リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

FIGO(国際産婦人科連合)の雑誌International Journal of Gynecology and Obstetricsにおける日本の中絶を巡る論争

2022年7月号に掲載された空野らの短報とそれに対する日本産科婦人科学会会長らの返信、ICWRSAの国際コミュニケーターの再反論を一挙公開

それぞれ原文は以下にあります。
https://obgyn.onlinelibrary.wiley.com/toc/18793479/2022/158/1

Japan foresees early-stage medical abortion approval: Will this reduce barriers to access safe abortion?
Sumire Sorano, Sakiko Emmi, Kazuyo Machiyama, Chris Smith
Pages: 225-226 First Published: 22 April 2022


Letter to the editor: Japan foresees early-stage medical abortion approval: Will this reduce barriers to access safe abortion?
Masakazu Terauchi, Tadashi Kimura
Pages: 227 First Published: 29 April 2022


Response: Japan foresees early-stage medical abortion approval: Will this reduce barriers to access safe abortion?
Sumire Sorano, Sakiko Emmi, Kazuyo Machiyama, Chris Smith
Pages: 228-229 First Published: 24 May 2022


https://obgyn.onlinelibrary.wiley.com/toc/18793479/2022/159/1

Letter to the editor: The introduction of 21st century abortion methods in Japan—Policy based on all WHO recommendations is needed
Marge Berer
Pages: 336-337 First Published: 10 August 2022


Response: The introduction of 21st century abortion methods in Japan—Policy based on all WHO recommendations is needed
Masakazu Terauchi, Tadashi Kimura
Pages: 338 First Published: 10 August 2022

最後の学会からの反論が未入手なのであとで追加しますが、それ以外の分の仮訳を一挙掲載します。

International Journal of Gynecology and Obstetrics, July 2022

BRIEF COMMUNICATION Japan foresees early-stage medical abortion approval: Will this reduce barriers to access safe abortion? (短報:日本は早期の薬による中絶の認可を予見している。安全な中絶へのアクセスへの障壁を減らすことができるか?)
First published: 22 April 2022 https://doi.org/10.1002/ijgo.14226
Sumire Sorano| Sakiko Emmi| Kazuyo Machiyama| Chris Smith
 1988年にフランスでミフェプリストンが認可されて以来、過去30年間、薬による中絶は世界的に中絶治療に革命をもたらしてきました*1。短い処置で完了することができる中絶手術と比較して、薬による中絶は完全な中絶を行うために追加の介入が必要になることがありますが(5%未満)、必要とされる資源は少なく、手術や麻酔を避けたいと思う女性たちに好まれています。薬による中絶は、より「自然」であると感じる女性もいます*2。遠隔支援による薬による中絶の自己管理は効果的で安全であり、患者の満足度が高いことを示す証拠が増えつつあり、国際産婦人科連合(FIGO)を含む国内外のさまざまな専門学会に支持されています*3。
 日本は1948年に人工妊娠中絶を合法化した最初の国の一つですが、薬による中絶は承認されていません。日本では、世界保健機関(WHO)によって「安全でない」と分類されている侵襲的な方法である拡張掻爬術(D&C) *4に未だに頼っており、日本では他の方法と比較して合併症のリスクが高いことが示されています*5。こうした状況を踏まえ、2021年7月、厚生労働省産婦人科の職域・学会に対し、より安全性の高い手術法である真空吸引法(VA)への移行を要請しました*6が、産科婦人科学会の理事長は「医師がVAの実践に慣れていないため、急に方法を変更するとむしろ安全性が低くなる」という懸念の報告を行いました*6。
 2021年12月、製薬会社がミフェプリストンとミソプロストールの承認申請を行いました。承認されれば、日本でも薬による中絶が可能になります。しかし、女性の経験やアクセス性を向上させるかどうかは、プロトコルと価格次第です。もし女性が直接的な監視下に置かれ、中絶が完了するまで医療施設で医学的管理を受けるようなプロトコルになるならば、医師にも患者にも相当な負担が課されることになります*7
経済的な観点から見ると、人工妊娠中絶は公的医療保険の対象ではなく、各医療機関が価格を設定できる自由診療のもとで行われています。現在、外科的手法が唯一の選択肢になっている日本の第1三半期(訳注:妊娠初期)の中絶は、約925~1850米ドルもかかります*8。日本産科婦人科学会は、薬による中絶は、認定された医師が、手術と同等の管理料とベッド数を持つ施設でのみ処方されるべきであるとのコメントを発表しています*9。学会によるそうしたコメントは、ケアの質や女性の健康を改善しようとする努力よりも経済的な利権を守ろうとしているのではないかという懸念を招いています。
 中絶医療にアクセスできない女性は、絶望的な手段に訴える可能性があります。実際、一人で出産した後、新生児を遺棄した女性が逮捕されるという悲劇的なケースも報告されています*10。しかし、不必要なプロトコルと女性が負担しなければならない高い経済的コストのために、今回の動きは必ずしも安全な中絶ケアへのより大きなアクセスにつながらないかもしれません。
REFERENCES
1. WHO. Essential Medicines List Application Mifepristone Misoprostol for Medical Abortion. 2018. Available: https://www.who.int/selection_medicines/committees/expert/22/applications/s22.1_mifepristone-misoprostol.pdf.
2. Robson SC, Kelly T, Howel D, Deverill M, Hewison J. Randomised preference trial of medical versus surgical termination of pregnancy less than 14 weeks' gestation (TOPS). Health Technol Assess. 2009;13:13(53).
3. FIGO. FIGO endorses the permanent adoption of telemedicine abortion services. 2021.
https://www.figo.org/FIGO-endorsestelemedicine-abortion-services.
4. WHO. Preventing Unsafe Abortion. 2020.
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/preventing-unsafe-abortion.
Accessed November 6, 2021.
5. Sekiguchi A, Ikeda T, Okamura K, Nakai A. Safety of induced abortions at less than 12 weeks of pregnancy in Japan. Int J Gynecol Obstet. 2015;129:54-57. doi:10.1016/j.ijgo.2014.09.032
6. The world's trend toward safer abortion with the suction method:MHLW inform academic societies, Jul. 2021. https://www.tokyo-np.co.jp/article/117804.
7. UK pharma firm to seek first Japan approval for abortion pill, but challenges remain, Apr. 2021.
https://mainichi.jp/english/artic
les/20210421/p2a/00m/0na/027000c.
8. J. Ministry of Health Labor and Welfare. Number of Induced Abortions in 2020. 2021.
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpa
ge_18838.html. Accessed August 26, 2021.
9. Application filed for approval of use of 'oral abortion pill – First non-surgical option in Japan. Dec. 2021. https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211222/k10013398921000.html.
10. Akusawa E. Denied Abortion Resulted in Abandoning Infant Corpse: Hospitals Said 'partner's Consent Necessary' though it wasn't. Jul. 2021.
https://digital.asahi.com/articles/ASP6B74N8P63OIPE002.html.


Letter to the editor: Japan foresees early-stage medical abortion approval: Will this reduce barriers to access safe abortion?(編集部への手紙 日本は早期の薬による中絶の認可を予見しています。これにより、安全な中絶へのアクセスの障壁が減少するか?)
Masakazu Terauchi, Tadashi Kimura
First published: 29 April 2022
https://doi.org/10.1002/ijgo.14228

 IJGOの本号で、Soranoらは日本における薬による中絶を取り巻く状況について詳しく述べています*1。その短い通信の中で、著者らは、厳しい薬事化と高い価格設定を考慮して、近い将来に見込まれるミフェプリストンおよびミソプロストールの承認が、安全で効果的な人工妊娠中絶の方法に対する日本の女性のアクセスを改善するかどうかに疑問を投げかけています。
 中絶は、文化、宗教、民族によって極めて多様な捉え方をされる医療行為です。また、中絶がどのように合法化され、実施されるかに関しても、世界中の社会で極めて多様性があります。ある国では妊娠期間の制限なく中絶手術が行われ、また別の国では例外なく違法とされています。日本は1948年に人工妊娠中絶を合法化した最初の国の一つですが、その際、相応の注意が必要でした。この処置は、免許を持ち登録された産婦人科医のみが行うことを許され、第二次世界大戦の惨敗から立ち直ったこの国で、絶望の中にいる女性の安全を保証することに貢献したことは間違いありません。D&C(拡張と掻爬)の時代から、私たちの社会は、2015年に手動真空吸引キットが当局によって承認されたことに代表されるように、より安全で効果的な人工妊娠中絶の方法を採用するためにゆっくりとしかし着実に進化を遂げてきました。現在、私たちは、日本の歴史上初めて、薬による中絶にミフェプリストンとミソプロストールを活用するための準備を進めています。日本産科婦人科学会は、中絶プロトコルの安全性と有効性を最大限に高めるために、講演や実習などの教育コースを会員医師に提供する努力を継続的に行っており、新しい方法である薬による中絶も例外ではないでしょう。
 著者の空野らが正しく指摘しているように、薬による中絶は、場合によってはさらなる外科的な介入を必要とする処置です。私たちは、この方法のリスクと利点について医師と患者を十分に教育することが不可欠であり、少なくとも私たちの社会に新しく導入される際には、この方法は免許を持ち登録された産婦人科医によって行われ、綿密な観察が行われるべきであると考えています。医学的・外科的処置の価格と保険適用は、国家の社会保障制度の中で決定されるものであり、同様に保険適用外の処置の代替となることが予想される場合、ある処置を保険適用から除外することは合理的であると思われます。医療費の高騰に悩む高齢化社会にあって、人工妊娠中絶を保険でカバーすることに躊躇するのは理解できます。
 WHOが提案する規制を完璧に満たす状況ではないことは認めますが、日本医師会が運営する医師賠償責任保険報告書から推定されるように、私たちの会員医師は世界で最も安全なレベルで人工妊娠中絶を行っています*2日本産科婦人科学会は、今後も日本女性のリプロダクティブ・ヘルスと権利を推進するため、最善の努力を続けていきます。

CORRESPONDENCE
Response: Japan foresees early-stage medical abortion approval: Will this reduce barriers to access safe abortion?(反論:日本では、早期に薬による中絶が承認されることが予想される。安全な中絶へのアクセスを阻む障壁を減らすことができるか?)
Sumire Sorano, Sakiko Emmi, Kazuyo Machiyama, Chris Smith
First published: 24 May 2022 https://doi.org/10.1002/ijgo.14266
寺内らは、その通信の中で、中絶を取り巻く環境の多様性を指摘している1。しかし、安全でない中絶は、世界的に妊産婦死亡の主な原因であり、毎年14000~39000人の死亡を引き起こしていることに留意する必要がある2,3。中絶へのアクセスを犯罪化したり制限したりすることは、中絶減少に効果があるとは証明されておらず、危険な方法にさらされることによって女性の命を危険にさらしている2 。
実際、世界保健機関(WHO)は、中絶医療を必須医療とみなしている2。
日本では、中絶は合法ですが、費用や配偶者の同意が必要なため、安全な中絶へのアクセスは依然として妨げられている。その結果、女性が一人で出産し、赤ちゃんを捨てるという話が後を絶たない4-6。
品質管理が不明な輸入品の中絶薬を、医療機関に相談せずに使用する人もいるようです7。
薬による中絶の導入は一歩前進であるはずだ。寺内らが述べているように、安全に中絶を行うための日本産科婦人科学会の努力は評価される。
しかし、空野ら8が主張するように、中絶薬が入院下でのみ投与されるように制限されると、個人の経済的負担が大きくなり、利用しにくくなる。ミフェプリストンとミソプロストールは、世界中で30年以上にわたって広く使用されており、有効性と安全性に関するかなりのエビデンスがある。
手術による中絶の安全性はもう一つの問題である。WHOは、提供者が訓練を受けているかどうかにかかわらず、真空吸引(VA)後の掻爬の使用を含む拡張掻爬(D&C)を推奨している2。 WHOのガイドラインは、「D&Cは女性に痛みと苦しみを与える」「その使用は健康への権利を含む多くの人権と両立しない」としている1。実際に2015年に日本の全国調査によって、D&Cによる場合、VAと比較して子宮穿孔のリスクが高い(36.4/10万対4.9/10万、P = 0.047)11。しかし、2019年においても、誘発中絶の23.5%がD&C、40.3%が掻爬によるVA、36%がVAのみ12。産婦人科医は権利という枠の中で科学的根拠に基づいた安全な中絶医療など性・生殖医療と権利サービスを提供すべきである。JSOGの強力なリーダーシップが期待される。

Letter to the editor: The introduction of 21st century abortion methods in Japan—Policy based on all WHO recommendations is needed, IJGO Volume159, Issue1, October 2022, Pages 336-337
https://obgyn.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ijgo.14369
Marge Berer
 FIGOのメンバーである日本産科婦人科学会(JSOG)の会員であるテラウチ・マサカズ氏とキムラ・タダシ氏1が、Soranoら2によるBrief Communicationに対して書いた編集者への手紙を読んで、非常に呆れ返りました。昨年、ある製薬会社が日本での薬用中絶薬の認可を申請し、今年末に決定がなされる予定です。ほとんどの国で中絶薬の導入は中絶医療のあらゆる面で大きな変化をもたらしましたが、Soranoらは、日本では中絶を必要とする女性にとってほとんど変化がないかもしれないと懸念を表明しています。

 このような懸念が表明されることは重要であり、日本では何が変わる必要があるのか、特にD&Cに依存し続け、真空吸引法と中絶薬の両方が相対的に利用できない現状を明らかにし、日本で望まない妊娠をした女性や少女が国や中絶サービスから今何を必要としているが得ていないのかという疑問を提起する役割を果たすことができるからです。3

私は40年以上にわたって、公衆衛生と人権の必要性から、安全で合法的な中絶を受ける女性の権利を擁護してきた者として、「すべての夫婦と個人が、自由かつ責任を持って、次のようなことを決定する基本的権利」に関する長年の国際的コンセンサスに基づき、ここに報告します。3。

テラウチ、キムラ両氏は、望まない妊娠を解消する必要がある人の観点から、これらの問題を論じておりません。おそらく最も重要なことは、D&Cと比較して薬による中絶吸引のどちらもとんでもなく安全であるという数十年にわたる厳然たる証拠と、これらの提供方法が(D&Cより)はるかにシンプルで、それを受ける側にとってもはるかに容易でもあることを彼らが認識していないことです。

しかし、彼らは「(日本の)状況はWHOが提案した規制を完全に満たしていないかもしれない」ことを認めています1が、これは甚大な過小評価であると思われます。WHOが推奨する中絶医療のベストプラクティスのうち、どれか一つでも彼らは実施しているのでしょうか? たとえば、WHOはD&Cの使用を全く支持していませんし、しかも支持しなくなってから相当な時間が経過しています。4

手動真空吸引法は、1970年代にハーヴェイ・カルマンとマルコム・ポッツによって初めて報告され、当初は不全流産の管理のために使用されました。その用途はすぐに改良され、妊娠の終了にまで拡大され、14~16週までの中絶の主な方法となりました5。

ミソプロストールは1973年にアメリカで胃潰瘍の治療薬として開発されましたが、流産を引き起こすという副作用はかなり早い時期から知られていました。1980年代初頭、ミソプロストールが妊娠を終了させるために使用できるという事実が、胃潰瘍の治療薬としてミソプロストールを購入したある女性によって発見されました。彼女は添付文書を読み、そのおかげで、このニュースはブラジルやラテンアメリカ全土で急速に広まり、中絶が違法な国々でのより安全な代替方法となり、合併症による妊産婦死亡率が速やかに減少していきました。それ以来、中絶薬(ミフェ・ミソの併用、またはミソ単独)は、臨床的な監視がない場合でも、世界中でますます使用されるようになっています。

ミフェプリストンは1980年頃に製薬会社のルーセル・ユクラフ社によって開発され、1988年にフランスと中国で初めてプロスタグランジンとの組み合わせで発売され、後にミソプロストールに置き換わりました7,8。

こうした事実は、人工妊娠中絶指定医である日本の産婦人科医師の間では常識になっていないのでしょうか。私は国際会議に出席し、日本の女性運動と個人的に接触する中で、日本の女性たちもこうした事実を間違いなく知っていて、20年以上前からこの2つの方法へのアクセスを要求してきたのを知っています。

残念ながら、日本では産婦人科医が中絶医療を独占しており、どの方法を――今だにD&Cを――使うかについての決定権も独占しているように見えます。テラウチ、キムラ両氏の手紙にあるように、中絶費用の高さも産婦人科医の支配下に置かれているように思われます。民間サービスである以上、日本政府はそのサービスに責任を持たず、指定医師がコントロールしていることに異議を唱えないため、これほど高い料金を設定できるのだと考えるしかありません。

WHO、FIGO、数多くの助産師会、女性の健康と中絶の権利運動(日本および国際的な運動)のすべての提言が国の政策となった場合、この状況は脅かされると結論づけないわけにはいきません。

このメッセージは、2022年3月8日に発表されたWHOの新しい中絶医療ガイドラインにも明確に示されています9:すなわちD&Cをやめる、麻酔薬の使用をやめる、3次病院での(中絶)サービス提供をやめる、不必要な入院や外泊を省略する、プライマリケアレベルで21世紀の方法を用いて中絶を提供するために助産師、看護師、GP(ジェネラル・プラクティショナー)の訓練をする、そして、初回に錠剤による自己管理中絶を許可するということであり、さらに妊娠初期のピルによる自己管理中絶を可能にすることです。最後に、WHOの勧告にすべて従えば、そのような高い料金は正当化できないのですから、中絶の料金を民間に任せて非常に高額を維持するための議論はやめていただきたいと言い添えておきます。

国際産婦人科連合(FIGO)は、すべての会員を代表しなければならず、また代表していたいと願う会員制組織として、長い間、中絶に関して非常に困難な立場に置かれてきました。かつては会員の多くが完全に中絶反対派でした(現在も大勢います)。その状況を転換するには、長年ものハードワークが必要でした。しかし、日本では1948年以降、合法的に中絶が行われてきたのです。日本における問題は、他の国々では方法や提供者が変わってきたのに、日本では時間が止まっていることです。しかし、D&Cが産婦人科医によって支持され、主張され、臨床医の選択すべき方法として研修が行われているのは、日本だけではありません。このD&Cへの固執を打ち破るためには、まずはすべての国についてD&Cがどの程度使い続けられているのかについて既存のエビデンスを更新していく必要があるかもしれません。

さらに、中絶医療の提供者を会員に含むすべての(国内外の)医師会は、安全な中絶医療について普遍的に認められたエビデンスに基づく実践の最高基準としてWHOが推奨している中絶方法のみを教え、実践するよう会員に圧力をかける必要があることは間違いないでしょう。

最後に、テラウチ、キムラ両氏は、人工妊娠中絶が現在公的医療保険でカバーされていない事実に基づいて、薬用中絶薬(MA)の提供もカバーされるべきではないと主張しています。しかし、MAやMVA/VAはプライマリーレベルの外来で行うことができ、麻酔を必要とせず、痛みを和らげる必要があるだけです。最も重要なことはコストの問題で、ほとんどの場合、訓練を受けた看護師、助産師、コミュニティヘルスワーカーが安全に提供できるために、薬による中絶のコストはD&Cよりも大幅に低いのです。さらに、中絶薬は、女性当人が希望するのであれば、妊娠初期3ヶ月間については自宅で自己管理する中絶のために遠隔医療で手配することができます。しかし、何よりも重要なことは、公的医療保険ですべての中絶をカバーできるようにすることです。なぜなら、すべての中絶は、必要不可欠(エッな医療(エッセンシャル・メディシン)であるためです。

REFERENCES
1. Terauchi M, Kimura T. Letter to the editor: Japan foresees early-stage medical abortion approval: will this reduce barriers to access safe abortion? Int J Gynecol Obstet. 2022;158:227. doi:10.1002/ijgo.14228
2. Sorano S, Emmi S, Machiyama K, Smith C. Japan foresees early-stage medical abortion approval: will this reduce barriers to access safe abortion? Int J Gynecol Obstet. 2022;158:225-226. doi:10.1002/ijgo.14226
3. United Nations. Report of the International Conference on Population and Development: Programme of Action. 1994, Para 7.3. p. 40. https://www.un.org/development/desa/pd/sites/ www.un.org.devel opment.desa.pd/files/ icpd_en.pdf Accessed July 27, 2022.
4. World Health Organization. Safe Abortion: Technical and Policy Guidance for Health Systems. 2nd edition. 2012. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/ NBK13 8196/. Accessed July 26, 2022.
5. Karman H, Potts M. Very early abortion using syringe as vacuum source. Lancet. 1972;299:1051-1052.
6. Arilha M, Barbosa RM. Cytotec in Brazil: at least it doesn't kill. Reprod Health Matters. 1993;1:41-52.
7. Reproductive Health Access Project. The history of mifepristone. 30 September 2020. https://www.repro ducti veacc ess.org/2020/09/histo ry-of-mifepristone/ Accessed July 26, 2022.
8. Singh S, Remez L, Sedgh G, Kwok L, Onda T. Abortion worldwide: Uneven progress and unequal access https://www.guttm acher.org/sites/ defau lt/files/ report_pdf/abort ion-world
wide-2017.pdf. Accessed July 26, 2022.
9. World Health Organization. Abortion Care Guideline, 8 March 2022. https://www.who.int/publi catio ns/i/item/97892 40039483

*1:Sorano S, Emmi S, Machiyama K, Smith C. Japan foresees earlystage medical abortion approval: will this reduce barriers to access safe abortion? Int J Gynecol Obstet. 2022; [in press].

*2:Japan Medical Association and Ministry of Health, Labour and Welfare of Japan. Textbook for continuous medical education: family planning and the Maternal Health Act, 2015.