リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

岩本美砂子:生殖の自己決定権と日本的政策決定 一九九〇年妊娠中絶可能期間二週間短縮をめぐって

『女性学』第1号 1992 年 1 巻 p. 27-48

生殖の自己決定権と日本的政策決定
DOI https://doi.org/10.50962/wsj.1.0_27

1989年12月18日、厚生大臣戸井田三郎は、従来の優生保護法による人工妊娠中絶可能期間「妊娠満二四週未満まで(六カ月末を二週間短縮して、「満二二週未満まで」とすることが可能か否かについて厚生省公衆衛生審
議会優生保護部会に諮問し、同部会では即日、諮問のとおりでよい、実施は平成三年からとされたい、という答申を出した。これに対応して翌九O年三月二O目、津島雄二厚相のもとで厚生事務次官通知(通達)が出され、九一年一月より、優生保護法による合法的中絶可能期聞が事実上二週間短縮されることになったのである。本稿はこの決定が、優生保護法適応外の中絶を受ければ、堕胎罪で処罰される女性(男性の罪が一切問われない点で、差別的な刑事法である)に対して、広く意見を求めたりせず、政治の正面での対立を避けた、いわば「ついたての陰」で決定されたことをめぐる、政治の視点からの考察である。