 使用した麻酔薬の量は、全群で有意差はなかった。100mL以上の出血は、D&C群、EVA群、MVA群でそれぞれ3人(2.4%)、1人(0.8%)、1人(0.6%)で確認された(p = 0.50)。不完全流産は、D&C群、EVA群、MVA群でそれぞれ3人(2.4%)、2人(1.6%)、1人(0.6%)の患者に確認された(p = 0.61)。しかし、術中・術後の重篤な合併症はいずれの群でも認められなかった。


結論
MVAキットを用いた流産に対する外科的治療は、D&CやEVAといった従来の方法と同様の安全性と有効性を有している。