リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

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忘備録

1962(昭和37)年3月22日に「健康保険」の議論が出てくる。


027 青柳一郎
○青柳委員 ……略……
 その次に伺いたいのは、堕胎が刑法上の犯罪である以上、その違法性を阻却する事由といたしましては、生命とか身体とかに害がある場合、すなわち胎兒の生命よりもさらに保護すべき法域の大きい場合、こういう場合が認め得る場合であると存じます。貧乏というものが違法性を阻却することに相なりますると、法一般の緊急批判も起きるのでありますが、理論から見まして非常に危險なものがあると思います。貧乏であるために何を許す、かにを許すということは、私は非常に大きい危險性を持つ大問題であると思うのであります。私は法律が貧乏人と富んでいる者と適用を異にすることは危險であり、できるだけは避けたいと思うのでありまするが、この点につきまして法務廳の御意見を承りたいのであります。
028 高橋一郎
○高橋政府委員 ただいまのお尋ねの点は、刑事政策的な問題になると思うのでありますが、法律上の理論といたしましては、かりに優生保護法の方で、一定の條件の備わつた場合に、一定の手続で人工妊娠中絶ができるということが規定されますれば、それに從つて人工妊娠中絶をやりますことは、いわゆる刑法三十五條の、法令による行為ということになりまして、堕胎罪としての違法性を阻却する。從つて罰せられないことになるわけであります。從つて優生保護法の方でそういう規定を設けることは、法律上は可能なわけであります。ただ何と申しましても、人工妊娠中絶ということは、いわゆる自然に反することでありまして、できれば避けたい。いろいろな関係から申してない方がよいことは、これはもうその通りだと考えるのであります。しかしながら一方におきまして、現実の必要が非常にある場合、それに目をつぶつてむりにそういう場合を認めないというふうになつておりますと、そこにいろいろないわゆるやみ行爲が出て参りまして、その方の弊害も考えなければならないと思うのであります。從つてこの刑事政策的な見地から申しましても、この問題につきましては、両面の見方がございまして、法務廳といたしましては実は刑事政策上の見地から、どちらがいいというような結論をまだ申し上げるまでには研究を積んでおらないのでございます。
029 青柳一郎
○青柳委員 ただいまの御答弁、非常によくわかりました。ただしかし結論は、法務廳としてどちらがいいという結論に達していないというお話でありました。次に私は先ほども提案者の方からお話がありまして、何とかこういう方向の法律をつくりたいという氣持から、最後にもう一つだけ伺わせていただきたいと思うのであります。それは最近の社会の模様を見ますると、産兒制限も相当廣く行き渡りつつあります。またかかる法律が出まして妊娠中絶も行われるようになりますると、今後は相当人間の数が減つて行く。もちろんそれをねらつておるのであります。減り過ぎてしまつて、將來の日本の人口を老衰に陥れてしまうようなおそれがあるまいかということも、一点聞きたいのであります。