リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

子どもの権利条約にいち早く中絶の権利が明記された

子どもの権利条約一般的意見4号(2003年)子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達

おそらくこれが国連の国際条約で最初に中絶(abortion)が盛り込まれた事例。
以下、4か所に「中絶」。

31.思春期の女子は若年婚と若年妊娠が引き起こしうる悪影響に関する情報にアクセスできるべきであり、また妊娠した女子はその権利と特定のニーズに配慮した保健サービスにアクセスできるべきである。締約国は、とくに若年妊娠と危険な中絶を理由とする思春期の女子の妊産婦有病率および死亡率を削減し、かつ自らも青少年である母親および父親の子育てを支援するための措置をとらなければならない。
 若い母親は、とくに支援が得られない環境にあっては鬱や不安に陥りやすくなり、子どもをケアする能力が阻害される可能性がある。委員会は締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。(a)セクシュアル・ヘルスおよびリプロダクティブ・ヘルスのためのサービスへのアクセスを確保するプログラムを策定および実施すること。このようなサービスには、家族計画、避妊手段、ならびに中絶が違法でない状況においては中絶のための安全なサービス、充分かつ包括的な産科ケアおよびカウンセリングが含まれる。(b)青少年の母親および父親を対象として、青少年が親になることへの前向きかつ支えとなる態度を促進すること。(c)自らも青少年である母親が教育を継続できるようにするための政策を策定すること。
37.買春やポルノグラフィーなどで性的に搾取されている青少年は、STD、HIV/AIDS、望まない妊娠、危険な中絶、暴力および心理的困窮を含む、相当の健康上のリスクにさらされている。このような青少年には、健康、自尊心および尊厳を育む環境における身体的および心理的回復ならびに社会的再統合に対する権利がある(第39条)。あらゆる形態の性的搾取と関連の人身取引を禁ずる法律を制定および執行すること、国際人身取引を根絶するために他の締約国と連携すること、性的に搾取された青少年に対し、彼らが犯罪者としてではなく被害者として取り扱われるようにしながら適切な保健サービスやカウンセリング・サービスを提供することは、締約国の義務である。

子どもの権利条約一般的意見15(2013年)到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利(第 24 条)

CRC/C/GC/15(2013 年4月 17 日/原文英語)日本語訳:平野裕二

31.子どもは、子どもとともに活動する専門家によって子どもの最善の利益にのっとっていると評価される場合には、その発達しつつある能力にしたがい、親または法定保護者の同意を得ることなく、秘密が守られるカウンセリングおよび助言にアクセスできるべきである。国は、親または法定保護者がいない子どもを対象として、子どもに代わって同意を与え、または子どもの年齢および成熟度によっては子ども自身による同意を援助することができる適切な養育者を指名するための、法律上の手続を明確にすることが求められる。国は、HIV検査ならびにセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスのためのサービス(セクシュアルヘルス、避妊および安全な妊娠中絶に関する教育および指導を含む)など一定の医学的治療および介入策について再検討を行ない、これらの治療および介入策については親、養育者または保護者の許可を得ることなく子どもが同意できるようにすることを検討するべきである。

54.この連続的期間全体を通じて利用可能とされるべき介入策には、必須保健としての予防および健康促進ならびに治療的ケア(新生児破傷風、妊娠時のマラリアおよび先天性梅毒の予防を含む)、栄養ケア、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する教育、情報およびサービスへのアクセス、健康的行動教育(たとえば喫煙および有害物質濫用に関するもの)、出産準備支援、合併症の早期認識および管理、安全な妊娠中絶サービスおよび中絶後のケア、出産時の必須ケア、ならびに、HIVの母子感染の予防ならびにHIVに感染した女性および乳児のケアおよび治療が含まれるが、これに限られるものではない。分娩後の産婦および新生児のケアにおいては、母親が子どもから不必要に分離されないことが確保されるべきである。
56.青少年の妊娠率が世界的に高く、かつ、青少年の妊娠には関連する罹病および死亡のリスクが付け加わることを踏まえ、国は、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関わる青少年の特有のニーズを保健制度および保健サービス(家族計画および安全な妊娠中絶のためのサービスを含む)が満たせることを確保するべきである。国は、女子が自己のリプロダクティブヘルスについて自律的な、かつ十分な情報に基づく決定を行なえることを確保するために行動するよう求められる。青少年の妊娠を理由とする差別(停退学等)は禁止されるべきであり、また継続的教育の機会が確保されるべきである。
57.健康的な妊娠・分娩の計画および確保にとって男子・男性がきわめて重要であることを考慮し、国は、セクシュアルヘルス、リプロダクティブヘルスおよび子どもの健康のためのサービスに関する政策および計画に、男子・男性を対象とする教育、意識啓発および対話の機会を統合するべきである。
70.コンドーム、ホルモン避妊法および緊急避妊薬のような短期的避妊法を、性的活動を行なう青少年が容易にかつ直ちに利用できるようにするべきである。長期的かつ恒久的な避妊法も提供することが求められる。委員会は、国が、妊娠中絶そのものが合法であるか否かに関わらず、安全な中絶および中絶後のケアのためのサービスへのアクセスを確保するよう、勧告する。

子どもの権利条約 一般的意見 20 号(2016年)思春期における子どもの権利の実施 CRC/C/GC/20(2016 年 12 月6日/原文英語)日本語訳:平野裕二

 以下、60の中に3回「中絶」が出てくる。61では性教育の権利が提唱されている。(セクシュアル/リプロダクティブ」の表記は「セクシュアル&リプロダクティブ」に引用者が変更した。)

60.セクシュアル&リプロダクティブヘルスならびにこれらに関わる権利についての物資、情報およびカウンセリングに関しては、第三者による同意または許可の要件などのいかなる障壁も設けられるべきではない。加えて、たとえば思春期の女子、障害のある女子ならびにレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスである思春期の子どもがこのようなサービスにアクセスする際に経験する、スティグマおよび恐怖の障壁を克服するために特段の努力が必要である。委員会は、締約国に対し、女子が安全な中絶および中絶後のサービスにアクセスできることを確保するために中絶を犯罪化し、思春期の妊婦の最善
の利益を保障する目的で法律を見直し、かつ、中絶関連の決定において思春期の妊婦の意見が常に聴かれかつ尊重されることを確保するよう、促す。
61.科学的根拠および人権基準を基盤とし、かつ思春期の子どもたちとともに開発された、年齢にふさわしい、包括的かつインクルーシブなセクシュアル&リプロダクティブヘルス教育が、必修学校カリキュラムの一環に位置づけられるべきであり、かつ、学校に行っていない思春期の子どもにも提供されるべきである。ジェンダー平等、性の多様性、セクシュアル&リプロダクティブヘルスに関わる権利、責任のある親としてのあり方および性的活動ならびに暴力の防止に対して、また若年妊娠および性感染症の予防に対して注意を向けることが求められる。情報は、思春期のすべての子ども、とくに障害のある思春期の子どもにとってのアクセシ
ビリティを確保するため、代替的形式で利用可能とされるべきである。